十四章 不正の果てに
「しかし社長も無理ばかり言いなさる」
私はヤガミ、プロデューサーにてゲームマスターの総括も担っている
先日の一件により
私が抱えている薄氷騎士団が社長の逆鱗に触れてしまい
自らの手で件のプレイヤーをアカウントBANせざるを得なくなった。
まさか自分の手駒を自らの手で葬ることになるとは
会社の中でも自由に動けるとは言っても、それは社長の機嫌がいい時の話。
このままでは私も立場も危うい
ああ、こんな時、『心臓』さえ完成していれば
ともかくないものを求めてもしょうがない。社長が目をつけているあの男の首を取ってくれば機嫌も治るだろう
これ以上チートや仕様変更のためにデータをいじくるにはかなりリスクがあった。
「ヤツブサくん」
私はスマホを手に取り。部下に連絡を入れると部下のホログラムが現れた
「餌は撒いておくからカロンを使って奴らを始末してね。むこうではワザンくんの部下、たしかイルマくんもいる。仲良くするんだよ?それと最近不具合が多くなってるからチートはほどほどに言っておいてね」
使用者が一方的に優位になるチート行為と
本来、それらを罰するためのマスタリング
さらにプレイヤーが予想外の動きしないためにプレイヤーの行動を抑制•無能ムーブを強制させている
現在はそのどちらも弱者をいたぶる為の手段と化している。100%破られることない無敵の布陣とも言えるだろう
が今に来て手駒の特権とプレイヤーへの抑制がゲームに負荷をかけているのも事実だ
「ここが壊れるのも時間の問題かぁ。早いところ『心臓』が完成してくれないと困るんだよね、催促してくるかな」
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「お前は、カロン・・・!」
協力者からのタレコミで上級魔物の情報収集に出向いた俺たちの前に現れたのはカロン本人だったのだ
そう、俺たちは罠にかかったのだ。
「逃げろ・・・奴は魔法だけでなく格闘もある。おまけに死角もない。とにかく逃げ、ぐっ!」
生き残りがひとり、遅れて来たカズナリらに忠告をするが
とどめと言わんばかりにどこからともなく飛んできた刃物が一人でに突き刺さる。
「俺もいるんだぜ、死に損ないども。」
刺し殺したあと剣の持ち手から人間が生えてくる。
いや、違う、ステルスを解除したワザンの部下であるイルマが姿を表したのだ。
ただでさえ真っ正面から挑んだところで倒せない強敵がいるのに、さらにもう一体いるのはあまりいい状況とは言えない
スキルは探索用のもののみ
アキナは気を失ったままのガイド妖精を抱えている。
極力楽な体勢にさせてやっているがこのまま戦闘は続けられない
俺の視界に映り込む〈依頼達成条件:カロンからの逃走〉のウィンドウが俺を煽っているように見えた
「カズナリさん!ものすごい呪文がこちらに飛んできます!避けて!」
「うぉぉぉお!」
ズゥゥゥゥゥン!!
俺たちが左右に飛ぶと
直後黒と紫がまだらになった闇の塊が上から降り注いだ。
俺たちがいた場所は地面が抉られている
【魔力探知】がなければ危うく地面ごと削られていただろう
「くそっ、お前の弱点を探るシナリオを作ったんじゃねぇのかよ!」
「そうです!私達はあなたに勝つための方法を調べにきたんです。けしてあなたに負けさせれるために来たんじゃありません
「だからこそこうして来てやったんじゃねぇか、実際に戦えるチャンスをやってんだ!感謝してもいいくらいだぜ!?」
カロン的には情報収集は俺TUEEEEの口実を作るためでしかない「お前を一方的に倒すけどスキルやステータス調べられるからいいよね?」とそう言うことなのだ
「俺はな、勝つのは好きだが負けるのは大っ嫌いなんだ!!てめぇらは俺のためにやられてりゃいいんだよ!」
カロンは先ほどより小さい闇の弾を連発し
俺は盾を構え防ぐ
先ほどより派手な威力はないがものすごいスピードで盾の耐久力が削られていく
この男、負けなくても「悔しい思い」をするのはイヤなのだろう
だからこそプレイヤーが戦闘スキルを持ってこない状況を作り出して一方的な殺戮をするような真似に出たのだ
「今回は『殺しアリ』のルールだぜぇ?ムカつくだろ?殺してみろよ!」
「そんな安い挑発、誰が乗るかってん・・・だぁ!」
「カズナリさん!」
ゴガッ!
後ろからの不意打ち。イルマの攻撃によって背中を強く打たれ俺はよろける
どこからともなく奴の声が聞こえる
「だから俺もいるって言ってんだろ!」
奴の声だけが響く。足音はおろかやつの影すらない。
透明どころかあれではワープも大差ない
「スキルのはずですがか【魔力探知】でも見えません!これはもしかしたら・・・」
「畜生、【危機感知】でも見つからない。やっぱりチートかよ」
暗殺者系の職業じゃなきゃ不意打ち行動はできないようになってんじゃねぇのかよ。
昔に一度後ろから不意打ちをしようとした時のこと
体が勝手に動き、派手に物音を立てたせいで相手に気づかれてしまったのだ
だが、相手にはその様子は見えない。
やっぱり運営側が有利になるように運営側が細工したのか?
「おらおらどうしたぁ、憎いんだろぉ、前みたいに加護使って殺してみろよぉ〜どうせ無理だろうがなぁ〜!!」
「ズルしておいて粋がるな!」
イルマの不意打ちに加えカロンも魔法を打ち込んでくる。闇の魔法が俺の盾をじわじわと蝕んでいくのがわかる
俺は【かばう】を使い攻撃を防ぐ
幸いステルスのかかった攻撃も防ぐことは可能だったため、アキナとエルを守ることはできる
「ん・・・」
「エルちゃん。もう少し頑張って」
エルは弱りつつあるが意識はまだある
俺の背には守るべき者がいるのだ
考えろカズナリ
敵は本体だけでなく武器や身に付けているものも同時に消える
姿と音は消えてても、何か奴の通った痕跡は出るはずだ
それさえわかれば全ての視界を全てカバーできる【視野強化】で後ろからの攻撃もなんとか対応はできる
相手は透明になってるだけで本当に消えたわけじゃないんだ。現にこうして俺を攻撃できて・・・
|(相手側が俺に干渉できるってことはつまり人間だけじゃなくて草や地面にも跡が残るんじゃないか?)
「アキナ、引くぞ!」
「はいっ!」
「怖気づいたか?だが、魔法使えるってことを忘れたのかよ!」
「させません!」
雑草が生い茂る場所まで走る俺たちに闇呪文が飛ぶ!
アキナが〈加護〉をつかいバリアを貼ったのだ
〈加護〉はこのゲーム中使える回数は僅かだがプレイヤーが敵NPCにゲーム上太刀打ちできる数少ない手段
強力なバリアといっても持って一分も経たないし、再展開はできないのでその場凌ぎだ。
それにイルマの追撃がすぐに来る
盾を構えながら【視野強化】を使い注意深く、足元を見る
相変わらずの無音、しかし茂った草が一人でに潰れていくのが見えた。イルマがその上を走っているのだ
俺は手に持った盾を剣に持ち替えるとアキナはその刀身に|【ファイアエンチャント】《火を点して》くれた
何も言わずとも何をするべきなのか彼女はわかってくれる
|(近づいて来た、今)
音でわからずとも足元でわかる
「そこだぁ!」
ザンッ!!
「ぐぉああああ!」
何もない場所から火がひとりでに燃え上がる
【ファイアエンチャント】で引火したイルマの体が引火し、燃えているのだ
「これでもうお前は透明ではなくなったな」
「ひ、ひいいいい!!」
火のエフェクトが付いていれば姿を消していてもどこにいるのかわかる
「いくぞっ!」
一気に駆け抜け距離を詰めようとする
が
「マスタリング!」
ビシィ!!
体が動かない。カロンのルールに反したことにより動きを止められたのだ
「いちいち気に入らないんだよお前は。イルマ、逃げておけ。ここは俺が殺してやる!【死の抱擁】」
「カズナリさん!」
まただ
俺の抵抗は運営には届かないのか?
身動きが取れない俺に闇の魔法が飛んでくる。ガードができない今、俺はこの攻撃を受けたらタダでは済まない
もうダメか、と思ったその時だ
「不正を確認しました。ライブラリに存在しない効果•スキルを解除します」
「エルちゃん?」
アキナのほうで何か異変が起こったようだが指一本動かない今後ろで何が起こっているのか確認できない。
ズゥゥゥゥゥン!
間一髪だった。闇の塊が俺の体を押しつぶそうとした時、俺の体が自由を取り戻したのだ
それよりも前よりも体が軽い。
まるで体に付いた枷が外れたみたいに
カロンの呪文を掻い潜り、俺は逃げるイルマを追いかける
「や、ヤガミさん、助け・・・」
「覚悟ぉぉぉぉぉ!」
ざぱっ!!!
水っぽい音と共にイルマの体は両断された
「はぁ!?どうしてだよ!ヤガミ。逃げろってどう言うことだよ!?」
運営側でも分からないことが今、ここで起こっているってことは分かったがとにかく風向きが良くなったことだけは分かった
「逃がすか!」
俺はすかさずカロンを斬ろうと駆け寄るが
距離が遠すぎる
「次こそてめぇらを皆殺しにしてやる!覚悟しておけよ!!」
カロンは攻撃することも忘れ、散々喚き散らして捨て台詞を残して消えた
「終わった」
敵は去った、多大な犠牲を出してしまったが俺たちは絶望的な状況から生き延びることができたのだ
「カズナリさん!エルさんが『システムが』みたいなことを話して。」
そういえばエルは?
俺達はエルの容体を見るがすやすやと寝ているようだ
記憶を失った妖精と突然マスタリングが解除されたこと
何一つわからないことばかりだが関係はありそうだ
あとでゴルさんに聞いてみよう




