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戦いの火蓋

「なんだこのメール、ふざけているのか?」


俺は気が立っていた。不当な理由でクランからも追放されられたこともあったが、それ以上にあの文章は俺の感性を逆撫でさせてきたのだ


プレイヤーにゲームを提供する運営会社のいち社長・・・いや、いち社会人にあるまじきくだけた文章


さすがに誰かのなりすましかとも思ったが、差し出し人の名前がゲームマスター用のオレンジ色で表記されているため、本人が送ってきたのは間違いない。

なんなら今は逆になりすましの方が良かったとさえ思っている。



「ゲームの外部に繋がってるのか。」


やり込んでいるプレイヤーほど普段はVRチャットに引きこもっている話は聞いてはいたが

まさか、運営自らゲームの交流要素を否定してくるとは


メールに添付してあったリンクにタッチすると

俺たちは応接室に飛ばされた。なんてことないどこの会社にでもある応接室だ


「格好が現実の姿に戻った!?」


「お、落ち着いてください。ゲームの外に出たからアバターがヘッドセットに設定した姿に変わっただけです」


ゲームの外に出たことでアバターがヘッドセットの初期設定の時に作ったほぼ現実寄りの姿に戻っている。

こうなると仮想空間のVRチャットもありがたみが薄れてくる


その一方で一緒に付き添ってくれた彼女はやはり髪の色や服装は違えど見た目はほぼ変わらない。


「・・・あの、すいません。あまり見ないでください。」


容姿に自信がないのか向こうが赤面してしまった。むしろ、恥じるべきは容姿を盛ってる俺の方なのに


「キャラメイクするの苦手で。そのままなんです。すみません」


「そ、そうなんだ」


謝られてしまった。アバターだと思って気にしていなかったが。それを考えるとこの子リアルも結構可愛いのでは?


「いやぁ、待たせたね。」


突如パリパリの背広に身を包んだ中年二人組が向かいの席にワープしてきた。彼らがあの噂が絶えない社長とプロデューサーか

どちらも五十すぎの中年だが、そこに年齢や立場相応の風格や威厳さは見た限りない。

あんなメールをよこしたという意味では納得はできた


「ゴブリン討伐の時もそうだったが、今回の依頼にも不満があったみたいだね。あのクランマスターから色々聞かせてもらったよ」


(あの野郎、碌なことしないな。)


癒着の話は聞かされていたが、俺たちがゲーム世界で遊んでいる間に裏で何か根回ししていたようだな

彼に不具合云々言ったところでどうなるだろうか、反省して方針を変えるか?いや、それはないだろう

ここは素直に情報を引き出すのが先決か


「じゃあ一つ聞きたいんだが、ゴブリンを討伐していた時、明らかに山を焼き払うことを前もって知っていた人間がいた。あれはどういうことだ?」


「出会った直後に質問か。随分と礼儀がなってないんだね。」


社長は嘲笑うように言った

至極当然のことを言われたが、こいつには言われたくなかった


「まあまあ、社長。彼も熱心なプレイヤーみたいですし特別に教えてあげましょうよ」


プロデューサーに宥められながら社長はため息をつき「攻略的な情報に繋がるからこういうのはあまり話したくはないんだけどね」と頭を掻いた


「VRチャットに篭っている人いたでしょ。ああいうところから友達なりコネを作って情報を仕入れるモンだよ。キミ、大学出てたんでしょ?大事な情報って友人や先輩から情報が回ってきてくるもんじゃん。アレとおんなじだよ。」


「運営自らゲーム内の交流機能全否定ってワケですか」


中年二人組は顔を見合わせて肩をすくめた


「いやー、面白いこと言うねキミ、ゲーム内であろうとゲーム外で交流しようと人の自由じゃないかな?ね、社長」

「解釈はキミに任せるよ。キミはそれを悪意フルマックスに解釈した。ただそれだけのことだ」


だが、同時接続数に対しての語らいの場の過疎り具合、殺伐とした雰囲気、プレイヤーたちのいざこざ、これもすべてゲームの運営方法にある


「そうは言いますがね!ゲーム内の実情は知ってるんでしょ!プレイヤーがプレイヤー同士で足を引っ張りあい、上級者が初心者を餌にする!上級者は上級者しか知らないコミュニティをつくってりゃこうもなりますよ!」


机を叩き前へ乗り出す。これほどまでに感情的になったのはいつぶりか


「だいたいね、あのゴブリンの討伐クエだってあなたらが必要もないサプライズ入れたせいで阿鼻叫喚だったんだ。上級プレイヤーの誤射や山を燃やされたせいで何人もプレイヤーキャラが死んだんだ!」


近づきすぎだ。とプロデューサー席に戻るよう言われた

だが、そんなことで怒りはおさまらない


「山に火をつけたのだってゴブリンと戦いたくなかったり、自然を壊したくないってプレイヤーばかりだっていうし

敵に殺されるならまだしも味方に殺されるなんて」


「そうですよ。依頼の内容だって詐欺みたいなものばかり。世の中を良くする内容なのに密猟とかヤクザさんみたいなことばかりさせて。あんまりです」


「ーーでも、それはゲーム内での出来事だよね」


俺たちの怒りの声にヤガミが制す


「実際に人が死んでいるわけではないよね?依頼だって自由に選べられるよう設定はしているはずなんだけどそれでもダメかな?」


「痛みや感覚もリアルにしてよく言う!しかも死んだら復活できない。ほとんど現実みたいなもんじゃないか!」


「そのためにプレイヤーキャラの攻撃動作をはじめとしたモーションに制約をつけたのだ。問題ないよ。」


ギルドバウトオンラインでは攻撃やスキルといったモーションはある種の縛りがある。剣撃だって完全に振り下ろさないといけないし、フェイントで別のスキルに切り替えることはできない。

運営はプレイヤーがゲームキャラのような動きしかできないようにすることで現実との差別化をしたつもりでいるのだろう



「だ、だっ、だったら!カズナリさんが受けたこないだの依頼!カズナリさんは別に悪いことしていないのに難癖つけられて殺されそうになったんですよ。自分の思う通りに行かなかったからって・・・それを、それを・・・」


「アキナ・・・」


彼女がここまで感情的に怒るのを初めて見たかもしれない。目には涙を浮かべて必死に抗議する


「そうだよ、あのあとうちのクランマスターが死んで大変なことになったんだぞ!今のクランマスターに変わって吊し上げにあったんだ!」


それを見て二人は何かひそひそと話している

そのあとヤガミが悪びれることなく話し始めた


「どうやら、うちのヤブサがやらかしたみたいだね。あいつ結構負けず嫌いなんだ。そして、こっちの世界じゃワザンくん•••だったかな。あいつは元よりああいう性格

プロデューサーの僕に免じて許してくれないかな」


「「なっ!?」」



許す!?さすがにこの非常識な返しに俺たち絶句した


「ま。キミも特別な扱いされたいなら。課金の他に月十万くらい会社に収めることだね。トップランカーはみんなそうしているよ。


「なんならキミもどうだ?先の条件に加えて俺たちに忠誠を誓うのならキミの人生が少しでもマシになるよう保証はするけど?」


どこまで性根が腐っているのか、飛びかかって殴りたい衝動に駆られたがシステムがそれを許してはくれない。体が硬直している


「・・・さ、社長。そろそろ時間ですよ」


「まぁ、そういうわけだ。君達は少し熱くなりやすい傾向がある、将来が心配だな。」


そんな俺たちに社長は去り際にこう言い放った






「ゲームごときでマジになってんじゃねえよ」






成る程



下もクズなら上もクズか

道理でここまでゲームが荒れるわけだ



ならば




このゲームを破壊して


このゲームに関わる全ての連中を一人残らずドン底に落としてやる

潰してやる。このクランも、ギルドもそしてこの世界も






俺の長い戦いはこうして始まったのだ


遅くなり申し訳ないです。次回からカズナリくんの逆襲がはじまります。

次回もお楽しみに

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