16 誰だこいつらをこんな馬鹿に育てたのは(※バルティ視点)
あの日から数日、ユーリカ嬢が嫌がらせを受けている。
私は出来る限りそばにいるが、それを元に嫌がらせの火はどんどん燃え広がっているらしい。
ただ、ユーリカ嬢を完全に孤立させるわけにはいかない。私とファリア嬢とで常に休み時間は埋めて居るが、中々主犯が掴めない。
一度ユーリカ嬢を孤立させてみるか、とも考えたが、今回は完全にユーリカ嬢は私たちを助けてくれた上で被害者だ。
なんだかんだ、まだ立ち直っているわけでもないだろう。
貴族の子息令嬢ともあろうものが、このような真似をするなど噴飯物だ。
そもそも主犯をどうにかしたところで、ユーリカ嬢を孤立させているのは風評に惑わされている各人であるわけで。
(どうしたらこんな愚か者どもに育てられるんでしょうかね……)
真剣にこの国の未来が心配になる。
学園を出れば、領地に戻る貴族も多い。そうなったとき、何の裏付けもない戯言を信じるようでは将来立ち行かなくなる。
私はどうすればユーリカ嬢の現状を回復させ、なおかつこの腑抜けた貴族の卵共に己の愚かさを叩きつけられるかを考えていた。
ディーノはいい加減ユーリカ嬢と目が合うと顔を逸らすのをやめなければいけない。気不味いにしても、謝るタイミングを逃したにしても、それが噂を余計に確かなものにしてしまっている。
ファリア嬢と協力して……忌々しいが、私を慕っている……主犯の首根っこを捕まえてやりたいが、数が多くて個人の仕業ではないらしい。
ファリア嬢が笑ってユーリカ嬢と話している時点で、誰も何も口を挟む余地は無い。噂の前提……つまり、ユーリカ嬢がディーノに粉をかけた……というのは崩れていいはずだ。
が、崩れない。実際あの時人目のない場所まで移動できなかったし、それでも泣くななどと言えるほど私は鬼畜じゃない。嫌味眼鏡ではあるらしいがな。
(ふむ……、この線で行きますか)
私は一つの案を考えた。色々と面倒でもあるし、ディーノには充分反省してもらわなければならない。
ファリア嬢に……腹立たしいが彼女ほど人心掌握の技術を持つ者はいない……相談してみたが、悪くない、むしろいい機会だと言っていた。
つまり、ディーノの方はもう大丈夫らしい。ならば、舞台に文字通り引っ張り上げてやる事としよう。
ユーリカ嬢、君に取引を持ちかけたのは私だ。まさか、こうもてきめんに虫除けになるとは思わなかった。居てくれるだけで、笑ってくれているだけでよかったというのに、私まで彼女を傷付けてしまった。
この責任は必ず取る。ディーノ、お前にも取らせてやる。
いつまでもぐずぐずと子供のままでいたお前の、上に立つものとしての理想の一歩は、ユーリカ嬢を助けることだ。
……私も、それは変わらない。