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第90話 さてと、これから打ち上げです。

前回のあらすじ:怒られたので、夕食を気合入れて作るということで勘弁してもらった。


 サムタン公国の別働隊を殲滅したので、とりあえずこの攻防戦が終わるまでは国境の砦へと戻ることにした。ウルヴ達が捕らえた公国軍の連中はラヒラスの魔導具で拘束されている。別に魔導具を使う必要もなかったけど、折角作ったものだし、ということで使用しているそうだ。・・・絶対嘘だ。これ、絶対面白がってやっていることは明白である。何せ拘束のされ方がエグいからである。私がやられたら自死する自信はある。具体的な説明はここでは省かせてもらいたい、一応R15とはいえ、基本は全年齢対象で話しているつもりだ。


 それはさておき、今現在、私は別の問題に直面していた。それは、夕食を何にしようかである。たかが夕食と言うなかれ。いつもならともかく、今回に限っては私の今後に関わるものである、絶対に失敗は許されないと同時に、普段通りでは納得してくれないだろう。そう、アンジェリカさんの機嫌がこの夕食で決まってしまうのだ。いや、正直個人的にはぶっちゃけ嫌われようが構わないが、嫌われた後、巡り巡ってマーブル達にまで嫌われてしまうのが怖い。ということで、目下悩み中なのである。


 そんな表情を読み取ったのか、左肩にいる可愛いモフモフが「ニャア。」と鳴いた。


「ん? マーブルさんや、何かあったのかい?」


 マーブルは、闇魔法で食べたい料理のシルエットを作り出した。


「ほう、マーブルは、牛モツならぬ龍モツをご所望している、と?」


「ニャア!」


 なるほど。牛さんやブタさんなどのモツは料理したことはあるけど、龍のモツは確かに初めてだね。以前はライムがいなかったから、モツの掃除が上手くできなかったから、ギルドに卸したんだっけ。今回はライムがしっかりと掃除してくれたからバッチリ美味いものができそうだな、、、。そんな感じで考えていると、ジェミニやライムが参加してきた。


「流石はマーブル殿です! ワタシも龍モツ賛成です!!」


「ボクも食べてみたい-! あるじ、作って-!!」


 我が最愛のモフモフ達にこう言われてしまっては、作るほかないな。最悪マーブル達に嫌われる心配はなさそうだから、これで行きますか。まあ、今までアンジェリカさん達が私の料理で不味いと言ったことはないので、恐らく味覚的には似たところがあると思うから大丈夫そうだな。


 さて、龍モツということで決定したが、どんな料理にしましょうかね。モツ料理といえば、モツ煮は基本として、あとはホルモン焼きに、それと、串焼きは外せないとして、後は何だろうか、、、。これ以上は思い浮かばないな。普通の肉もふんだんにあるから、これも惜しげもなく使うとしますかね。そうでもしないと、使いきれる気がしないので、、、。


 と、このようにある程度決まったところで、残りの時間はどう調理していこうかを考えながら国境砦へと戻った。砦に到着すると、守備隊のみんなが出迎えてくれた。


「アンジェリーナ王女殿下、並びにアイス・フロスト伯爵、他の皆様もお帰りなさいませ。」


「皆様もお役目ご苦労様。何か特に変わったことはありませんでしたか?」


「異常無しです。今回の報告ですが、カムイ殿がこちらの状況をタンバラの街へと報告に行かれました。」


「そう、流石ね。」


「いえ、正直我々も失念しておりましたが、カムイ殿が報告した方が良いと。それで、すぐに戻ってくるからと止める間もなく行ってしまいましたので、、、。」


「それについては、問題ありませんわ。公国軍は頼みの搦め手を封じられた状態ですから、こちらの勝利はゆるぎありませんし、あと数日で良い知らせがこちらに届くでしょう。それまでは、こちらで待たせてもらいますわ。それでよろしいかしら?」


「もちろんです、いえ、むしろ大歓迎です!!」


「フフッ、そうおっしゃってくれると、こちらもありがたいですわ。あ、それと、フロスト伯爵がお土産を用意してくれましたの。今日はみんなでそれを頂くとしましょう。」


「我々もご相伴にあずかってよろしいので?」


「もちろんですわ。そのためにこちらに戻ってきたようなものですしね。」


「おい、聞いたか! みんな、フロスト伯爵の料理が食べられるぞ!!」


「「「「「「おーーーーーーーー!!!」」」」」」


 何か、凄いことになったな。期待されすぎて怖い、、、。っと、今から準備しないと特にモツ煮は間に合わないからね。さっさと始めるとしますかね。


 というわけで、早速準備を始める。ここの守備兵の人達の分だけでなく、タンバラの街へも差し入れとして用意するつもりなので、ここにいる全員をフル動員で活用させてもらいますかね。もちろん、非番の人だけでなく当番になっている人も例外なくね。万が一に備えて気配探知をこちらでしておくとしますかね。あ、マーブルも探知を手伝ってくれるみたいだ。じゃあ、とりあえずは大丈夫かな。


 手伝ってもらうのは、モツのカットとカットしたモツを串に刺す人、鍋のアク取りをする人など、そこそこ必要である。あとは、葉物が欲しいので、それを調達してくる人と、その護衛である。今回は牛ではなく龍であるので、どんな感じになるのかはわからない。この世界のドラゴンだが、硬い鱗の内側については、他の生物と変わらないので、普通に料理出来ると思う。肉なんかは普通に料理できるしね。


 では、調理開始、ということで、モツやガツといった部分を取り出すが、デカ過ぎてそれほど置けない、、、。いや、解体したときも結構細かめに分けたんだけど、それでも厳しいか、、、。まあ、こうなったら仕方がない、人海戦術だ。ということで、食堂ではスペースが足りないので、急遽野外へと調理場を移すことにした。ある程度広い場所へと移動し、空間収納からテーブルをいくつか用意する。テーブルにモツをそれぞれ置いて、まずは私が見本として目安の大きさに切って見せる。何度か手本として見せてから各班に別れて切る作業をしてもらう。


 切り終わってある程度集めたら、4分の1を鍋へ、残りを串に刺す作業を行う。串はどうやって用意したかというと、空間収納に入っている魔樹をマーブルが風魔法でカットして完了。ちなみに、ジェミニとライムは葉物の採集班に加わっている。出来上がった串に切ったモツやガツを刺していく。もちろん最初は見本として私がやって見せた。それを見て、串に刺す班のメンバーも次々に串に刺していった。実は、この串に刺す班員を一番多く振り分けていた。どうせたくさん食べるだろうし、一番多く用意しておくべきだと思ったから。


 鍋に入れたモツやガツは、今回は試しということで、最初に軽く焼くことにした。時短というわけではないけど、いつものモツ煮とは少し違った味わいになるはず。調理班は焦がさないように気をつけながらかき回していた。その間に水を用意しておく。あまり話したことはないけど、実は一番多く用意しているのが水だ。食料は現地調達でどうにかなるけど、水となるとそうもいかない場合が多い。特に、フロスト領を離れると何が起こるかわからないので、しっかりと準備をしておく。今回はそれが活きた形となった。


 ある程度炒まったモツ達の入った鍋に水を入れていく。味付けは味噌とスガーで十分お釣りが来るはずだ。串用に醤油も用意しておいてある。ちなみに、今回の火力担当はマーブルではなくルカさんである。これは本人が志願したので、任せることにしたのだ。アンジェリカさん達はどうなっているかというと、アンジェリカさんは串に刺す班に加わっていた。セイラさんは肉を切る班である。というのも、アンジェリカさんに肉を串に刺す班を頼めば、いいところを見せようと殺到すると踏んだのである。セイラさんにしても同様だけどね。思惑は面白いほど当たり、特にもめることなく班の編制ができたのである。ただ、一部の葉物調達班からは不満が出たけど、そこはガマンしてもらおう。一応その不満については、ラヒラスが「美味い葉物を提供できたらお褒めの言葉が直々に聞けるかも、、、。」とか言って、解消させることに成功したらしい。流石はラヒラスだ、配下で本当によかったと思う。


 夕食の準備と、タンバラの街への差し入れの一部が終わり、さあ、食事だというところで、カムイちゃんが戻ってきた。聞くと、さっさと報告を済ませて全速力でこちらに戻ってきたらしい。何故かと聞くと、こっちに戻ってきたら、私が絶対料理を振る舞うはずだから、ということらしい。


 報告だけど、一応モウキさんには会えたらしい。どうも本人も追撃戦に参加したかったらしいが、ランバラルさんやオルステッドさん達、影の主力部隊がさっさと出撃してしまい、一応大将だから、ということで残らざるを得なかったらしく、不満たらたらだったよう。報告よりも愚痴を聞いている時間の方が長かったそうだけど、、、。


 モウキさんとは、一応面識があったらしいので、面会自体はすんなりと通ったようだ。カムイちゃん自身は任務中はフード付きのローブをかぶっているので、ゴブリンとは気付かれないらしい。モウキさんにはバレているようだけど、アンジェリカさん達と一緒にいたので、その点は問題なかったようだ。他の人は気付いていないみたいだけどね。


 そんな感じで、急いでこちらに来たので、魔力があまり残っておらず疲労困憊のご様子だった。とりあえずこれで全員揃ったので、楽しい夕食の始まりだ。音頭はもちろんアンジェリカさんに執ってもらった。ここはタンヌ王国だからね、違う国の所属である私が音頭を執るわけにはいかない。という感じで押し切った。


「皆様、今回の任務お疲れ様でした。アテインを擁してこちらに攻め込んできたサムタン王国軍は、タンバラの街にいる守備隊の皆様が今も散々に蹴散らしていることでしょう。遅くとも明日には決着が付いているはずですので、その報告をノンビリと待つとしましょう。今日は援軍として駆けつけてくださいましたフロスト伯爵ご自身が用意してくれ、皆様と一緒に作った料理です。大いに食べて夕食を楽しむとしましょう!」


「では、アイスさん、いえ、フロスト伯爵、頂きますの音頭をお願いしますわ。」


 はい? 何でそこで私に振ってくるんですか? 何か守備兵の皆さんも何故かそれが当たり前のような表情でこっちを見ているんですが、、、。まあ、いいか。さっさと食べるとしましょうか。


「では、材料となってくれた自然の恵みや魔物達に対して感謝を込めまして、頂きます!!」


「「「「「「頂きます!!!」」」」」」


 私の「頂きます」の号令とともに、みんないい勢いで料理を食べていく。ちなみに、串焼きはセルフサービスで焼いてもらうことにしてある。焼き方はすでに教えてある。でないと、焼きたてが美味しいけど、焼いている人は食べられなくなるからね。一応全員で焼けるように場所と焼き場は確保してあるから大丈夫。


 ちなみに守備隊のみんなは、その料理がドラゴンの肉を使っていることを知らない。伝えてしまうと遠慮しそうだったので、あくまで素材は明かせないけど上質なものを使っているとだけ伝えてある。


 今回用意したのは、モツ煮とモツの串焼き、もちろん、肉の部分を使ったステーキや串焼きも忘れずに用意してありますよ。どれもかなり美味かったが、今回は特にモツ煮が絶品だった。まだブタモツや牛モツでは最初に焼いてから煮込むことはしたことがないからわからないけど、龍モツについては、これで正解といわんばかりの味だった。今度ブタさんや牛さんでも試してみますかね。


 夕食は大成功のうちに終わり、懸念事項であった、アンジェリカさんのご機嫌も戻った。よかったよかった。後片付けも終わってノンビリしているところで、アンジェリカさん達が尋ねてきた。


「あれ、3人とも、先程はお疲れ様でした。ところで、どうしたのです?」


「アイスさん、お疲れ様でした。今ここに来ましたのは、アイスさんに少しお願いがありますの。」


「お願い? 何でしょうか?」


「ええとですね、、、。ワタクシ達、お風呂に入りたくて、、、。ほら、ここですと、水浴びこそできましても、流石にお風呂となると厳しいじゃないですか。ですので、アイスさんがいらっしゃるときに入っておきたいと思いまして、、、。よろしいですか?」


「ああ、なるほど。確かにそうですね。それでしたらいいですよ。すぐにでも向かいますか?」


「できれば早めにお願い致しますわ。」


「そうですね。さっさと行くとしましょうか。」


 3人はすでに準備できていたので、早速マーブルの転送魔法でねぐらに移動した。戦姫の3人が入浴している最中は、少し暗かったけど、ライムの光魔法があるので、それを利用してスガープラントの補充や、光に釣られてやってきた魔物を少々狩ったりして過ごした。


 アンジェリカさん達がサッパリした表情で入浴が終わったことを伝えてきたため、一旦アンジェリカさん達を砦まで送って、とんぼ返りではないけど、再びねぐらに戻って私達も風呂を堪能した。


 少し遅くはなったけど、良い気分で眠気も出てきたので、寝ることにした。やはりモフモフが一緒だと気分良く寝られますな。


戦闘後のまったりとした展開を楽しんで頂けましたら幸いです。

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