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第77話 さてと、やりたくないものは無理してやる必要はないよね。

VRMMO編、これにて終了です。ダラダラと続けるよりも、こうした下らない理由であっさりと終わらせる方がアイスらしいと判断して終了しました。楽しんで頂けましたら幸いです。

 意識が戻ってから、辺りを見回す。森の中である。以前いた世界からこちらの世界に転生したときもこんな感じだった気がするけど、圧倒的に違うものがあった。それは雰囲気的に暗い、ということだ。これ、最初に降り立つ場所じゃないよね。


 とりあえず助言通りに『ステータス』を心の中でつぶやいてステータス画面を見る。


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【名前】フロスト

【基本レベル】 1 【職業レベル】 ていまー 1 調合師 1

【ステータス】 腕 力 7

        体 力 7

        器 用 7

        速 力 5

        魔 力 0

        幸 運 8

【スキル】 従魔会話 ★ 、調合 1 、植物採取 1 、植物鑑定 1

      弓術 1 、気配探知 1 、アイテム鑑定 1

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 ありゃ、なんだこりゃ? ステータスが半分になっているぞ。この職業について調べてみますかね。わざとらしく『ていまー』とひらがなでわざわざ表示しているのだから、何かあるんだろう。


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『ていまー』・・・極限られた種族のみテイムできるが、その他の種族はテイム不可能。

         魔力に+250%、その他の能力-50%

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 うん、これではっきりした。これ、運営がわざとこうやっているな。まあ、いきなりごり押しで乱入してきたと思われているからこれも致し方ないな。私が運営側でも、このくらいかそれ以上のことしそうだもん。私は特にやりたいと思ってやっているわけではないから、納得いかないといえばいかないが、こうなってしまった以上はどうしようもない。とりあえず、マーブル達を探すとしましょうかね。


 あ、その前に装備を確認しないとね。


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武器 『始まりの弓』  ・・・ 攻撃力+1 弱い代わりに不壊

   『始まりの矢』  ・・・ 攻撃力+0 弱い代わりに弾数無制限

上半身『始まりの上着』 ・・・ 防御力+1 弱い代わりに不壊

下半身『始まりのズボン』・・・ 防御力+1 弱い代わりに不壊

頭  『なし』

アクセ『なし』

   『なし』

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 なるほど、弱い代わりに不壊だったり無制限だったりするのか。これならどうにかなりそうだな。まあ、実際に戦ってみないとわからないけど、、、。


 自分の置かれた状況を確認してから適当に進むことにした。何をするにしても動かないとどうしようもないからね。とはいえ、私は軽度ではあるが方向音痴である。正直どうにかなりそうにもないのが本音である。


 折角なので気配探知のスキルを使いながらしばらく進むと、もの凄い殺気を放つ存在を確認した。力量差がもの凄いので、相手は殺気こそ放っているが余裕で待ち構えていた。ただ、気配探知は所詮1なので、数や相手がどういったものなのかはわからなかった。ここでは水術は使えないから、純粋にスキルだけでの気配探知だ。普通に考えたら絶望的な状況だろうが、実際に今まで戦ってきた強敵と比べてしまうと雑魚もいいところ、といった程度である。とはいえ、これはゲームだし、このステータス通りだと正直厳しいのは否めない。ただ、動きづらいかといえば、そんなことはなく、通常通りに動けてはいる。水術ないけど。まあ、実際に戦ってみればわかるでしょう。


 これだけの殺気を放っているにもかかわらず、何事もないかのように進む私にプライドを傷つけられたのかわからないけど、こちらに襲いかかってきた。どうやら大きめの黒い犬? いや、狼といったところか。生憎魔物に対しての鑑定スキルはもっていないので、正体不明の存在である。某ゲーム風にいうと、「黒い巨大な獣」といったところかな。


 狼は私を食いちぎろうと正面から襲ってきた。私は難なく躱してカウンター気味に横っ面に喧嘩キックを相手に喰らわす。うーん、やはりダメージは少ないか。良い攻撃を喰らった割にはダメージを受けていないので、懲りずに何度も突っ込んできたので、それを避けては喧嘩キックを喰らわせるという状況が続いた。


 折角だから弓も使って攻撃することにした。とはいえ、弓は初心者でしかないので、遠くからの狙撃なんて無理だ。遠くで当たらないなら、当てられる距離でぶっ放せばいいじゃない、ということで、喧嘩キックを喰らわしては、追撃として弓矢で攻撃する。結構至近距離なので、当たる当たる。これは気持ちが良い。幸いにも初心者の弓矢は不壊や弾数無制限というおかげで撃ち放題だ。


 一方狼は懲りたのか、正面からの攻撃を止めて死角からこちらを攻めてくるようになった。が、その程度では大した脅威にすらならない。脚でカウンターを当てては弓矢で追撃を繰り返す。そのおかげもあってか、弓矢については少し何かわかった気がした。それに、いい加減飽きてきた、ということで、慣らし運転はこれまで、ここからは倒しにいきますか。いや、今までも倒すつもりだったけど、勝手がわからなかったのでね。


 運が良いことに、これだけ一方的にやられているにもかかわらず逃げようとしない狼は逃げずに攻撃を繰り返していた。動きや攻撃パターンは理解したのでこれからは射撃大会である。最初に行ったことは両目を射ることによってダメージを最大限与えたことである。片目、両目と潰したときにはそれぞれ狼は怒り狂っていたが、そんな程度では私には当たらない、ということで、狼の攻撃を回避しては、両目に刺さっている矢をめがけて次々に撃っていくと、少しずつ最初に刺さっている矢が奥に進んでいき、最終的には頭部を貫くことに成功。狼を無事仕留めた。何か、某何度でも生き返ってくる戦いの漫画で出てきそうな奥義っぽくなってしまったが、実際にそうなったから仕方ない。


 狼の死体が消えると、その死体の場所から毛皮と牙、あとは何かの魔石っぽいものが落ちていた。これらを拾おうとしたら、脳内に次々にメッセージが聞こえた。「基本レベルと戦闘職レベルが上がりました。」「レベル差10以上の敵を倒しましたので、称号『シルバーキリング』を獲得しました。」「レベル差20以上の敵を倒しましたので、称号『ゴールドキリング』を獲得しました。」を始めとして続く続く、、、。戦利品が消えると困るので、メッセージが続いていたが、構わずに戦利品を拾い集めることにした。


 かなり長くメッセージが続いていたということは、それなりの数の称号が手に入ったということでもあり、そのおかげで、強い敵にもそこそこダメージが与えられるようになったともいえる。その証拠に次々と襲ってくる魔物をそれほど手間をかけることなく倒すことができていたのだ。おかげでかなりの数の素材と魔石が手に入っていた。アイテムはインベントリという便利なものがあるので、そこに収納しておいた。また、この辺の敵はレベルがかなり高いらしく、「現在の職業ではこれ以上レベルが上がりません。」というメッセージが届いたくらいだ。おい、基本レベル、仕事しろよ、とか思ったけど、そんなことよりも今はマーブル達の行方が気になっていた。


 マーブル達を探すために魔物を捜し回るが、出会った魔物は先程の狼やら熊やらオークみたいなものや羽の生えた人みたいなものがいて、明らかにこの場所が普通ではないことがわかる。こんな見た目やばそうな魔物しかいない場所で、可愛い猫やウサギやスライムなどいるはずはないことだけはわかった。


 諦めて次の場所へと行こうと魔物を倒しつつ進んでいると、何やら一際大きな気配がしたのに気付いた。気配の違いが理解できているということは、気配探知スキルのレベルも上がっているのだろう。だろう、とか言っているのは、マーブル達の誰とも出会えなそうなこの状況で私のやる気がだだ下がりになっていたからである。ぶっちゃけ、このゲームに嫌気が差してきたので、ステータスとかどうでもよくなっていたのだ。


 そんな中、新たな情報が手に入るかもしれないと、少しの期待を抱いて、その一際大きな気配を持っている魔物の方向に進んだ。定番の上位悪魔といったいでたちだった。その悪魔の周りには、ランクが低そうな取り巻きが何体か控えていた。


「ほう、見るからにひ弱そうな人間、しかもジジイか。こんなところに一人で何をしに来た?」


 その悪魔は威厳を持って話しかけてきた。とはいえ、正直この程度の威厳など大したことはなかったが、一縷の望みを賭けて話しかけることにした。あ、そういえば、私はジジイのキャラで作ったんだっけ。


「ふむ、お前さんならわかるかもしれんの。少し訊ねたいことがあっての。」


「ほう、我に訊ねたいことか、よかろう、話してみるが良い。」


「では遠慮なく。この辺では猫とかウサギとかスライムとかの魔物は出てこんのか?」


「何かと思えば、そんなくだらないことか、、、。」


「お前さんはそうかもしれんが、ワシにとっては大事な話じゃわい。」


「では、答えてやろう。そんなものはここにはおらんわ。」


「そうか、邪魔したの。」


 そう言って私がこの場を去ろうとすると、2体の取り巻き達が私の行く方向をふさいでくる。


「ここにいないのならば、用はないからの。済まんが通してもらえんかの?」


「済まないが、お前はここで死ぬのだよ。フッフッ、、、。」


「やれやれ、仕方がないのう、、、。」


 最初に行く手を遮った取り巻き達の股間めがけて膝を突き上げる。取り巻き達は悶絶して倒れ込む。なるほど、悪魔も急所は同じか。


「ほう、お前、ただのジジイではないな。これは楽しめそうだな、、、。」


 ボス悪魔が何か言っているようだが、一々相手をしているのも面倒だから、とりあえず悶絶している取り巻きたちに矢をぶっ放してとどめを刺していく。初期装備の弓矢でも問題なく倒せることがわかったので、取り敢えず残っているとうざそうな取り巻き達に近づいては矢を放って仕留めていく。時折ボス悪魔が魔法を詠唱し始めたので、近づいては矢を放って詠唱させないようにしつつ取り巻きをたおしていると、やがてボス悪魔のみの状態となった。


「こいつらは雑魚とはいえ、全員倒すとはやりおる。では、我も本気で戦うとするか。」


 と一方的に宣言して悪魔は別の姿に変化する。それは黒い大きな龍の姿であった。


「我の真の姿を見たのは人間ではお前が初めてだ。この意味わかるか?」


「正直そんなことどうでもよろしい。ただ、喧嘩を売る相手は考えた方がよいぞ。」


「我を舐めたこと後悔するがいい。」


 はぁ、やれやれ、またドラゴンか。定番とはいえ、ドラゴン飽きたな。どうせ肉とか手に入らなそうだし、出てきてもゲーム内で消費するだけだからなあ。さっさと倒してログアウトしてから、今日は久しぶりにドラゴンのお肉をいただきましょうかね、、、。


 ドラゴンとは戦い慣れているとはいえ、装備やステータスの関係で普通に戦うとダメージはほとんど与えられないだろう。特に弓矢については恐らく至近距離でないとダメージすら出ないはず。慣れてきたとはいえ確実に当てられるかといえばそうでもないしね、、、。


 そんな感じでドラゴンと戦っているのだが、やはりダメージはそれほど通らない。今回は目を狙おうにも身長差がありすぎなので、どうしても距離が必要になってしまう。距離が離れると結界みたいなものにはじかれてどうにもならない。ということで、手とか足とか羽とかチクチクチマチマと攻撃を加えていくと、流石にダメージが蓄積していたのか、よろよろの状態になっていた。


 悪魔改めドラゴンは、上空に逃げてしまった。これでは攻撃が届かないのでどうしようもなくなってしまった。というか、離れてしまったので放っておいてこの場から離れることにした。別にどうでもいいしね。


「ほう、ここから逃げるのか、、、。それもよかろう、、、。」


 何か偉そうにいっているが、お前ボロボロだからな。ただの負け惜しみ、いやギャグにしか聞こえないぞ、とか思いながら出ようとしたのだが、出られなかった。仮にドラゴンが逃げてくれば迎撃も考えたが、上空で粋がっているだけで何もしてこないのが非常に迷惑だった。


 これ以上やる気も起きなくなってしまったので、最終手段を採ることにした、そう、強制ログアウトである。「ステータス」の他にも「メニュー」と心の中でつぶやいて画面が出てくることに気付いたので、さっさと終了の手続きをとる。「ここで終了してしまいますと、装備品以外の手に入れたアイテムがなくなりますがよろしいですか?」とメッセージが来たが、これ以上続ける気もなかったので、ためらうことなく『はい』を選んでログアウトした。


 画面が暗転して、意識が一瞬飛ぶが、意識が戻るとそこにあったのは、アマデウス教会にあるMMOの装置だった。起きるとマーブル達は先に戻ってきていたのか、一斉に飛びかかってきた。マーブルから順番にモフモフしてなで回す。やっぱりこれだよこれ! あー癒やされる-、、、。一通りモフモフプヨプヨを愉しんでからどうだったかをマーブル達に聞いてみた。


 マーブルはウンザリした表情で「ミャー、、、。」と力弱く鳴いた。良いことなかったんだね。


 ジェミニは明らかに怒ったような表情で、「いくら弱そうに見えるからといって、プレイヤーばかりじゃなく魔物からも襲われれまくりでしたよ! もちろん全て返り討ちにしたですよ!! 誰に喧嘩を売ったかって話ですよ!!」プレイヤーならともかく、魔物からも襲われたのか、、、。でも、全て返り討ちにするあたりがジェミニらしい。


 ライムも珍しく撃怒プンプン丸だった。「ボクのところにもいっぱいきたの!! あるじをさがしているときにじゃまだったのー!!」


 3人と一緒に私も愚痴を言い合っていた、、、。その愚痴を言い合っている中で、向こうが私達を合流させる気が全く無いことがわかったので、このVRMMO「ブループラネット」は今後二度とやらないことが私達の中で確定となった、、、。


 いくら私に対しての扱いがひどくても、経緯が経緯だったからそこは仕方ないし、問題なく戦えているからいいけど、マーブル達と一緒に旅が出来ない以上やる意味は全くないからねえ。


 この日の夕食はとっておきのドラゴンの肉を使って気合を入れて料理し、今回のVRMMOで貯まった鬱憤をある程度解消することができたのは幸いだった。もちろんその後はいつも以上にタップリとモフモフタイムを堪能しました。


いつもご覧頂き誠にありがとうございます。もし、お気に召して頂けましたら、評価や感想などを頂けますと大いに励みになります。


また、ブクマ登録や誤字脱字のご指摘なども随時お待ち申し上げております。


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