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第61話 さてと、地下5階です。ようやく待ちに待ったものが。

何となくこのダンジョンの方向性が出てしまいました、、、。考えていた当初はここまで偏ることになるとは思ってもいませんでしたが、これはこれでアリだと思っております。楽しんで頂けましたら幸いです。

 先程の件で、まだ朝食後間もない時間にもかかわらず疲労困憊の状態です。周りには地べたで正座しているメンバーが7人、はい、先程卵焼きをねだった人達ですね、ハイ。


「も、申し訳ありませんでした、、、。」


 7人全員が一斉に土下座してますよ、ええ、それはもう見事なまでのシンクロ率ですよ。話を聞いてみると朝食が終わったので、こちらに向かおうとしたら、領主館から今までかいだことのないにおいがして、ガマンできなくなったとのことです。7人ともそうだったらしいですよ。もっとも、ウルヴ達は屋台で朝食を済ませて戻っている最中に焼いている卵のにおいに釣られた上に、鬼気迫る表情でやってきていた4人に誘われたらしいです、ハイ。


 まあ、黙っていた私にも少なからず責任はあったので、今回はお咎め無しということで決着です。通常なら貴族、しかも領主に迫ってものを作らせるなんてことは本来あり得ないそうで、私はそういったことは全く気にしていないけど、周囲の目があるからよろしくないとのこと。だったら、何であんな愚行をしでかしたのだろうか、、、。もっとも、周囲の目なんてほとんど注目されていないこのフロスト領にあるのかどうかは疑問であります。


 一応全員落ち着いたところでウルヴ達は戻っていったが、カムイちゃんはカムドさんに呼び出されている。あ、こりゃ説教だな。カムイちゃんが怒られている間にダンジョンに潜る準備をしていた。いつもは普段の準備で問題なかったけど、今回は念のため液体をいれる壺、しかも蓋付きのやつをたくさん準備することにした。幸いにも造成班がかなりの数を作ってくれたおかげだ。もちろん、対価は払いましたよ。


 壺を空間収納にしまいつつ、他の準備をしている間にカムイちゃんが戻ってきた。かなり憔悴していたが自業自得だろう。とはいえ、逆を言えば、私達との生活に馴染んできているということでもあるので、これはこれでいいことなのだろう。


 準備を終える頃には何とか復活していたので、これからダンジョンに出発だ。アマデウス教会の転送ポイントへと移動して、ダンジョン入り口へ転送する。地下1階から進むのは、もちろんモフモフを堪能するためである。地下1階では豆柴達が、地下2階ではハニービー達がそれぞれ出迎えてくれる。豆柴達にはいつも骨をあげているが、ハニービー達には何もあげていない、というのも、先日何かあげようとしたら、女王蜂から特に必要ないと言われたのが原因だ。こうしてちょくちょく会いに来てくれたら満足ということだったので、こうして顔を出すことにしている。


 モフモフ達をひとしきり愛でた後、地下4階の下り階段まで転送してもらう。ちなみに、地下2階では入り口と下り階段にそれぞれ転送ポイントを設置してある。領民達にこのダンジョンを解放したときには、領民達と許可を与えた冒険者だけには転送ポイントも解放することにしよう。ラヒラス、頑張れよ。


 地下4階の階段を降りて地下5階に到達する。地下5階も平原だった。この階層はどんな魔物が出てくるのか期待しながら進んでいくと、しばらくは何も出てこなかったので悲しく思っていると、ようやく魔物の存在を探知できたので、高くなったテンションを押さえつつ先を進む。


 進んだ先には牛の魔物がいた。地下3階や4階とは違い、集団ではなく数がまばらだった。こちらに警戒している様子が全く無かったので、不思議に思い鑑定してみる。今度はどんな種類なのだろうか。


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『ソイソーカウ』・・・ダンジョン限定の牛型の魔物じゃ。見た目の通り普段は大人しい魔物じゃが、攻撃は厳禁じゃぞ。とはいえ、お主達なら問題はないか。ちなみに、こやつらの乳は「ソイソー」とかいう種類の液体を出す。この液体は不思議な味だぞい。折角じゃから容器を持ってきているなら乳搾りをしてみるといいかも知れんのう。

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 なるほど、「ソイソー」という味か。牛乳じゃないんだな。他はどんな種類かな、と。


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『ウスターカウ』・・・先程のソイソーカウと似た種類のやつじゃな。ソイソーカウとは異なるのは乳が「ウスターサ」という種類のこちらも不思議な味じゃな。こちらも搾ってみてはどうじゃな。

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 こいつもそうか。ということは、こいつも特殊なやつだな。


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『ビネガーカウ』・・・こちらも先程の2種類と同じじゃ。乳が「ビネガー」という種類の液体であること以外はのう。あとは以下同文じゃ。

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 ちょっとまて、ビネガーってあのビネガーかな? ということは、ひょっとしたらソイソーとウスターサという名前も、、、。とりあえず搾ってみて確かめるとしますか。あ、倒しちゃダメと念押ししておくか。


「さて、みなさん。ここにいる魔物達は私の予想が正しければ、これからの食事において大いに躍進してくれるほどの存在となるでしょう。くれぐれも倒そうなどとは考えないようにして下さい。」


「アイスさん? 食事においての大躍進ということですが、それは食材ということではないのですか?」


「まあ、ある意味食材と言えば食材なのですが、今回の場合は倒して手に入れるものではないのです。」


「?? よくわかりませんが、要は攻撃しなければいい、ということですの?」


「そういうことです。では、実際にどうすればいいのか、これから手本を見せますので。」


「なるほど、わかりましたわ。」


 代表してアンジェリカさんがこう返事を返してくれたので、早速実戦開始といきますか。


 最初はやはり『ソイソーカウ』からだな。私はソイソーカウに近づくが、ソイソーカウは全く気にもとめておらず、目の前にある草を食べている。これは好都合だ。ということで、空間収納から壺の1つを取り出してソイソーカウの下に置き、乳搾りを始めた。いい勢いで茶色の液体が壺の中に入っていく。多少「ソイソー」が手についたので、試しに舐めてみると、やはり思った通りの味だった。ソイソーとはソイソース、つまり醤油だ。まさか、こんなところでこれを手に入れることができるとは、、、。正直感動の余り涙ぐんでしまったけど、こうしてはいられない。ジャンジャン絞り出すぞ-!!


 しばらく乳搾りを続けていると、やがて壺が満タンになったので、しっかりと蓋をして空間収納にしまうと、その様子をみていたアンジェリカさんが恐る恐る訊ねてきた。


「あ、あの、アイスさん。私達を放っておいてまで夢中に絞り出していた液体は一体?」


「あ、すいません。この液体は以前から手に入れたいと思っていたもので、こうして手に入れることが出来た嬉しさの余り夢中になってしまいました。」


「い、いえ、それは構わないのですが、その液体は一体?」


「ああ、今の液体ですか。これは調味料の一種でして、これを入れることで料理の幅が広がる革新的なものなのです。しかも、これはどの料理にも合う万能調味料の1つと言っても過言ではないほどのものです。」


「な、なるほど。で、アイスさん、この作業をアイスさんお一人でなさるおつもりですの?」


「できれば手伝って欲しいのですが、お願いできますか?」


「先程手本を見せるとおっしゃっていたではないですか。それを忘れましたの?」


「あ、そういえば、そんなことを言いましたね。あまりの嬉しさに忘れてしまいました、いや、申し訳ない。」


「まあ、そこまでアイスさんが夢中になるほどですから、よほど素晴らしいものなのですよね? それを抜きにしても、もちろんお手伝い致しますわよ。」


 アンジェリカさんの言葉に、周りのみんなも頷く。


「みんな、ありがとう。では、早速やり方を説明します。実際にやる前に少し練習してみて下さい。」


 みんなに一通り説明していく。まずはエア乳搾りで練習してもらう。手を軽く握るような状態にして、先端より少し上の部分を小指と掌で軽く挟みながら、順番に薬指、中指、人差し指の順番で軽く握るようにすることから始める。最初はみんなぎこちない感じだったけど、慣れてきたのか良い動きになってきていた。これを左右両方の手でできるように練習した。


 それも慣れてきたので、次の段階に進む。言うだけなら簡単。今の動きを軽く下に引くような感じで行っていけば良いだけだ。それも練習して慣れてもらう。


 そっちも慣れてきたので今度は実践だ。


「みなさん、練習は十分行いましたので、次は実際にやってもらうことにします。幸いにも牛たちの乳は4列ですので、1頭につき1列ずつ順番にやっていきたいと思います。流石にマーブル達にはできないからマーブル達は周囲の警戒をたのむね。それでも暇だったら、搾る牛たちにじゃれついて動かないようにしてくれると助かるかな。」


 マーブル達は出番が出来たと知り、嬉しそうに敬礼で応えてくれた。うん、君達も嬉しそうにしてくれて私も嬉しいよ。


 先程搾らせてくれたのとは別のソイソーカウがいたので、練習も兼ねて他の4人にやってもらうことにした。最初はアンジェリカさんだ。ゆっくりとソイソーカウに近づいたので、空間収納から壺を出してソイソーカウの下に置いて、蓋を開ける。恐る恐る練習したとおりにソイソーカウの乳を軽く握る。最初はおっかなびっくりだったので、出てくる液体の量も少なめだったが、3回4回と繰り返すうちに慣れてきたようだ。


「最初はどうなるかと思いましたが、これも案外楽しいものですわね。」


 慣れてきたアンジェリカさんは嬉しそうに言った。出てくる液体の量が少なくなってきたので次の人と交代だ。アンジェリカさんの次はセイラさんだ。セイラさんも最初は上手くいかなかったが、すぐに慣れてきたのか良い感じで絞り出せていた。その次はルカさんだ。ルカさんはこういったことが多少苦手なのか慣れるのに少し時間がかかったが、慣れてくると先程の2人と同じように上手く絞り出せていた。最後はカムイちゃんだったが、カムイちゃんは流石はゴブリンというべきか器用で、他の3人よりも上手く絞り出せていた。もちろん、動かないようにじゃれついて気を引いていたマーブル達の働きも忘れてはならない。


 良い感じで1頭を搾り終え、搾らせてくれたソイソーカウの鼻先をなでて感謝の気持ちを伝えた。ソイソーカウも嬉しそうに目を閉じて気持ちよさそうにしていた。


 こんな感じでソイソーカウだけでなく、ウスターカウにも乳搾りを行うと、予想通りウスターソースの味だった。もちろん、たくさんいただきますよ。ビネガーカウもね。


 結局、この階は乳搾りで終わったようなものだったが、夕食の時間まで乳搾りを行い、たくさんの戦利品を得ることができた。これを考えると十分以上の成果に満足だ。地下5階の下り階段まで進んで転送ポイントを設置、アマデウス教会まで戻った。ちなみに今回の戦利品についても少し試作をして確かめてから披露するということで納得してもらった。というより、これがどうなるか想像もついていないようなので、納得するのは早かった。


 それはそうと、ようやく念願の醤油が手に入ったので、料理の幅が増えて嬉しさを隠しきれない。早速バリバリ試作して試食しまくるぞ! あ、しばらくは試作はねぐらで行うことに決めた。今日の朝食みたいな事にならないようにするためだ。


 明日の朝食から早速何か作ってみますかね。特に、マーブル、ジェミニ、ライム、楽しみにしててね。


いつもご覧頂きありがとうございます。もしお気に召して頂けましたら評価や感想などを頂けますと大いに励みになります。また、ブクマ登録や誤字脱字のご指摘なども随時お待ち申し上げております。


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[気になる点] 前作の51話に王都ではタマネギやニンジンなどの野菜類だけでなく何とミソやショウユまで売っていたのだ、とありますが。
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