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第6話 さてと、ハエが群がってきましたか。

話の大筋は、予定通りに進んでいるのですが、細かいところで微妙に違いが出てきております。どうしてこうなったorz。でも、これはこれで新たな展開を楽しめるというものです。よろしければ楽しんでいって下さい。

 ここ数日はトリニトの散策を中心にしていたが、折角だから屋台の質を充実させようと、昼前までを散策に、昼食を食べてからは狩りや採集に精を出していた。そのおかげもあって、大通りは少しだけだが賑わいを見せるようになった。狩りや採集したもののうち、食べられる部位すなわち可食部以外を冒険者ギルドに卸して、可食部は直接屋台に卸していた。細工物を売っている住民もいたが、彼らは商業ギルドではなく冒険者ギルドから仕入れているらしく、公正に取引できているそうだ。食べ物を扱っている人達は私達が直接卸しているおかげで商業ギルドを通じて取引する必要がなくなったので、しっかりと儲けが出るようになったそうだ。


 その結果に満足していたが、恐らくそろそろ商業ギルドが動き出す頃だろうか。恐らく最初はならず者を雇って屋台にちょっかいを出してくるだろう。本来なら守備隊を動かして治安維持にもなって一石二鳥となるはずだけど、残念ながらここはトリニト。多分領主と商業ギルドがグルになっているはずだから、守備隊を動かそうとするだけ無駄だ。何より私は長男とはいえ実質権力などないので、私がいくら命令したところで聞くことも無い。というわけで、私自ら治安維持を行い、守備隊や領主側がならず者達とグルであることを暴露し大恥をかかせてやろう。


 さらに数日間は同じように昼食前は散策、昼食後は狩りや採集を行い、食事を扱っている屋台のみんなの蓄えを増やしていった。予想では明日か明後日に動き出すだろう。流石にトリニトは貧しいので守備隊とはいえ必ず一枚岩ではない。私の味方は少数ながら存在する。その少数から情報が入ってくる。彼らは身分がそれほど高くないのに詳細に私に伝えてきた。どれだけ情報管理ができていないんだよ、ここ。まあ、こちらとしてはありがたいけど、ここまでひどいと泣けてくるな。というわけで、これから数日間は狩りや採集には出ずに散策メインで行く予定だ。


 次の日、早速動き出した。いつもの肉を焼いている屋台でオーク肉をマーブル達と堪能していると、どう見ても盗賊や山賊の類いの人間が5人ほど現れた。あちらは武器持ち。こちらは武器無し。というわけで偉そうに言いがかりをつけてきた。


「おう、お前、誰に許可もらってここに店出してんだ?」


 屋台のおっちゃんが言い返そうとしていたので、止める。ここは私の出番だ。


「ここは誰が店を出しても問題ないはずだが? 誰が許可を出さないといけないと言った?」


「おう、ガキが偉そうに言ってんじゃねえぞ。痛い目に遭いたくなけりゃな。」


「その前に質問に答えろ。誰が許可を出さないといけないと言ったのか。それとも人の言葉がわからないのか?」


「ああん? 良い度胸だな、おい、身の程を教えてやれ!」


 3人が私めがけて襲ってくる。さて、どう料理してやろうかと思ったら、マーブル達が迎え撃っていた。しかもわざと体当たりでだ。マーブル達は見た目は非常に可愛いが、ライムはともかく、マーブルとジェミニはSランクの魔物だ。ライムにしてもこの程度の相手なら問題なく倒せる。私の予想通り襲ってきた3人は何も出来ずにそれぞれ腹に体当たりをされ悶絶していた。特にライムに体当たりされたならず者は口から何か吐いていた。さて、これからが本番かな。こういう連中が今後ここに来ないように徹底的に潰す。


「おいおい、猫とウサギとスライムだぜ? お前ら、偉そうにしている割には大したことないなあ。こんなに可愛い猫とウサギとスライムに倒されるって、弱すぎて恥ずかしくない?」


 わざと猫とウサギとスライムということを強調して挑発する。落ち着かれるとマーブル達がただのペットではないことがばれてしまう。マーブル達もわかっているのか、敢えてこちらに戻ってきて私にじゃれついてくる。うん、非常に可愛くて結構だ。


 ならず者達は、馬鹿にされたことによって怒りをあらわにしていた。また、こちらが大声で馬鹿にしたので引くに引けなくなっていた。今のうちに水術で罠をはる。といっても、逃げられないようにするためだ。準備ができたので反撃開始と行きますか。


「何だ? お前ら掛かってこないのか? まあ、仕方ないな。何せ猫とウサギとスライムの体当たりで動けなくなる位弱っちいからなあ。とはいえ、自由に商売をしてもいい場所でそちらの都合を押しつけて何かしようとしているくらい馬鹿には、誰に喧嘩を売ったのか身をもって知ってもらわないとな。」


「ガキが調子に乗りやがって、お前にはしつけが必要なようだな。」


 そう言うと、残りの2人で一斉に襲いかかってきたが、動きは遅いわ、武器の使い方はなっていないわで、よくこんなので喧嘩を売ってきたものだと感心する。今回は見せしめの意味もあるので、少しずつ戦闘力を奪っていくことにしますか。


 襲いかかってきた2人は弱いとはいえ、連携慣れしているみたいだが、やはり弱いものは弱い。攻撃を躱しながら腹パンを決めていく。うずくまったところで1人にはアゴに掌底を放ち動けなくする。偉そうに言ってきた馬鹿には尻を蹴りつけ前のめりに倒す。マーブルに視線を動かすと、マーブルは皆まで言うなと言わんばかりに馬鹿以外の4人を闇魔法で拘束する。馬鹿は何やら喚いていたが、話すのも馬鹿らしいのでボコボコにした。大人しくなったので話を聞こうとするとシラと切っていたので、関節を外したり、砕いたりして今置かれている状況を理解してもらい大声で話してもらう。話の内容だと、こいつらは商業ギルドからの依頼で、ギルドを通じてものを買わなくなったので、ギルドに逆らうとどうなるか見せしめのためにこういう行動に出たそうだ。まあ、わかっていたけどね。ことさら大げさに驚いた振りをして、商業ギルドが犯罪に手を染めていることを大っぴらにした。本当かどうかはどうでもいい。一番の目的はトリニトの住民が良い生活を送れるようにすることだ。


 馬鹿どもを拘束したまま守備隊の詰め所へと向かった。もちろんわざわざ持ち上げるわけがなく、引きずっていった。途中で擦り傷を通り越した状態になっていたが、そんなのは知ったことじゃない。強盗や盗賊に慈悲はない。詰め所に到着したときは血みどろの状態で引き渡した。詰め所にいた兵達は驚いていた。


「ア、アイス様、この者達は一体?」


「ああ、こいつらか? まっとうに商売をしていた屋台の人達に言いがかりをつけてきたので、連れてきた。あの場所は自由に商売をしてもいい所なのにだ。で、こいつらは商業ギルドに雇われて文句を言いに来たらしいけど、お前ら誰一人止めに行かなかったよな? お前らも商業ギルドの言いなりか? それとも何か別の命令があったのか?」


「い、いえ、私の所には何も報告がありませんでしたので、、、。」


「そうか、まあいいや。こいつらのことは後は任せるぞ。こいつらは商業ギルドとグルだということはあの場にいた住民の口から話が広まるから、こいつらの扱いによってお前たちのトリニトでの仕事ぶりや人間性が広まるからしっかりな。」


 ならず者を詰め所に引き渡して離れ小屋に戻った。さて、次はどう出てくるかな?


 次の日、マーブル達とじゃれ合っていたら、呼び出しがあった。領主からだ。一応父親ではあるが、親子としての接触はないに等しい、という情報が入ってきた。恐らくパトロンである商業ギルドから何か言われたのであろう。早速向かってみるか。


 呼び出されたのは領主の自室ではなく面会の間であった。これだけでも私の扱いがわかるというものだ。


「父上、お呼びで?」


「アイスか、今まで自由にさせてきたが、今回の件についてはいささか度が過ぎているぞ。」


「はて? 今回の件とは?」


 いくつか身に覚えがあるので、特定できない。メイドを出入り禁止にしたこと、後妻を罠にかけたこと、跡継ぎ候補である弟を馬鹿にしたこと、あとは商業ギルドに嫌がらせをしたこと、一体どれなんだろうか?

彼が言うには、今言ったこと全部が該当しているらしい。特に商業ギルドの件で強く言ってきた。


「父上、自由に商売出来る場所に言いがかりをつけてきた商業ギルドの言い分がおかしいのにそれをかばい立てするとは、そちらの方が問題では?」


「アイスよ、言いたいことはわかるが、商業ギルドにそっぽを向かれると、トリニトが立ちゆかなくなってしまうのだよ。」


「父上、それは父上を含めて、貴族側が一切住民のために何一つ政策を行っていないからですよ。ハッキリ言いますけど、まともに商売ができないような状態の場所に商業ギルドがある意味って何です? 他の都市はわかりませんけど、少なくとも商業ギルドが一番ここで商売の足を引っ張っているのは間違いないのですよ。」


「そう言われてもな、トリニトに入ってくる税収の大部分が商業ギルドからだ。これでも足を引っ張っていると?」


「父上、いや、父上達はそれだけで商業ギルドのいいなりに?」


「アイス、言葉が過ぎるぞ!!」


「え? あの町並みを見て何も感じずにその言葉? なるほど。」


「いいか、アイスよ。ここトリニト領、いや、我がフレイム伯爵家は代々火魔術の家系である。初代が火魔術を駆使して活躍してこの領を得た。火魔術で存在感を示すことで伯爵家が続いてきたのだ。」


「いや、それについては否定しませんよ。ただ、領土は住民がいて初めて成り立つのですよ。領民をないがしろにして火魔術だけ学んでいる結果が今の状態なのです。正直、今のフレイム家は火魔術ではなく火の車でもって存在感を示している感じがしないでもないです。そちらの方が恥ずかしくないんですかね?」


「そこまで言うのなら、お前がトリニトをどうにかしてみせよ!! どうにかならなかった時は覚悟しておけよ!!」


「お、父上、私に任せてもらえるのですね? でしたら、私がやっていることに一々口を挟まないことを約束して下さい。また、義母上や弟達が何か言ってきても私は無視しますので、それを許可して下さい。」


「いいだろう。で、どのくらいの期間でできる?」


「トリニトの商業ギルドを潰せば2年で余裕ですかね。」


「に、2年だと? 本当にそんな短い期間でできるのだな?」


「商業ギルドがなければ、2年あればお釣りが来ますね。」


「そうか、わかった。お前に任せる。約束通り2年で結果を出せよ。」


「ありがとうございます。とにかくトリニトの商業ギルドを潰してから2年です。いいですか? 商業ギルドを潰してからですからね。」


「一応聞いておくが、そんなに商業ギルドを潰さないとダメなのか?」


「はい、ここトリニトが貧しいのは、統治する側の無策もありますが、それ以上に商業ギルドが足を引っ張っております。まずは商業ギルドをトリニトから無くさないと上手くいくものもいかなくなります。」


「そこまで言うのであれば、お前の好きなようにしろ。ただし、最低でも商業ギルドがなくなって2年以内で商業ギルドから送られてくる金額の2倍以上の税収を得られるようにせよ。」


「承知しましたが、念を押しておきますが、横から口出ししたり、2年の間は私のジャマをしないようにしてください。」


「それはわかったが、私達はその間何をしていればよいのだ?」


「火魔術の修行をしてはどうですか? 父上はともかく、アッシュはこのままだとボンクラのままで終わりますよ。彼を後継にしたいなら本格的に鍛えないと使い物にならないですよ。」


「そ、そうか、お前の言うとおりにする。」


「私は後を継がなくても冒険者で生きていけますが、あいつは領主になって税収に頼らないと生きていけませんから。」


 何かなし崩し的に財政再建の許可をもらってしまったが、これで邪魔な商業ギルドはつぶせる。とはいえ、このトリニトだけでは難しいかな、そういうものに長けた人材が欲しいな。明日以降は散策に加えてそういった人材がいるかどうか探さないとな。しかし、こんな寂れた場所に果たしてそういう人材がいてくれるのかもの凄く心配だ。



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