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第43話 さてと、後処理その2です。

結構勢いで書いてしまっている部分もあり、内容が薄く感じられるかもしれませんが、そういった部分は脳内補完で対処頂けると、、、。それはさておき、楽しんで頂けると幸いです。

 テシテシ、テシテシ、ポンポン、いつも通りマーブル達に起こされる、いや、起こしてもらっていると言った方が正しい。水術で顔を洗ってサッパリしてから本日の活動を開始する。最初の活動はもちろん朝食を作ることである。今日は朝からモツ料理である。というのも、昨日の夜から弱火の状態でガッツリ煮込んでおり、仕込みは万全だ。アッサリとした味わいにしたかったので、香草も忘れずに煮込んであるから多分、大丈夫だと思う。味付けはスガーのおかげでどうとでもなるので正直助かる。


 今回は実はちょっとした実験も兼ねていた。その実験とは、ズバリ炊飯である。といっても稲はまだ見つかっていないので今回は大麦を重力魔法で押しつけて水を吸いやすくした状態、つまり押し麦である。押し麦もしっかりと水につけておいてあり準備は万端だ。あとは、火力調整がうまくいくかどうかだ。


 最近は畑からもちょこちょこ収穫されてきており、それに伴って収穫量も増えてきている。とはいえ、まだ未使用の畑はたくさんあるので、これからも種類や量を増やしていけたらな、と思っている。そんなこんなで付け合わせ的な何かも無事完成してこれより朝食だ。


 当初、私達とトリニト組用で作っておいた朝食だったが、どこからかかぎつけた領民達によって結局は全員に配る羽目になった、いや、念のため全員が食べられるくらいは用意したけど、まさか普段は領民達は各自で用意しているはずだったのだが、今回はこれ目当てで用意しなかったとのこと。もう少し上手く出来るようになってから領民達には振る舞おうかと考えていたのだけど、こうなっては仕方がない。


「フ、フロスト様、これは一体?」


「ああ、これ? これは、ここで収穫した大麦を押しつぶしたやつを水でふやかしてからしばらく煮たままにして、火が完全に通ったら、火を止めてしばらく放置したものだよ。まだ、試作段階だから教えるのはもう少し先ね。これはお腹に貯まりやすいし、体にもいいから。」


「いや、これでも十分ですよ。」


「フロスト様、これは内臓を煮込んだやつだよな? 一体何を入れたらこんなに食べやすくなるんだ?」


「ああ、これはね、香草とスガーを入れて味を調えたんだよ。どう? 食べやすいでしょ。」


「こいつは美味いな。屋台でも作りたいから教えて欲しいんだが。」


「これは作るのは簡単だけど、ほぼ一晩煮込まないとここまで食べやすくならないからもう少し待ってて欲しい。」


「ああ、そういうことか。確かにトリニトでは一晩煮込むのは無理だよな。」


「ううっ、私も頑張らないと。」


「いや、アッシュは悪くないぞ。そもそも帝国全体で薪が手に入りづらいんだから。」


「ということで、ラヒラス殿、頼んだぜ。」


「結局そうなるのかよ。作っても良いけど高いよ。あと、優先度があるからしばらく後になるよ。」


「よし! 言質を取ったぜ!!」


 といった感じで、和気藹々の中で朝食の時間は進んでいった。味についてもかなり好評だった。私としても押し麦とはいえ、まともにご飯食が食べられるようになったのは大きい。正直なつかしさと嬉しさのあまり、泣きそうになったのが事実だ。


 さてと、食事が終わったら仕事だ。領民達はほぼ通常業務に戻った。トリニトから来たメンバーはギルド員は解体と鑑定を、大工達は建築組と合流、屋台のおっちゃん達は食事班に調理の指導を、アッシュの護衛達は採集班と合流、ちなみにアッシュは領民の子供たちのお守りを担当してくれた。アッシュは意外と面倒見がよく、領民の子供達にもの凄くなつかれていたのは驚きだった。アッシュも弟ができたようだと大喜びだ。通常業務に戻ってはいるが、手の空いている人達もいたので、その人達には解体を覚えてもらおうと思い、その手伝いにも人を割いている。見た目癒やし系ペットの野ウサギ族も解体に興味があるらしく、臨時に見回り、各班の癒やし、広場での癒やし、解体に別れて日ごとにローテーションを組んだようだ。野ウサギ族を見た一般職員達は大喜びだったが、強さのわかるギルド長他数名は最初は驚いていたが、事情を説明すると一応納得してくれたようだ。


 私達はというと、フェラー族長を迎えにいくためにこれから帝都にあるリトン伯爵の元へと行くつもりだ。もちろん普通に移動すると数日かかってしまうので、転送ポイントから移動する。帝都のはずれに転送してから帝都へと移動した。貴族門に到着すると、今回はしっかりと顔を覚えられていたのですんなりと通ることができた。帝都での用事は他にはないので、真っ直ぐにリトン伯爵の屋敷へと移動する。


 伯爵の屋敷に到着して名乗ると、すんなりと通してくれた。ノーアポで大丈夫かと不安に思っていたが、何と先触れが出ていたらしい。恐らくラヒラスが準備してくれていたのだろう。ってか、何でそんなことまでわかるのかと思うと、敵に回さなくてよかったとホッとする。案内の者はすぐに伯爵の元へと案内してくれた。


「おお、フロスト子爵、久しぶりだな、よく来た。」


「ご無沙汰しております。リトン伯爵もお変わりなく何よりでございます。」


「お主の領地でスタンピードが起こったそうだが、無事で何よりだった。」


「ご心配をおかけしましたが、無事に解決致しましたのでご報告致します。」


「それなんだが、皇帝陛下にご報告するのが先だと思うのだが、、、。」


「いえ、今回は伯爵にご挨拶ついでに、フェラーを迎えに来たのが目的ですから。それに、皇帝陛下への献上物がまだ用意できておりませんので、皇帝陛下への拝謁はそれが準備できてからですね。」


「そうか。わかった。ちなみに、皇帝陛下へのご報告はいつ頃になりそうだ?」


「そうですね、一旦フロスト領に戻ってからこちらに再び来ますので、一週間後くらいを考えております。」


「一週間で大丈夫なのか?」


「はい、一週間で大丈夫です。我らだけで向かう予定ですので。」


「護衛をつけずに来ようとするのが貴殿らしいかな。」


「マーブル達がいれば、護衛は必要ありませんからね。」


「フロスト子爵が羨ましいな。私もマーブルやジェミニのような強くて可愛らしい護衛が欲しいものだよ。」


「恐れ入ります。あ、リトン伯爵、忘れてしまって申し訳ありませんでしたが、伯爵にお土産を用意致しましたので、お納めください。」


「おお、それはありがたい。で、一体何を用意してくれたのだ?」


「はい、先日のスタンピードで手に入れた地龍の肉と素材の一部です、どうぞ。」


 そう言って、マーブルから出してもらう振りをして、肉の入った箱と素材の入った箱を取り出す。お付きの者がそれを受け取ると、思った以上の軽さに彼らが驚く。


「あ、それは重量軽減の付与をかけてあるので大丈夫ですよ。」


「ち、地龍だと? そんな貴重なものをいいのか?」


「リトン伯爵との仲ですし、皇帝陛下への献上もありますので、量はそこまでお渡しできませんが、遠慮なく受け取って頂けると嬉しいです。」


「わかった。ありがたく受け取っておこう。ところで今日はどこかで泊まる予定があるのかな?」


「いえ、すぐに戻って準備を整えてから、こちらに戻ってこようと考えております。報告はできるだけ早い方がいいと思いますので。」


「そうだな。本心ではここで数日滞在して欲しいところだが、そうも言っていられないか。それと、フェラーを迎えに参ったのだったな。」


「はい、彼は領内で必要な人材なので。」


「そうか。使者としてこちらに来たのは構わないが、まさか獣人だとは思わなかったぞ。人化したときの姿なんて有能な執事以外の何者でもなかったしな。それを抜きにしても彼は優秀だ。できれば私の配下に加えたかったが、本人もそれを望んでいなかったようだ。」


「・・・スカウトされたのですか。」


「すまんすまん、そこまで有能だったからな。」


「そこまでフェラーを評価して頂き誇らしい部分もありますが、こういったことはおやめになった方がいいと思いますよ。」


「うむ。まあ、貴殿との仲ゆえこうして話したというのもある。おっと、いい加減こちらに呼ばないとならないな、その方、フェラー殿をここに呼んできてくれ。」


「ハッ!」


 お付きの1人が退出してから、軽く雑談をしていると、お付きの者がフェラー族長と一緒に戻ってきた。


「フェラー、お召しにより参上致しました。って、フロスト様?」


「おお、フェラー殿、フロスト子爵が自らお主を迎えに参ったのでな。こうして呼び出したのだ。」


「フェラー、久しぶり、元気だったかな?」


「フロスト様、、、。リトン伯爵様のおかげで大過なく過ごすことが出来ました。お屋敷の方達も私によくしてくださいました。」


「そうか。これよりフロスト領へ戻るのだが、準備は整っているか?」


「はい、先日ラヒラス殿より、フロスト様のお使いが伯爵様の元へといらっしゃると聞いていたので。その使者と一緒に戻ることは承知しておりましたが、まさか、フロスト様自ら来られるとは思いませんでした。」


「いやあ、リトン伯爵には色々とお世話になっているから、私自身でお礼を伝える必要があったし、何より他の者達は領内での仕事が溜まっているからね。」


「私も戻ると仕事が山のように溜まっていそうで怖いですが、、、。リトン伯爵様、数日間とはいえ誠にお世話になりました。」


「うむ、気をつけて戻るのだぞ。もっとも、フロスト子爵が一緒だから危険はないか、ハハハ。」


「リトン伯爵、私からも、フェラーをしばらく受け入れて頂けたことにお礼申し上げます。」


「うむ、気をつけてな。フロスト子爵よ、また一週間後に会おう。」


 そう言って、リトン伯爵の屋敷を後にする。


「族長、お疲れ様。もう少しセバスチャンモードでよろしく。」


「ご主人、この状態はいい加減疲れますので、そろそろ勘弁して欲しいのですが。」


「流石に、帝都を少し離れないと何が起きるかわからないからね。もう少しガマンして。」


「わかってはおるつもりですが、早く元に戻りたいですな。」


 2人とマーブル達だけなので、いつもの会話に戻る。


「ところでご主人、魔物達の襲撃はどうなりましたか?」


「ああ、特に問題なかったよ。マーブル達は元より、野ウサギ族もいるし、あの程度はね。」


「いや、スタンピードをあの程度呼ばわりはどうかと。」


「まあ、それは戻ってから確認すれば良いから。」


 そう話しながら帝都を出て少し進むと族長は狼族の獣人に戻った。


「ふう、やはりこの格好が落ち着きますな。」


「お疲れ様。その格好でもある程度いられるように、族長が獣人であることを手紙で伝えておいたんだけど、役に立ったかな?」


「はい、そのおかげで、普段はこの状態で過ごすことができました。」


「そうか、それはよかった。せっかく勇気を振り絞ってフロスト領に来てくれたのに、不当な差別をされるようだと申し訳ない気持ちが強かったからね。とはいえ、スタンピードの関係で主力はフロストの町を離れるわけにはいかないから、どうしても族長にお願いするしか無かったから。」


「それは重々承知しておりますよ。しかし、これだけの重要な仕事を我はしたのですから、何かしら褒美は頂けるのでしょうな?」


「・・・まあ、ある意味一番大変な役割をこなしたからねぇ。じゃあ、一連の処理が終わったら、手に入れた地龍の肉を多めに食べられる権利を与える、ということで。」


「おお、地龍ですか! しょうがない、それで手を打ちましょうぞ。」


 といいつつ顔はしょうがない、という感じでは無く、むしろ待ってました! といわんばかりの表情だったが、敢えて突っ込まなかった。邪魔が入らずに無事に終えられたのは族長の働きがあったのは間違いないなく、それは今回のスタンピードでは勲功第一といっても過言ではないと思う。何せ誰もやりたくない役目を成功裏に収めたのだ。恐らく領民の誰もがフェラー族長を勲功第一と認めるだろう。


 帝都からの転送ポイントを経て、フロスト領へと戻ってきた。


「ああ、ようやく家に戻ってきた、という気持ちでいっぱいですぞ、ご主人。」


「そうだね、とりあえず、おかえり、族長。」


「ミャー!」


「族長さん、お帰りです!」


「ピー!」


「ご主人、只今帰りましたぞ! それにみなさんもありがとう!」


 フェラー族長も帰ってきたところで、最低限しなきゃならないことは終わった。後は皇帝陛下への献上物と3バ、じゃなかった、報告をくれた三貴族への『お礼』の準備だ。喜んでくれると良いのだけどね。


いつもご覧頂きありがとうございます。もしお気に召して頂けましたら評価や感想など頂けますと嬉しく思います。ブクマ登録や誤字脱字のご指摘はいつも通りお待ち申し上げております。

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