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第32話 さてと、ようやく完成しましたか。

住について目処が立ちました。衣についてはともかく、あとは食ですね。話が作れるか少々心配ですが頑張りますか。よろしかったら楽しんでください。

 盗賊という名のゴミを処分した後、ウルヴ達がトリニトより戻ってきた。もちろん大工達を連れてね。


「ウルヴ達、護衛お疲れ様。大工達良く来てくれた。」


「アイス様、いえ、フロスト子爵、我々をお呼び頂きありがとうございます。」


「早速仕事を頼みたいところだけど、移動で疲れているだろうし、今日はのんびりとしてもらって明日からバリバリ頑張ってもらうけど、それでいいかな?」


「俺たちとしては今からでも構わないが、フロスト様がそう仰るなら、お言葉に甘えさせてもらうぜ。」


 大工達の寝床として私達の屋敷に案内しようとしたが、領民と同じく魔物の皮を使ったテントでいいと言われた。どうしても魔物のテントの居住性を確かめてみたいと言われたからだ。実際に確かめてもらうと意外と好評だったのには驚いた。


「フロスト様、この魔物の皮でできたテントだが、下手な家よりも居住性がいいですぜ。本音を言うとトリニトにある俺らの家よりも快適なんだよな。」


「そう言ってもらえると用意した甲斐があったけど、これから建築するのにその台詞はどうかと、、、。」


「いや、すまねぇ。あくまで俺らの家と比べた場合だ。フロスト様の屋敷は魔樹を使った家だっただろ? 流石にあれほどは居住性は高くねぇ。で、今回の材料も魔樹だろ? 正直ここの住民が羨ましいぜ。」


「どうせならここに移り住むかい? これからも君達には活躍してもらわないとならないしね。」


「そいつは嬉しい話しだがいいのかい?」


「こっちは構わないけど、君達にも向こうに家族がいるだろう?」


「そこなんだよな、、、。まあ、その気になったらこっちに移り住むってことでよろしく。」


「まあ、しばらくは仕事の関係でここに居てもらうわけだし、ゆっくり考えればいいか。」


「そういうことでよろしく。」


「で、一つ君達にお願いがあるんだけど。」


「お願い? 言わなくてもわかっているって。ここの住民にも手伝わせて建築を覚えさせるんだな? いいぜ、元よりそのつもりだったしな。」


「そう言ってくれると助かるよ。」


 そんな話をしてから、領民達と大工達を引き合わせた。彼らは最初こそギクシャクしていたが、歓迎会を兼ねた夕食会で打ち解けてくれた。ラヒラスが気を利かせてトリニトで酒を買っておいてくれたのも大きかった。ちなみに私含めてウルヴもラヒラスもアインも酒を飲まないので、酒で打ち解けられることは知っていても、それを実行することはできなかったりする。年齢的なものもあるから3人のうち誰かは飲みそうな気はするけどね、ウルヴとかアインとかね。私はというと、やはり飲みそうもない。以前の世界でも酒はほとんど飲まなかったからね、あの味はどうも好きになれない。別にお子様の舌と言われてもかまわない。無理なものは無理だ。


 次の日から早速動き出した。最初に建築するのは公衆施設、つまり風呂場と洗濯場と排出処理いや、面倒だからもうトイレと言ってしまおう、これらの3つだ。大工達と領民達が3つの班に分かれて作業をすることになった。木材はトリニトの離れ小屋を建築したときに使った魔樹を使うが、これがかなり余っているので木材に困ることはあまりなかった。逆に言うと少し困っていることがある。それは、どれがどの魔樹だったかわからないので、ごちゃごちゃだということだった。まあ、そこはどうにかしてもらおうか。ということで、空間収納にしまっておいた魔樹を出していく。一応ねぐらにも保管しておいたけど、それらも全て収納に入れてこちらに持ってきた。出し惜しみは無しで。これらの木材を見て、領民達はもちろん、大工達も唖然としていたが、これだけあれば練習にも使えるだろう。


「フ、フロスト様、本当にあのとき出した木材ってほんの一部だったんだな、、、。」


「そういうこと。全部木材に出来る状態にはなっているから遠慮なく使って。足りなかったらまた狩ってくるから安心して。」


「あ、ああ、、、。」


 しばらく呆然としていた大工達と領民だったが、気を取り直して作業を開始していた。期間については特に指定していないので、ゆっくりと取り組んで欲しい、そして領民達にはしっかりと技術を身につけてもらいたいと思う。


 最初はぎこちなく作業をしていた領民達だったが、数日間作業をして段々と慣れていき、作業もある程度こなせるようになってきたらしく、3つの施設は日に日に完成に近づいていった。そして一週間後、見事に屋根付きの施設が完成した。風呂場とトイレはわざわざ敷居を用意する必要もなくなり、使いやすくなったと思う。そのうち風呂場はともかく、トイレに関しては全家庭に一つずつ設置できるようにしていきたい。今は魔石が足りないから無理だけどね。


 ちなみに公衆施設については領民達の家の区域の中心部に設置することにしておいたので、今のテントからは結構距離が離れているのが少々不便ではあるがそれは仕方がない。家が出来てしまえば便利な場所に変わるのだから。で、領民に家に関してだが、もちろん平等に同時に建築開始とはいかないので、順番で少々もめるだろうなと思っていたら、既に決まっていたらしい。平等を期すために、長がくじを作って順番を決めたそうだ。一応1軒につき7人住めるくらいの建物らしく、長だけはその2倍の大きさで決まったらしい。一家族1軒で計算しているが、親がおらず子供だけの家族は今まで通り長の家族として一緒に過ごすことも決まっているそうだ。


 公衆施設が完成して次の日、ついに家の建築に着手することになった。自分たちの住み処がようやく手に入ると領民達は張り切っていた。もちろん、領民達はそれぞれ自分たちの仕事を頑張っており、その作業の進捗も凄いことになっていた。


 領民達が頑張っていた頃、私達は何をしていたかというと、ウルヴは木騎馬に乗って周辺の偵察を、アインは領民達の治療や力仕事の手伝いを、ラヒラスは魔導具の作成にそれぞれ勤しんでいた。ラヒラスは今、コンロ的な魔導具を作っていた。


 その魔導具自体はすぐに作成できたが、木の家なため火事が怖いので、その辺の対策も兼ねた調整に着手していた。結局調整は可能になったが魔力の消費がもの凄くなるらしく効率的によくないということで、コンロに関しては土魔法、あるいはレンガを使った方がいいということで、完成した家から土魔法でコンロの土台を作ることで決まった。


 私達は魔石の採取を兼ねて、魔樹狩りを含めた魔物狩りに勤しんでいた。魔樹は一体残しておけば、放っておくと数が増えるので、定期的に間引きをしていかないとならず、そのまま増え続けると魔境になってしまうらしい。魔境になると木の実や薬草などが採取しづらくなってしまうそうなので、ちょこちょこ狩ることにしている。まあ、魔石も最上級の木材も手に入るから、勝手に増えてくれるのは大歓迎だ。とはいえ、一体残しておいても数が増えるが、もちろん数が少なければ増え方も少ないし、元は森の養分なので無差別に狩っていくのも森にとってはよろしくないので、そこら辺は難しいところだ。


 そしてのんびりしながら仕事をすること1ヶ月、ついに予定していた分の領民の家が完成した。もちろん夕食は宴会だったが、大いに盛り上がったものとなった。私も張り切って夕食は作ったし、食事担当の領民もかなり慣れてきたのか、私が手伝わなくても問題なく作れるレベルまで成長していた。とはいえ、それほど食材の種類も多いわけではないので、調味料を贅沢に使ったりした程度の変化だったけどね。


 宴会の後、大工達の今後を聞いてみたが、棟梁を始め半数はトリニトに戻り、半数はフロスト領に残ることが決定した。トリニトに戻るのは妻子がいるメンバーらしい。本人達はここに残りたいそうだが、家に戻って一旦話し合わなければならないということらしい。こちらでも、領民はこれからも増えてくれるだろうし、仕事はいくらでもあるから、仮に戻ったとしても依頼するから仕事に関しては心配しないように念を押したのは言うまでもない。


 次の日、ウルヴ達の護衛の元、トリニトに戻る大工達を領民全員で別れを惜しみつつ見送った。こちらに来た途中では特に何事もなく順調に移動できたが、帰りはわからない。とにかく無事を祈るばかりだ。まあ、ウルヴ達が護衛に付いているし、ラヒラスもアインもいるからまず大丈夫だろう。


 とりあえず、衣食住のうち、住についてはどうにかなった。あとは衣と食だが、衣についてはある程度目処が立っている、というのも衣は以前の集落でもある程度作っていたので、皮を加工したり、簡易的ではあるが植物を使って布を作ったりはすでにできているので、後は皮を革にする作業で多少時間がかかる程度で、数は時間が経てばどうにかなりそうだ。


 問題は食かな。今のところ魔物の肉が大量にあるのでどうにかなっているが、そうなるとどうしても栄養が偏ってしまったり、食べるものも単調になりがちだ。とはいえ、人手が全く足りていないのが現状だ。それに魔物も無制限に沸くわけでもないだろう。また、食べられるものだけ狩ってしまうと食べられない魔物の数が増えてしまうのは勘弁してもらいたい。ということで、畑を広げることが急務であるが、人がいないことにはそれも難しい。トイレも上手いこと作動しているので、肥料も十分作れている。場所も川の合流地点の近くに用意できているのでそういった準備はできているし、少しずつ作業は進めているが、人が圧倒的に少ないのでなかなか進捗できていないのが現状だ。


 ぶっちゃけ、大規模農法というか、農耕用の家畜、あるいは魔物がいれば、それを利用して最低限の人数で農業が可能だ。大規模農法が可能になれば、収入バランスが非常に良くなることは間違いない。うまく農耕用の家畜などが手に入ってくれたら、このまま大規模農法で進めていく予定だ。とはいえ都合良くそういったものが手に入るとは思えないので、今のところはチマチマとやっていくしかないか。一応、進捗が遅いとはいえ、領民が手がけてくれた部分の土地はとてもいい状態なので、少しずつ何かを植えて作物を作っていく予定だ。できれば小麦か稲が欲しいところ。個人的には稲の方がいいけど、この際文句は言わない。


 そうすると、次に必要なものは稲か小麦、無理そうならせめて大麦だな。いや、炭水化物であればそれでいい。見つかるといいな、、、。

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