第25話 さてと、理不尽には理不尽で対処ですかね。
寝不足が続いて体力的にも厳しい状態ですが、私は何とか生きてます。皆さんはこうならないようにしっかりと睡眠を取るように心がけましょう。では、最新話始まります。
私が頭を下げるのに合わせて、マーブルとジェミニも一緒に頭を下げる様子を見た皇帝は感心したような感じで言ってきた。
「アイス、いや、フロスト子爵よ、お主と一緒におる猫とウサギは相当賢いのう。」
「はい、私の唯一と言っていい自慢の猫達でございます。」
「そう、それだ。お主にここに来てもらう際に一緒に連れてきてもらうよう余が頼んだのはこの猫達を一目見てみたい気もあったのだ。何せトリニトの発展に少なからぬ貢献をしておると聞いたのだが、間違いないのか?」
「はい、間違いないです。トリニトが発展致しましたのは、高ランクの魔物の素材が手に入り、それを冒険者ギルドに卸したり、食材は民間に直に卸すことによって、少しずつ住民達にお金を回せるようになったのが一番の原因ですが、その高ランクの魔物を倒すのにこの猫達は大いに活躍しております。」
「ほう、高ランクの魔物をか。例えばどのような大物を倒してきたのだ?」
「最もわかりやすいものとしては、オークキングでしょうか。」
オークキングを倒したことに皇帝陛下のみならず周りの貴族はもちろんのこと、警護をしている兵達も驚いた表情をしていた。まあ、無理もないかな。私達はともかく、皇帝陛下もそうだろうけど、特に周りの連中ではオークキングが相手ではまるで歯が立たないだろう。
「な、何? オークキングだと? それは本当か?」
「はい、本当です。」
「しかし、トリニトからもオークキングの話は出ておらんのだが、本当にオークキングを倒したのか?」
「はい、トリニトでオークキングの素材を卸そうとも思いましたが、残念ながら今のトリニトではオークキングの素材を引き取れる予算がありませんので、こちらで取っておいてあります。」
「ほう、取っておいてあると、では、今それを見るのは構わないか?」
「はい、この場でお出しすることをお許し頂けるならすぐにお出し致しますが。」
「いいだろう、許可する。この場に出してくれ。」
私は頷くと、マーブルに目配せした。マーブルはわかっているように「ミャア!」と可愛く鳴いて右手というか右前足を出す。その右手に合わせるように空間収納を使ってオークキングの皮を取り出す、見せるように頭つきの状態のやつをわざわざ選んだ。当たり前だけど肉と内蔵は絶対に出さないよ。こんな連中にはオークキングの肉は勿体ない。こんな面倒な手を使うのは、私が空間収納スキルを持っていることがバレてしまうと後々面倒なので、マーブルの闇魔術での収納ということにしている。まあ、性能はともかく実際にマーブルも収納持ちだからねえ。
周りは最初こそは、ざわついていたが、実際にオークキングの頭付きの皮を取り出すと、一瞬にして沈黙した。オークキングは通常のオークよりも大きいし、皮もかなり硬いので、これが本物かどうかはすぐにわかるのだ。気を取り直した1人の貴族が半信半疑の様子でこちらに聞いて来た。誰だっけ? 確か宰相だっけか、名前は何だったかな、まあ、いいや。
「フロスト子爵、今そなたが出した魔物がオークキングであるのか確かめてもよいかな?」
「はい、ご存分に。試しに皮を切って硬さを確かめてもよし、鑑定スキルをお持ちであればお使いになってかまいません。」
宰相を始め、宰相派のような人達がオークキングの皮を切ろうとしたが、誰1人切るどころか傷一つ付けられなかった。宰相の行動に懐疑的ではあったが、オークキングの皮に興味を持った鑑定のスキルを持った人物であろう貴族がじっくりとオークキングの皮を眺めていると、ため息をつきながらこう言った。
「フロスト子爵、これは間違いなくオークキングの皮ですな。しかもこれほど状態のいい素材は滅多にありません。どうでしょうか? この素材を私に譲ってくれませんかな?」
「申し訳ありませんが、オークキングの素材についてはトリニトで予算の目処がついたら卸す約束をしておりますので、それを違えるわけには参りませんので。」
「さ、さようか。」
まあ、嘘だけどね。リトン伯爵はともかく、こんなポッと出のような連中に卸す気はさらさらない。どうせ有効利用せずに自分で倒した、とかホラ吹いて領民や他国に自慢する程度だろう。自分達で探して頑張って倒せ、自分達で。そんなことを考えていたら、皇帝陛下が話してきた。
「ふむ、これほど可愛らしい外見をしている上にその強さか。気に入った。フロスト伯爵よ、この猫とウサギを余に差し出せ、と言ったらお主はどうする?」
「もちろん、お断り致します。この猫達は従魔ではなく家族ですから。」
「なるほど、皇帝の勅命だとしてもか?」
「はい、仮に勅命でもって命じられたらその場にて反逆致します。仮に私が承知してもこの猫達が承知しないでしょうし。どうかな、マーブルとジェミニ?」
「シャーッ!!」
「キューッ! キュキュウ!! キュッ(向こうに行くわけないです! ワタシ達を従えるなら、従わせるだけの力を示して欲しいです!! 万が一にもそれは無理でしょうけど。)。」
「マーブル達もそちらに行く気はないようですね。仮に受け入れるとしても、相応の力を見せてくれないとダメだと言ってますね。」
「ほう、ならば相応の力を示せばいいわけか。マーブルとジェミニと言ったか、それならお前達の強さを見てみたい気がする、オークキングを倒せる力を持ったお前達の強さを。よし、これより練兵場へと向かい戦闘をしてもらうぞ。」
皇帝陛下の一言でマーブル達の強さを実証するはめになった。面倒臭え、というか、こいつらマーブル達の実力わかってないな。ああ、わからないからこういったことができるのか。やはり無知って罪だよね。まあ、いいか。トリニトが無事なら他はどうでもいいし。まして、フロスト領を発展させないとならないしねえ。
皇帝陛下を戦闘に私達は練兵場へと向かった。広さは結構なものだった。ところで、誰がマーブル達と戦うのだろうか?
「よし、皆揃ったようだな。これよりフロスト子爵の供をしておるマーブルとジェミニとの戦闘訓練を行う。ちなみに今回、こやつらと戦うのは我が国が誇る召喚師が呼び出す魔物達と戦い、その実力を確認しようと思う。では、召喚師達よ、来るがよい。」
皇帝陛下に呼ばれて来たローブを纏った人達が30人位歩いてきた。それぞれ名前を名乗っていたが、どうせ今後関わることもないだろうし一々覚えるのも面倒だから聞き流していた。30人前後のうち、5人は結界師だった。一応周りに被害が及ばないように結界を張っておくそうだ。多くの者達は結界の外側に避難したが私は結界の内側に入ることにした。それにしても、この程度の結界で大丈夫なのかね。あ、マーブルがさりげなく結界強くしてる。じゃあ、大丈夫かな。結界師が頑張って結界を張っている横で、召喚師達も頑張って魔方陣を描いていた。なるほど、魔方陣を使えばそれだけ強力な魔物を召喚できるということか、しかも人を複数使うことによって負担を抑えたりさらに強化できたりするのか。感心しながら眺めていたが、ようやく準備が整ったようだ。
「皇帝陛下、準備完了です。こちらはいつでもいけます。ところで、我々はどの位まで力を使えばよろしいのでしょうか?」
「ご苦労、今回は手加減することなく全力で召喚して構わない。こう見えてもこの2匹はオークキングを倒せるほどの強者だ。遠慮はいらない。」
「はっ、承知しました。」
「フロスト子爵よ、今回の訓練はそちらの2匹が力尽きるか、召喚師達が力尽きるかで決着とする。」
「承知致しました。じゃあ、マーブルにジェミニ、頑張ってね。」
「ミャア!」
「キュウ!(ワタシ達にお任せです!)」
マーブルとジェミニに声をかけた後、私の腰筒で大人しくしているライムにも話しかける。もちろん声を抑えてだけどね。
「ライム、もうしばらく我慢しててね。退屈でゴメンね。」
「ううん、気にしないで-、みんなで一緒にいるから大丈夫だよー。」
うん、いい猫達やー、お父さんは嬉しいです!!
さて、そろそろ始まる頃なので、私は結界の隅に腰掛けた。どうせマーブル達の相手にならないだろうし、変な言いがかりをつけられないように大人しくしているのが得策だろうと思ったからだ。
「ほう、お主は結界の内側にいるにも関わらずくつろいだ状態か、それだけ信頼と自信があるのだな、よかろう。では戦闘開始だ!!」
皇帝陛下から戦闘開始の合図が出された。召喚師達が次々に詠唱し始める。最初に現れたのはゴブリンが20体ほど。もちろん、マーブル達の相手にはならず瞬殺される。倒されたゴブリン達は魔方陣の中に消えてしまい、素材どころか魔石すら残さなかった。
ゴブリンの後はホーンラビット、フォレストウルフ、オークと続けて出現するが、これもアッサリと瞬殺していく。アッサリと倒されていく魔物達を結界の外で見ていた人達は驚いた様子で見ていた。召喚師達は気にすることなく詠唱を続けている。よく見てみると、召喚師達は役割分担をしているようで、数人毎にそれぞれ呼び出す魔物を担当しており、担当していた魔物が倒されると次の魔物を召喚する詠唱をしたりと上手くローテーションを組んで行っていた。この連携は見事だと思った。
しかし、折角召喚してもアッサリと倒されていくので、召喚師達は少々いらつき始めていた。何をしてきたかというと、人数の編成を変更して担当人数を増やして魔物を一気に強化してきた。その一方でマーブル達もうんざりし始めていた、というのは、折角倒しても肉はおろか、素材すら手に入らないのだ。最初こそ綺麗に魔物を倒していたが、何も出てこないことに腹が立ったのか、面倒臭くなったのか、多分両方だろうけど、攻撃が雑になっていた。
召喚師達が頑張ってオーガやトロール、さらにはミノタウロスまで召喚してきたが、もちろんその程度の的ではマーブル達の相手にもならない。言うまでもなく一撃でどんどん倒されていった。そんな状況に召喚師達も気合が入ってきたのか、魔物もかなり凶悪なものが出現するようになったが、それでもマーブル達を苦戦させるまでには至らなかった。ついにはワイバーンが20体現れてしまった。ワイバーンの出現に結界の外にいた人達は結界があるにもかかわらずその存在に恐怖した。
しかし、マーブル達は物足りないと言わんばかりにアッサリと倒していく。流石に空中の相手にジェミニの攻撃は届かないので、マーブルが風魔法で翼を切り裂いて、地上に墜落したところをジェミニがとどめを刺していくという流れ作業で倒していったのだが。
流石に魔方陣で魔力消費が抑えられているとはいえ、今までかなりの数を召喚してきた上に、ワイバーンを20体も召喚してしまうと召喚師の魔力の方が尽きてしまい、終了となった。マーブル達はもちろん傷一つついていないし、疲れすら出ていない。表情は少しは暴れられてスッキリという気持ちと、何もドロップしないという不満な気持ちが半々といったところだろうか。
ワイバーンを何も苦労せず倒していたのを見ていた結界外の人達は呆然としていたが、やがて我に帰りつつあった。皇帝陛下もここまで一方的な結果に終わるとは思っておらず唖然としていたが、気を取り直すと訓練終了の合図を出した。
「フロスト子爵よ、マーブル達の強さ、堪能させてもらった。流石に力尽くは無理だ。というわけで、マーブル達をもらう件は泣く泣くあきらめることにする。こんな連中に反逆されたらこの国はアッサリと滅んでしまうわ。」
「ご理解頂けて何よりでございます。とはいえ、どのくらいの強さかもう一度確認して頂きたいと思いますので、鑑定の出来る方、マーブル達を一度鑑定されたと思いますが、もう一度改めて鑑定してみて下さい。マーブルと、ジェミニ、一旦隠蔽を解いてね。」
そう、マーブルとジェミニはドラゴン関係の称号を隠蔽していた。特にジェミニはヴォーパルバニーではなくホーンラビットに種族を書き換えていたのだ。鑑定の技能を持っていた人達は恐る恐るマーブル達を鑑定した途端に顔を青くしていた。
「へ、陛下、ここにいるマーブルとジェミニは両方とも『Sドラゴンスレイヤー』の称号持ちです。」
「な、何だと? ドラゴンスレイヤーでしかもSの方だと?」
「はい、特にジェミニというウサギですが、最初はホーンラビットとなっていたのですが、今改めて鑑定させて頂いた結果『ヴォーパルバニー』と出ておりました。」
「な、ヴォーパルバニーだと、、、。」
周りはこの2人の会話を聞いて騒ぎになっている。
「Sドラゴンスレイヤーだと!? ということは、単体でドラゴンを倒したということか、、、。」
「猫の方は『トラネコ』という初めて聞く種族だぞ。」
あれ? マーブルって種族『マンチカン』じゃなかったっけ? いつの間に? まあ、いいか。
「ウサギは『ヴォーパルバニー』だそうだ、、。」
「何? ということはSランクの魔物、、、。」
そんな感じの内容を話していたと思う。そんな騒ぎを鎮めるべく皇帝陛下が発言した。
「皆の者、鎮まれ!!」
鶴の一声で周りが静かになった。
「改めて、マーブル、ジェミニ、見事な戦いだった。ここまで強い者を見たのは初めてだ。未だにそなたらを欲しい気持ちは持っておるが、それについてはあきらめるしかないな。その代わりにフロスト領の発展に大いに貢献して欲しい。」
マーブル達は黙って右手を挙げて敬礼の構えを取った。うん、可愛いねえ。皇帝陛下も同じく考えていたらしく顔がほっこりしていた。
「うんうん、可愛いのう。おっと、忘れるところだった。フロスト子爵よ、これがフロスト領の任命書だ。先程話した内容である、フロスト子爵本人の承諾なしにフロスト領の領地替えなどの拒否権なども記述されておる。受け取るがいい。」
「謹んで承ります。失礼ですが、陛下、この任命書はいつから効力が発生しますか?」
「何を言っておるのじゃ、今からに決まっておろう。解散後に可及的速やかにフロスト領へと向かって欲しい。その前にフレイム領へ寄って家族に話してくるがよい。一応こちらでも早馬で知らせてやるつもりだ。」
こうして無事謁見が終わり、一旦リトン伯爵の屋敷へと戻り、リトン伯爵と話しをした。内容的には伯爵領はフロスト領と王都から見て逆方向になるので積極的な支援はできないが、それでも可能な限りは協力できるところはしてくれるからというありがたいお言葉を頂いた。
さてと、ようやく王都の用事も済んだので、今日一晩ご厄介になったら、明日早朝早速出発するとしますか。
いつもご覧頂きありがとうございます。もしお気に召して頂けましたら評価や感想をお願い致します。また、ブクマ登録や誤字脱字のご指摘などもお待ちしております。