表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/210

第24話 さてと、私をここに呼んだ理由はなんですかね?

投稿が遅くなりまして申し訳ありませんでした。最近寝不足で書く体力が残っておらずほったらかしにしてしまいました(他の作家の先生の書いたお話が面白くて夢中になってたのも一因なんて言えない)。少しは体調が戻ってきたので頑張って書いていきますので、よろしかったら楽しんで下さい。


 テシテシ、テシテシ、ポンポン、愛しの我が達に起こしてもらう、今日は皇帝陛下に謁見する日である。とはいえ、特にこれといった緊張というものは無いし、時間は昼食後となる。正直、食事をはさまないのは私達が大したことのない小物の扱いなのか、トリトン帝国が貧しすぎるため通常に昼食を用意できないかはわからないが、恐らく両方だと思う。とはいえ、嫌な連中の顔を伺いながらの食事なんて勘弁して欲しかったのでこちらとしては願ったり叶ったりだ。何より、自分たちで用意する食事の方が圧倒的に美味しいだろうというのは容易に想像がつく。


 リトン伯爵が用意してくれた食事を頂きながら、王宮(皇帝の住んでいる場所ではあるが、他に言葉は知らないから王宮ね、異論は認めない)内での主要な人物について集めた情報を聞いた。これはリトン伯爵からの情報では無く、アインが収集してラヒラスがまとめたものだ。話はそれるが、アインはパワーはチートクラスではあるが脳筋ではなく、趣味と実益を兼ねて市井を回っては安い金額、あるいは無料で治療したり何かの手伝いをしている。そのついでに情報を集めているらしい。また、少しでも納得がいかないと自分の足を使って調べたり考えたりしたりもする。そのせいか、たまに理屈っぽくなるところもあるが、そこはご愛敬といったところだろう。


 ラヒラスは魔導具を作るのが趣味でその腕前はかなりのものではあるが、私が彼を買っているのはそちらよりもむしろ謀略の類いである。情報を精査してからの助言をほぼ無条件に私が受け入れているのはこのためである。彼は腹黒そうな顔をしてはいるが、実は人情あふれる性格をしており、頼まれると何かしら助言を与えてくれるのだが、その助言でほぼ解決してしまったりする。ほとんどのトリニトの住民は彼を気味悪がって近づかなかったものが多いが、彼の人となりを知っている者はよく彼の元を訪れてはいろいろと相談したりしていた。また、あまり表には出ていないことだが、トリニトにあった規模の大きめな犯罪組織の末端員が彼に嫌がらせを仕掛けたが、返り討ちに遭うばかりか、その組織を自滅という形で潰してしまったこともあり、それを知っている裏組織は彼を恐れて一切手出しをしてこなくなった。


 そんな彼らからの助言を受けることで、面倒事をできるだけ回避しようというのが今の私のしていることである。いくら彼らが優れているとはいえ避けられないことももちろん存在する。ぶっちゃけ、何かあっても力尽くで解決できるといえばできるが、それでもやはり面倒事は避けたいというのが本音だ。


「一応、俺が集めた情報からラヒラスがまとめてくれたものだが、あくまで俺は市井でしか集めていないから噂でしかない部分も存在することは念頭に置いてくれ。」


「いや、それだけでも助かるよ。その情報と全く異なることがあってもそれは仕方がない。じゃあ、ラヒラスよろしく。」


「一応それらをまとめると、皇帝はかなりの脳筋だね。というか、この国の領主にしろ貴族にしろ脳筋がかなり多いね。それは、領主や貴族は強さでほぼ決まっているみたいだから仕方のない部分はあるかな。だから、ほとんどの場合は力、つまり強さを見せつけるだけでどうにかなるかな。それで一部の少し頭の回る連中が裏で好き勝手にやっているのがこの国の現状かな。帝都トリトンだけでなく、この国全体の現状ね。」


「なるほど、では、この国が貧しいのはその一部の少し頭の回る連中がこの国の発展の足を引っ張っているということかな。で、それをこの国の商業ギルドが一緒になって搾り尽くしているといった感じかな。」


「概ねそれで間違いないと思うよ。で、その少し頭の回る連中だけど、他の国では全く通用しないレベルの知能でしかないけど、彼らもその程度の頭しかないから、自分たちが有能だと思っている分ちょっと面倒かな。まあ、それは置いといて、一応注意するべき人物、というか元凶と言った方がいいかな、その人物も今回のアイス様の謁見にはいるみたいだね。役職順からいくと、宰相のリードレッド・レッド公爵、ハブハド・ハド公爵、ヒアハード・ハード侯爵の3人かな、とはいえぶっちゃけ面倒なだけで大したことはないからアイス様の好きに行動すればいいよ。」


「なるほど、じゃあ、こちらもある程度好きに動きましょうかね。」


 って、ヲイ、ちょっと待て、何、この名前は、、、。リトン伯爵もそうだけど、この国の貴族名ってどこの不規則動詞? これ、この国で頑張って生きていくだけで不規則動詞完全制覇できそうじゃん。まあ、転生しないと行けないからどうにもならないだろうけど。いや、うちは不規則動詞じゃなかったな、まあ、転生時に多少いじったらしいけど、それにしてもこの世界の国々は何かしら変な特徴でもないとやっていけないのだろうか。後、息子とかの名前はどうなっているのか気になるな。いや、待てよ、リトン伯爵は当主になってからそんな名前になったと本人から聞いたような、、、。まあ、いいか。少なくとも私はアイス・フレイムであり不規則動詞の名前なんて付いてない。


 そんな感じで情報をもらったりいろいろやってさらに時間が過ぎ、少し早めの昼食を摂ってマーブル達が遊んでいるのをホッコリとした感じで見ていると、リトン侯爵から呼び出しが掛かったので準備して伯爵の元へと向かう。


「伯爵様、アイス様をお連れしました。」


「ああ、入ってくれ。」


「失礼します。アイス・フレイム、お招きにより参上致しました。」


「ああ、アイス君、そろそろ出立の時間だが、準備はできているかな?」


「はい、このまますぐに出立できるよう準備は整えております。」


「よろしい、では、王宮に向かうとするか。」


 リトン伯爵に案内してもらい馬車で王宮に向かう。王宮までそこそこ距離はあり、流石帝都といえるが、広いだけで外観は正直よろしくない。こんなことしている暇があるのなら、もっと他にすることがあるだろうにとは思う。


 王宮前にも門があり、そこにはやはり門番が立っていたが、トリトンの入り口の兵と比べると装備の質が格段に違った。武器もかなり良さそうなものだ。しかし、兵自体の質は入り口にいた人達の方が数段上だと思う。今付けている装備で戦ったとしても恐らく入り口にいる兵達が勝つだろう。まあ、実際には八百長というか目に見えない力のせいで王宮にいる門番の方が勝つのだろうけど。


 王門からは皇帝とその一族以外は馬車での移動が禁止らしく、私達は馬車を降りて徒歩で王宮へと向かうことになった。兵達はしきりに私達、正確には一緒に歩いているマーブルとジェミニに注がれていた。傍目から見ると飼い主の後をチョコチョコ歩く子猫とウサギなのでその視線はほっこりとしているのと同時に飼い主となっている私への羨望も含まれていた。ん? なんか既視感が。


「ところで、アイス君、皇帝陛下への、というより謁見の間での所作は知っているのか?」


「正直サッパリですね。」


「やはりか、まあいい。私の所作を真似てくれれば大丈夫だろう。皇帝陛下はあまりそういったことには頓着されない方だしね。まあ、取り巻き共は別かもしれんが。」


「呼ばれたので来ただけですからね、そういった方達が何と思おうともこちらは知ったことではないですからどうでもいいですよ。」


「そうか、それならそれで構わないが、くれぐれも私を巻き込むことのないようにしてくれよ。」


「前向きに善処致します。」


「おいっ!」


 リトン伯爵とこんな感じで和気藹々と話しながら謁見の間へと進んでいく。兵達に案内されて謁見の間へと入ると、周りにはそこそこの数の貴族らしき人物がいた。彼らは私達をみてコソコソ話をしている。もちろん良い内容の話であるはずがない。


「なんでこんな若造を陛下はお呼びなさるのだ。」


「なんでも、皇帝陛下が猫とウサギに興味をもったらしい。」


「ふん、そこらにいそうな猫とウサギではないか。・・・でも、確かに呼びたくなるくらい可愛らしいのは事実か。」


 一部抜粋するとこんな感じだ。まあ、マーブル達が可愛いと言ったことについては褒めてやるか。それ以外はトリニトの領地が発展しているのが悔しいとか、商業ギルドを追い出したことについて信じられないという感じの内容だったかな。


 待つこと10分くらいで皇帝陛下が来るそうなので、リトン伯爵が膝をついて頭を下げたので、それに合わせるように私も膝をつき頭を下げる。それに合わせるかのようにマーブルとジェミニも頭を下げた。流石は私の達だ。謁見の間を走り回ることなく大人しく私の後ろに控えていたばかりか、こうして私の所作に合わせているマーブルとジェミニに対して周りにいる人達は驚きの声を上げる。ちなみにライムは私の腰に付けている革袋というか筒の中で大人しくしております。この子もかなり賢いです。ええ、親馬鹿ですよ、何が悪いんですか?


「皇帝陛下ご入場!!」


 この一言で軽い驚きの声が一気にシーンとなり、周りが一斉に頭を下げたような感じの音がする。敷物の上もあって皇帝陛下の足音は聞こえないが、こちらに近づいてきているのはわかる。


「皆のもの、面を上げよ。」


 皇帝陛下から声がかかったので、リトン伯爵は顔を上げたので、それに追従して顔を上げようとしたら、リトン伯爵が膝をついたときに左腕は後方に下げている状態の姿勢だったが、その左手から下げるようなジェスチャーを感じたので下げたままにしておいた。


「リトン伯爵よ、アイス・フレイムを連れてきたようだな、大義であった。両名よ、その姿勢のままではつらかろう、立つが良い。」


 その言葉の後、リトン伯爵は今度は上に上げる感じのジェスチャーをしてから立ち上がったので、今度はそれに合わせて顔を上げ立ち上がる。マーブルとジェミニも顔を上げた。


「ほう、お主がフレイム伯爵家長男であるアイス・フレイムか。余はトリトン帝国皇帝、ハイドゥヒドゥ・ヒドゥン・トリトンだ。最近、フレイム伯爵領が発展しておると耳にした。そしてその立役者がお主であると聞いて是非会いたいと思って呼んだのだ。」


「お初にお目に掛かかります。私はフレイム伯爵家長男、アイス・フレイムでございます。皇帝陛下がわざわざ私のことをご存じであり、こうしてお招き頂けたことを一生の誉れと致します。」


「まあ、そのことはいい。お主を呼んだのは、お主を一目見ておきたかったというのはもちろんだが、いかにしてトリニトを発展させたのかを聞きたくてな。お主も知っての通り、トリニトは我が国でも最も貧しい領土でわが帝都への租税がほぼなかったどころか、貧しすぎてこちらから補助を出し続けていたような場所だったのだが、今年半期で補助どころか今までの約10数年分の租税を納めてきおったのに驚いたのよ。」


「トリニトでは商業ギルドを追い出して、経済活動を民間に任せました。もちろん、依然貧しいままというのはほぼ同じですが、住民の暮らしを良くしたのが原因だと思います。」


「ほう、商業ギルドを追い出すとな。商業ギルドからはかなりの税を受け取っておったはずじゃが、その商業ギルドを追い出したと?」


「はい、以前のトリニトでは確かに税収の8割か9割が商業ギルドからでしたが、それと同時、いやそれ以上に商業ギルドに便宜を図っていたので実際には税収はあってなきがごとしでした。」


「なるほどのう、ところで、お主は長男であるにも関わらず、フレイム伯爵の後を継がないと聞いたが本当か?」


「はい、本当のことでございます。フレイム伯爵は我が弟でありますアッシュが継ぐことになっており、その決定についてはこちらは一切不服はありません。」


「わかった。それで相談なのだが、お主のおるトリニト領よりさらに南、タンヌ王国と国境を接している地域があるのだが、不毛すぎて誰も領有したがらない地域があるのだ。どのくらい不毛かというと、隣のタンヌ王国ですら欲しがらぬ程でな、国境地域では基本的に争い事が起こりやすいのだが、この領域については有史以来一度も争いが起こったことがないほど不毛だ。そんな場所ではあるが、トリニトを発展させることができたお主なら何とかしてくれるかもという期待を込めてその地を任せたい。もし引き受けてくれるのなら、そこの地域から得た資源などはお主のものにしてかまわん。それと、辺境伯の扱いにするゆえ、帝都に対しての納税は免除する、ということでどうかな?」


 ありゃ、面倒な領土の押しつけだったか。まあ、好き勝手にできそうだからそれは引き受けるとしても、ただで頷くのは嫌だから少し釘を刺しておくか。どうせこの案は皇帝陛下の考えから出たものではなく、宰相と愉快な仲間達から出てきたものだろう。


「皇帝陛下、引き受けることはやぶさかではありませんが、それに当たって一つお願いがあります。」


「願いか、聞き入れられるものであれば聞き入れるが、何か?」


「お願いというのは他でもありません。今後、その地域が仮に発展致しましても領地替えなどの命令はこちらで拒否できるようお願いしたいのです。」


「なるほどな。確かに手塩にかけて発展させた領地をくだらん理由で移動させられるのはいい気分ではないしな。よかろう、そなたの願いを受け入れよう。では、この場で宣言する。アイス・フレイムのこれより納める地域に関して、領地替えなど、アイスが納得できない場合はその命令を拒否できることをトリトン皇帝の名において宣言する! 宰相、よいな。」


「は、ははっ!」


 宰相とその他数名の顔が一気に青ざめた。なるほど、こいつらが原因か。こいつらは後で何かしてくるだろうけど、ラヒラスも問題ないと言っていたな。まあ、ちょっかいをかけてきたら手厚くもてなすとしましょうか。


「そういえば、お主はフレイム家であるにもかかわらず火魔法を一切使えないとのことだがどうだ?」


「はい、陛下の仰るとおりですが、私には魔力がないので、火魔法のみならず魔法全体が使えません。」


「何? 魔法が使えないじゃと? 話では氷を使いこなしていると聞いているのだがそれについては?」


「そのことなのですが、私は水術というスキルがありまして、魔法ではないのですが、水を扱うことができます。」


「ほう、それは興味深いな。この場で何かできるか?」


「他ならぬ陛下のお願いとあっては断れません。少しですがお見せ致しましょう。」


 その場で水の塊を生み出して凍らせたり蒸発させたりを繰り返した。周りは驚いて声も出ていなかった。


「こ、これは本当に水魔法などの類いではないのか?」


「はい、魔法ではなく水術です。」


「なるほど、面白いな。よし、こうしよう、お主はフレイム伯爵家から独立させるので、これよりフロスト家とするがいい。そしてトリニトを発展させた功績をたたえてお主には子爵を命じ、改めてあの地域を与えるゆえ、これよりあの領域はフロスト子爵領とする。アイス・フレイム改めアイス・フロスト子爵にフロスト子爵領を発展させることを命じる。」


「アイス・フロスト子爵、陛下の命によりフロスト子爵領を発展させることここにお誓い申し上げます。」


 ここで改めて膝をつき頭を下げて、拝命した。それに合わせるかのようにマーブルとジェミニも頭を下げた。これより、アイスは事実上の貴族として領土を治めることになる。


 正直なところ、「どうしてこうなった」感が強いが、なってしまったものは仕方がない。のんびりと行きましょうかね。それよりもマーブル達を連れてこいと言われたから連れてきたけど、これらの用件だけならマーブル達必要ないよね?


いつもご覧頂きありがとうございます。もしお気に召して頂けましたら評価や感想などお願い致します。ブクマ登録や誤字脱字のご指摘も随時受け付けております。最近チョコチョコ誤字脱字のご指摘を受けますが、非常に有り難く思います。何か気付きましたらドンドンお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 子爵に成ったけど、辺境伯じゃなかったの?
[良い点] 超中二ネームから順当な中二ネームになった。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ