第21話 さてと、先を急ぎましょうかね。
数日ぶりの投稿です。よろしければ楽しんで頂けると幸いです。
通りがかりで盗賊に襲われていた一行を助けたが、面倒なのでその場を後にした私達だったが、そんなことよりラヒラスが使った魔導具に興味があったので聞いてみた。
「あの、ラヒラスさんや、先程の魔導具は一体?」
「ああ、あれね。あれは、こいつに魔力を込めて攻撃したい範囲に向かって投げると、この背中にあるやつがそこに向かって魔法の矢を撃ちまくってくれる便利なやつさ。ただ、始めから弓の形をしていると向こうに行くまでの時間が遅くなるから、攻撃態勢に入ってから弓っぽい形に変形するようにしてあるんだけど。」
「弓というよりはコの字だよな。まあ、その辺はおいといて、あれ、俺でも使えるのか?」
意外にもアインが喰いついて聞いてきた。
「うーん、残念ながらアインには無理かな。あれを使うのに膨大な魔力が必要なんだ。」
「そうか、残念だな。」
「いや、お前接近戦で十分強いじゃん。俺は見ての通りひ弱だし、魔力は馬鹿みたいにあるけど、魔法が使えるかといえば使えないし、使い方もわからないんだ。だからせめてこういった状況で戦闘に貢献したり、自分のみを護るにはこういう魔導具が必要なんだよ。」
「なるほどね、ところでラヒラス、私も使えないかな、あれ。アインで無理なら私でも無理そうだけど。」
「そうだね、ウルヴも無理かな。けど、お前には木騎馬あるじゃん! あれ、ほぼお前用に作ったやつだからね! 他の人は普通の馬でも問題ないけど、お前は騎乗しないと戦闘では戦えないから、どこでも騎乗状態になれるようにアイス様が俺に頼んだやつだからね!!」
「そうだったのか。アイス様、私ごときのためにありがとうございます!!」
いきなりそういうとウルヴが土下座してきたからびっくりした。
「いや、それは気にしなくてもいいからね。ところで、ラヒラス、その魔導具ってうちの猫達でも使うことは可能かな?」
「そうだね、マーブル君なら問題ない、というか楽勝だね。恐らく俺の倍の数操れるかな。ジェミニちゃんは少し魔力が足りないかな。ライム君はまだ修行が必要かな、もちろんこれからも改良は続けていくからその後はどうなるかわからないけど、今の時点ではそんなところかな。」
「だってさ、マーブル、ジェミニ、ライム。」
「ミャア!!」
「キュウ(ワタシ達の種族は魔力低めだから仕方ないか。)。」
「ピィ、、、。」
「よかったね、マーブル。ほらほら、ジェミニもライムも気を落とさない。ジェミニは今でも十分強いでしょ。ライムは攻撃はともかく、防御が上手いんだから、そのおかげで無茶な作戦もできるし、それよりもライムのおかげで、魔物の食材から作る食事のレパートリーが広がったんだから。」
「キュウ(ありがとうございます、アイスさん)!」
「ピー!!」
よかった、納得してくれた。とはいえ、今言ったのは本心だからね。そんなことを思っていたら、ラヒラスが話を続けた。
「そもそも、自分用に作ったこれだって、かなり製作時間がかかっているからね。今は使えるか使えないかの話しをしただけで、作れと言ってもしばらくは無理だよ。これから使ってみて改善点とか探さないとならないし、今の状態では問題点だらけだよ。」
「なるほど。ある程度目処が立ったら、マーブル達にも作って欲しいかな。」
「それは構わないけど、正直、マーブル君達の場合は下手に使わない方がいいかも。今の状態でもこの魔導具より威力も射程も命中率もかなり上だろうし、魔力だけでなく並列思考が必要だから無駄に疲れるよ。これから改良を重ねて満足のいく仕上がりになったとしても、勝てる気がしないかな。まあ、自分の身を守ったりするのが目的だからね。」
「なるほど。それで、その魔導具は武器とも言えるよね? 名前は付けたのかな?」
「ああ、名前ね。色々候補はあるにしても正直公表は恥ずかしいから、いまのところはフレキシブルアローと付けているよ。」
「いやあ、てっきり攻撃体を指示通りに飛ばすから『ファンネル』とか名付けるのかなって。」
「うん、一応それも候補には入れたんだけど、何かいろんな意味で嫌な予感がしたからやめておいたよ。まして『○ィンファンネル』なんて付けた日にはね、、、。」
「確かに、それはあるかもしれない。ではしばらくはフレキシブルアローということで。」
というわけで、ラヒラス作成の魔導具ファ、じゃなかった、フレキシブルアローのお披露目と相成ったわけであるが、ハッキリと言おう、、、カッコイイ!! 以前の世界ではアニメだったのだが、実際に生で見ると迫力や動きが凄かった。というか、ああやって平気で操れるラヒラスって一体何者? そんなことを言ったらラヒラス曰く、魔力が無いくせに水や氷を自由自在に操る私の方が異常だそうだ。解せん、、、。
そんな話をしながら王都目指して街道を進んでいく。マーブル、ジェミニ情報によると、王都へはあと1日ちょいで到着するそうだ。休まず進めばね。途中もう少し進めばトリカブの町があるそうだけど、何か名前的にも嫌な予感がするし、何よりそこで宿をとっても距離的には中途半端になるとのことだったので、この町はスルー決定。さらに進んでいけば名も無き村というか集落がいくつかあるそうで、そちらの方がマシじゃないかな、という意見もちらほら出てきたが、ここは思い切ってどこか人目の付かないところに転送ポイントを設置してねぐらで止まった方がいいと思ったので、それを伝えると全員が諸手を挙げて賛成したのでそれで決定。一番多かった意見、というより全員の意見だったが、「美味いメシを!!」ということらしい。マーブル達だけでなく、ウルヴ達3人も同意見、というより何か打ち合わせがあったかのように声が揃っていたのは笑えた。
しばらく進むと、何やらバッチィ反応を探知した。盗賊第2弾だ。今回は私達が標的っぽいな。マーブルレーダーからは反応はなかった、というより弱すぎるのでどうでもよかったらしい。いつものことだし、何より可愛いからおっけー。さて、数は、と、10人か、いや、その後ろからも気配があるな、そちらは、と、3人か。うん、後ろの3人は私の射撃訓練用の的にでもなってもらいますか。あとはラヒラスの慣熟訓練にしましょうかね。
「ああ、みなさん、この先500メートル位に盗賊の集団が待ち構えています。誰を狙っているわけでもなく、恐らくここを通りかかる人間に対しての待ち伏せだと思います。所詮は盗賊ですので、私達の慣熟訓練ということにしたいのですが、よろしいですか?」
「それについてはわかったが、具体的には?」
「相手の編成は直接部隊が10人、後方部隊が3人といったところかな。というわけで、直接部隊の10人はラヒラスに任せます。後方の3人は私のつぶての的になってもらいます。そんな感じで。」
「わかったよ。念のために聞いておくけど、殺すのは無しだよね?」
「うん、無しで。とはいえ生きてさえいればどんな状態でもよし。あとは、後ろを通りがかった人達へのお小遣いとして放置で。あ、それと期待はあまりしていないけど、よさげな装備があれば剥ぎ取りは自由です。今回についてはラヒラスと私で攻撃しますが、他のみなさんはラヒラスの護衛ということでお願いしますね。」
「「「了解!!」」」
「ニャア!」
「キュウ(了解したです)!」
「ピィ!」
今回は相手が相手なので、みんな納得してくれた。いつでも攻撃できるようにアルラウネスリングをいつでも出せるようにする。ラヒラスも起動装置に魔力を込める。
盗賊達との距離が100メートル位にまで近づくと、向こうはようやく気付いてくれたのか、気配がこちらに向いてきた。アルラウネスリングを両手にそれぞれ持って準備完了。ラヒラスの方も準備完了しているらしく起動装置は青白く光っていた。盗賊達はラヒラスの持っている青白い光に視線が集中しだしている。そういえば、あれは何で出来ているのか聞いてなかったな。あとで聞くとしましょうかね。
50メートルを切るところで、10人の盗賊達はこちらに向かって来ていた。後ろに控えている3人はゆっくりとこちらに向かって来たが、ある程度の距離まで進むと止まった。恐らく木に登ったりして準備しているのだろう。残念、そっちも射程圏内だ。
10人でこちらを取り囲むように、いや、正確には3方向から一斉攻撃するような配置を取ると、長らしきものが何やら得意そうな顔で言ってきた。台詞はいつものやつです。
「お前ら、命が惜しければ金目のものを出しな。特に、その光っているやつを俺によこしな。」
面倒なので、さっさと氷の塊を作って設置、後ろに控えている3人に向かって投げる。ラヒラスは起動装置を上に向かって放り投げる。
「おい! 言うとおりにしろ!! 命が惜しく、、、、」
頭らしき男? が何かを言っているが、そんなものに付き合う気はないので攻撃を続ける。ラヒラスの肩から板が飛び出しコの字に変形して取り巻きに魔法の矢が撃ち込まれている。向こうの攻撃が始まると同時に撃ち込まれた矢は取り巻き達の腕や足に次々と刺さり周りの動きが完全に止まる。
私の方も放った2個が1人に集中して命中したので、さらにガンガン放っていく。ドサッという連続した音の後に3体の盗賊が落ちてきた。3人からううっ、という呻きが聞こえてきたが、復活されると面倒なので氷の塊からドリルに変えてさらに放ち、腕と足を無力化する。
頭らしき人物を除いて全員が手と足をやられて動けない状態になった。1人だけとなった頭らしき人物はここにきて自分の置かれた状況が理解できたらしく命乞いをしてきたが、ラヒラスの飛行物はそれを無視して6本全部が頭の周りで動きを止める。どうやら一斉発射するようだ。
「ま、まて、見逃してくれたら、と、とっておきの宝を、お、お前達に、や、やる。わ、悪い話しじゃ、ないだろう?」
そんなことを言っても、どうせそんな約束など守る気はこれっぽっちも持ち合わせていないだろう。何よりとっておきの宝というが、トリトン帝国で盗賊をやっている程度の小物の持っているものなんてたかが知れている。そんなことよりも、こんなのがいなくなる方がお宝の気がする。ラヒラスもそれをわかっているのか、かまわず攻撃をした。
「ま、まって下さい、ま、まだ、し、死にたくない!! 死にたくない、ってぎゃーーーーーー!!」
ラヒラスの放ったコの字の物体から魔法の矢が頭めがけて容赦なく撃ち込まれていく。しかもわざとらしく切り刻むように当てていくところがえげつない。しばらく攻撃を受け、全身血だるまになりながらもずっと叫んでいたせいか、頭は何も話す気力すら尽きたようで、こちらを見ておびえてはいるが、何も言ってこなくなった。
ぶっちゃけ、こいつらのことは正直どうでもよく、それよりも今日の転送ポイントを探すことの方が重要だと判断し、こちらも何も言わずにこの場を立ち去ることに決定。装備もまともなものがなかったので、装備ごと放置しておいた。後は誰かが処理してくれるでしょ。あ、善良な旅人がこいつらを助けてしまうと恩を仇で返すことになりそうな気が少ししたので、「彼らは盗賊で、愚かにも返り討ちにあって現在の状況になっておりますので、あとはお好きになさって下さい。」といった内容の文をしたためて頭の着ていた革の鎧の血がついていない部分に貼り付けてこの場を後にした。
この後は特に何も起こることなく、転送ポイントになりそうな場所がなんとか見つかったので、設置した後にねぐらに転送していつもの食事、風呂、洗濯を済ませてからこの日は終了。
次の日になったので、マーブル達と朝の挨拶を交わして、みんなで朝食後、早々に転送ポイントに戻って出発、王都を目指す。
移動の途中で村に到着したが、村人の様子はひどい状態だったので、とりあえず用意しておいた肉を村長に渡しておいた。いろんな肉を食べやすい大きさにしたのはいいけど、種類毎に分けるのを忘れてしまったのでどの肉かは全く把握していなかった、とはいえ、私達が倒した魔物の肉なので、鮮度は十分だし、時間差で氷が溶けるようにしておいたので、しばらくは大丈夫だろう。村長どころか村のほぼ全員からお礼を言われ、村に泊まっていくようお願いされたが、先を急いでいるので断った。村長から「この御恩は忘れません。」と言われたが、もう会うことはないと思うので言葉だけ頂いておいた。別にお礼に期待して肉を渡したわけではないし。
次の村でも肉を分けたが、同じような結果となったが、こちらも同じように気持ちと言葉だけ頂いてその場を後にした。この後は何事もなく進み、夕方頃にようやく大きな町並みが見えた。ついに帝都トリトンに到着しようとしている。
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