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第207話 さてと、完了報告です。

前回のあらすじ:マス料理を堪能した。

 私達はフロスト領へと戻り、すぐさまトリトン陛下とリトン公爵の処へと向かった、今日はアマデウス教会の小会議室だった。よし、フロスト城内での執務室は廃棄されたようだな。


「おう、侯爵、無事に攻略したようだな。で、ダンジョンクリスタルは持ってきたのか?」


「いえ、持ってきてませんね。あんなの持ってきたら私がダンマスになっちゃうじゃないですか。」


「いや、お前さんがダンマスで構わねぇと思うが、なあ? 宰相。」


「ですな。私はてっきり、フロスト侯爵があのダンジョンのダンマスとなった報告だとばかり思っておりましたが。」


 おい、ちょっと待て。何で私がダンマスになる前提で話を持ってきているんだ? フロスト領のダンジョンであればともかく、他領、しかも程度のダンジョンだぞ!? くそ、こいつら、どうにかして私を中枢に巻き込む腹のようだな、、、。


「フロスト領ならともかく、帝都のダンジョンで私がダンマスというのもどうかと思うんですがね。リトン公爵がダンマスとなられてはどうですか?」


「あぁ、そりゃぁ無理だな。」


「ですな。」


「へ!? それはどうして?」


「いいか侯爵、ダンジョンマスターっていうのは、ダンジョン内のことをいろいろ取り仕切らなければならないのはわかっているよな?」


「流石にそれはわかりますね。」


「で、だ。特に重要なのは、ダンジョン内にどういった魔物を配置するかということもわかるよな?」


「ですね、それもわかります。」


「で、その魔物なんだけどな。実はな、ダンジョンマスターの強さによって配置できる種類と数が決まるんだよ。例えばゴブリンとかだとわかりやすいかもな。恐らくリトン宰相の力量だと、ホブゴブリンがいいところじゃねぇかな。でもよ、侯爵の場合だと、ホブゴブリンどころか、ゴブリンエンペラーどころか、これらの特別種まで恐らく配置できるだろうな。数にしても、リトン宰相だと一度に出せる数もそれほどないだろうが、フロスト侯爵であれば、一つの階層でも100や1000余裕で用意できるだろうな。」


「まぁ、フロスト侯爵がどうしても嫌だというのであれば、そこにいるマーブル殿とかジェミニ殿とかでも問題無い、というかむしろそうしてくださいお願いします、というのがこちらとしての本音かな。」


 マーブルとかジェミニとかにダンマスをやってもらうのか、、、。それもある意味一つの手かな、とか思ってマーブル達を見てみると、心なしか耳が垂れ下がっているような気がした。明らかに嫌がっているな、これは。


「あ、そうそう、マーブルやジェミニなどの魔物がダンマスになってしまうと、倒されるまでダンジョンから出られなくなるからな。」


 それを聞いたマーブル達は勘弁してくれといった感じの表情で私にすがりついてきた。もちろん、こちらとしてもそれは呑めない条件だ。仮にマーブル、ジェミニ、ライムのいずれかがダンマスとなってそこのダンジョンに居ずっぱりになってしまったら、私もそこで一生を過ごすつもりであるが、そこまでしてダンジョンに居たいかというとそんなことはないのである。


「それなら、なおさらマーブル達には頼めないですね。というか、そもそも、別に誰がダンマスになっても問題無いのでは? 別に魔物を強くする必要もないでしょうし。」


「その案は却下だ。というのもな、これからの産業の為にも魔石は確保できるようにしておきたいのだ。残念ながら、弱い魔物では、魔石はおろか、劣化魔石すら望めないんだよ。最低限、今現在出てくるクラスの魔物が必要なんだ。それとな、下手な者に任せてしまうと、この国を豊かにするどころか、逆効果すら招きかねない状況になってしまう。それだけはどうしても避けないとならない。」


 その後、いろいろと話し合いは続いたけど、良い意見が出てこなかったので、フロストの町での有力者も一緒に交えて話し合うことになった。ってか、フロストの町から出すのは決まっていたのね、、、。


 改めて話し合った結果、マーシィ教官が候補に挙がったんだけど、マーシィさんって管理がダメダメだったらしく、結局は振り出しに戻ってしまったので途方に暮れていたときに、思わぬ処から候補者が現れてくれたのだった。


 候補者はグレイルの里の者であった。グレイルはエンシェントドラゴンであり、里に住んでいる者も高位のドラゴンが多い。その中で1名ひきこもりの住民がいたようだ。ひきこもりなので普段は大人しいけど、単純な強さでいえば、グレイルと同等ということらしい。しかも水の力が強いので、まさに帝都のダンマスにはうってつけだ。


 素晴らしい候補者が現れたところで、早速交渉することにした。幸いなことにフロストの町に来ていたので、早速その話を持っていったところ、一も二もなく飛びついてくれたのでお願いすることにした。ただ、少し条件は付けられたけどね、、、。


 その条件とは、ダンマスはやるけど、管理はこちらに丸投げすることと、たまにダンジョンに顔を出すこと、という二つの条件だった。もちろん問題はないので、ダンマスになってもらうべく、再び王都のダンジョンへと転送して、ダンジョンマスターの手続きをしてもらった。


 管理関係では、ゾンビ系の数を減らして、その分スケルトン系の魔物を増やした。それ以外は特に変更せずにそのまま保留。もう一つの条件であるダンマスの処へと顔を出す件では、里とフロストの町からダンマスの処に転送装置を用意してもらった。当人はこれで満足してくれたのでよしとしよう。


 って、一番大事なことを忘れていた、水脈だ。水脈を宮殿の噴水のところに湧き出てくるように調整してもらおうと思っているのだけど、その話をすると、本来であれば、かなりのダンジョンポイントが必要であったらしいけど、そこは流石に水の力が強いドラゴンである。片手間で可能とのことだったので、是非にとお願いしておいた。ただ、調整やら何やらで一日かかるからそれだけは待って欲しいと言われたので承知しておいた。


 とりあえず、やれることはやったので、再びフロストの町へと戻って報告に行った。


 トリトン陛下とリトン公爵に、水源の確保は完了したけど、調整で一日ほどかかることを伝えると、逆に一日で完了することに驚いていた。


「あ、そうそう、まさか明日になるとは思いませんでしたが、帝都で式典を行いますので、陛下は参加するようにお願いしますぞ。」


「おいおい、式典なんて必要ないだろ? やるんならそっちで勝手にやっててくれよ。」


「そういう訳には参りませんので。では、準備もありますので、早速帝都に戻るとしましょうか、陛下。」


 トリトン陛下は嫌そうな顔をして、その場を去ろうとしたのだけど、左右両方から肩を掴まれた。


「あらあら、陛下、これからどこへ行こうとなさっているのでしょうか?」


「そうですぞ、陛下。では、参りましょうぞ。」


 陛下の肩を掴んだのは、リトン公爵夫人であるマリーさんと、一応護衛任務についていたカット伯爵であった。逃げられなくなった陛下はそのままアマデウス教会の転送装置までドナドナされていった。たまにはしっかりと仕事をしてくださいね、陛下。


「あー、そこで他人の顔をしているフロスト侯爵、あなたにも参加していただきますよ。」


「!! 私もですか!?」


 まさか、私も参加させられるとは思ってもみなかったので、完全に虚を突かれた感じとなった。


「当然だろう。今回の立役者が出席しないでどうするのだ。まして、曲がりなりにも侯爵だぞ。上級貴族がこれほどの一大行事に出席せずどうするというのだ? 一応言っておくが、陛下と同様逃げようとは思っていないよな? 残念だが、マーブル殿達は私の味方である、諦めよ。」


 チッ、まさか、マーブル達を味方につけてしまうとは思わなかった。マーブル達は逃がさないよ、と言わんばかりに私の定位置にそれぞれ飛び乗ってきた。そればかりか、戦姫の3人や、ウルヴ、アイン、ラヒラスといった直臣の3人に加えて、エーリッヒさん、エルヴィンさん、ハインツさんも一緒になって取り囲んでいるではないか、、、。うわぁ、よく見ると、レオ達もその囲いに混じっていた。


「アイスさん、トリトン帝国が貧乏国から一気に大国へと変貌していく瞬間を目の当たりにする大事な行事ですわ、いくら面倒だからといっても、欠席なさるのはいけませんわよ。」


 アンジェリカさんが私にそう話すと、周りのメンバーがその通りだと頷いた。その後で、エルヴィンさんが言葉を続けた。


「アイスさん、国が良い意味で変わるであろう大事な行事で、その立役者として出席するのが自分たちの領主ということが、俺たちにとってどれだけ誇らしいことか、そんな俺ら領民の気持ちを汲んで諦めて堂々とした態度で参加してくれないか?」


 ・・・そこまで言われては断れなくなった。はいはい、参加しますよ、すればいいんでしょ。


「流石はフロストの町の領民達だ。もちろん君達も明日の祝典には参加してもらうぞ。」


「宰相様、そこはご安心ください。行くメンバーはすでに決まっておりますので。」


「うむ、流石はフェラー殿とカムド殿である。できれば、どちらか一人、いや、二人とも我が配下に欲しい、フロスト侯爵、どうだろう?」


「何ドサクサに紛れて、有能な領民を引き抜こうとしているんですか。リトン公爵の元には有能な部下が沢山いらっしゃるじゃないですか。」


「いや、いないこともないのだが、フェラー殿やカムド殿クラスとなると、ほとんどおらんのだよ。それに引き替え、フロストの町には恐ろしいほど人材がおるわ。ほんっと、羨ましいわぃ、、、。」


「まぁ、それはさておき、我が領は問題無いと思いますが、他領は大丈夫ですか? いきなり明日行うとなると、出席できない者達もかなりの数出るでしょ。」


「いや、そこは問題無い。実は式典の準備はほぼ整っておってな、あとは当日を迎えるだけの状態になっているんだよ。招待した者達はすでに帝都に滞在しておるから問題は無い。」


「知らないのは私達だけ、ということですか。」


「左様、陛下とフロスト侯爵だけだな、伝えなかったのは。おっと、何で伝えてなかったかはわかるよな? 陛下にしろ侯爵にしろ、先に伝えてしまうと何かしら用事を作ったりして参加しないだろうからな。もっとも、そうならないようにいろいろと手は打っておいたがの。」


 まじか、、、。まぁ、領民達もそうだけど、特にラヒラスが絡んでいたらどうにもならないな。あいつがこちら側に付かなかっただけでこっちの敗北決定だ。大人しく式典に参加するとしましょうかね。


 私が諦めて参加をすることを確認して満足したのか、リトン公爵は転送装置へと移動していった。


「さぁ、アイスさん、明日の式典に参加されるのなら、それに合わせた衣装を用意しなくては!!」


「あの、アンジェリカさん、貴方達も参加されるんですよね? 自分たちの準備は大丈夫なので?」


「ご安心くださいませ、こちらの準備はすでに整っておりますわ! あとは、アイスさん達の準備をバッチリ行うだけですわ!!」


「マーブルちゃん達はこっちね。」


 マーブル達にも衣装というかそういった準備が用意されていたようで、マーブル達は嬉しそうにセイラさんの方へと向かっていた。部屋には私とアンジェリカさんだけになり、少ししてからヴィエネッタとゴブリンの職人達が入ってきた。


「ご主人、期待していてくださいね! 今回も腕によりをかけて仕上げましたから!!」


 どこかの国が外交でこの町に来たときに着た衣装もかなりのものだったはずなんだけど、今回の衣装がどうなっているかなんて想像もつかない。まして、普段からそういった豪華な衣装など着ないから、服飾のセンスなんてものは皆無だ。当人的には以前着たあれでも十分なんだけどなぁ。


 そんなことを思いながら、大人しくマネキンに徹している私。そんなマネキン状態の私にヴィエネッタがあちこちを採寸して回っていた。流石に蜘蛛だけあって移動が素早い。正直かろうじて採寸しているんだろうなということだけはわかったけど、具体的にどんな感じで採寸されているのかわからなかった。


 採寸が完了すると、ヴィエネッタが職人さん達にあれこれ指示を出していた。その指示通りに職人さん達が服を仕上げていく。見事に連携が取れていて、普段どれだけ共同で作業をしているのかがわかる。


 そうこうしているうちに服はあっという間に仕上がり、ヴィエネッタが確認して何やら職人に指示をした。指示を受けた職人は一旦部屋から出て、何かの魔導具を持ってきた。その魔導具に今仕上がった服を入れ、なにやらつまみを動かしており、それが完了してからボタンを押していた。


 魔導具から何やら洗っている音が聞こえたので、洗浄作業を行っているのはわかった。洗浄が終わったと思ったら、ゴーという音が聞こえてきた。まさか乾燥!? あれ一台で洗浄と乾燥ができるのか!? また凄い魔導具を作ったねぇ。


 後で話を聞いてみると、ヴィエネッタの糸だけで作られた生地は、完成形にしてから一度洗浄する必要があるらしい。で、生地によって洗浄の仕方を変える必要があるらしく、あの魔導具のつまみは洗浄の仕方を調節するつまみらしい。結構専門的な言葉が混ざっていたので、辛うじて理解できた内容がこれ。


 取り敢えず試着してみると、流石に細かく採寸までして作った服である。キツくなくそれでいてたるみは存在しない。この格好で一狩りできそうなくらい動きやすいのもありがたかった。


 お披露目は明日ということで、再びいつもの服装に着替えて領主館に戻ると、マーブル達はすでに戻ってきていたようで、出迎えてくれた。やはりモフモフは最高である。


 夕食時にアンジェリカさん達も加わったので、一緒に夕食を摂ることにした。けど、みんなでグルになって私に内緒にしていたのはちょっとだけ許せなかったので、ウナギの蒲焼きはおろか、マス料理も出さないでおいた。


 メニューだけど、ハンバーグが食べたくなったのでハンバーグを作った。ワイルドボアとオークというブタ同士の合い挽きといえるかどうかわからない材料で作った。非常に美味しゅうございました。


 その後はいつも通り風呂と洗濯を行い、モフプヨを堪能してから眠りに就いた。










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