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第132話 さてと、蛇皮素材祭りの開催です。

前回のあらすじ:蛇さん達のお出ましです。

 それぞれの思惑があってしばらく上の空であった戦姫の特に2人だったけど、ヒドラの咆哮で我に返ってくれたので、気を取り直してこれより戦闘開始だ。


 私とマーブルが最初に飛び出し、その後ろを戦姫の3人が追う形で進むと思いきや、先頭にはジェミニがいた。私達がヒドラへの到着をするのをを阻止せんと、ヴァイパーの一部がこちらに襲いかかってくるのだけど、それらをそこらの雑魚と同じような扱いで首をスパスパと刎ねていく。残りのヴァイパー達はライム、オニキス、カット男爵がいる方へと向かっているようだ。


 私達に襲いかかってきたヴァイパー達は、ジェミニにあっさりと倒され、ジェミニに渡していた収納袋に全て回収されていった。回収が終わったジェミニは、ライム達のいる方へと戻っていった。


 邪魔者がいなくなった私達がヒドラの方へと移動していたところ、ヒドラはこちらが近づいてきているのに気づいたようで、こっちを向いてきた、正確にはマーブルの気配を感じて警戒しているような感じかな。とりあえず一旦停止して、細かい指令を伝えることにした。


「先ほども話しましたけど、首の数は3つ。少ない分硬めではありますが、倒せない相手ではないでしょうけど、意識するのは2点のみです。それは、再生能力と毒袋の存在です。ぶっちゃけ、根元から切ってしまえば毒袋には傷が付かない感じですかね。あとは頭部を破壊するのもアリでしょう。それを踏まえて戦闘して欲しいと思います。で、それぞれの担当ですが、戦姫には左側の首の相手をお願いします。」


「アイスさん、水を差すようで申し訳ありませんが、ワタクシ達では、頭部や根元を切断、というのは厳しいかもしれませんが、よろしいですか?」


「それについては問題ないですよ。無理して大怪我をされる方が正直痛いです。無理そうなら普通に倒してしまって構いませんので。ただ、尻尾は構いませんが、胴体への攻撃だけは禁止します。ただ、牽制程度でしたら許可します。」


「胴体への攻撃禁止、ですの? ということは、アイスさんに考えがおありで?」


「はい、今回はあの再生能力をフルに活かしてもらって、私達の生活に役立ててもらおうと思っております。ダンジョンでは結構出てくるみたいですが、こうした野生で現れるのは珍しいですからね。」


「なるほど。承知いたしましたわ。できるだけ期待には応えるつもりですが、ワタクシ達の担当した分はお役に立てる保証はできませんが、それでもよろしくて?」


「それは構いません。そちらの方はこっちでどうにかできると思いますので。ということで、マーブル、私がどう考えているかはわかるね?」


「ミャア!」


「ということで、マーブルは真ん中の首を担当して欲しい。大丈夫だとは思うけど、戦姫の3人に万が一が起こりそうだったら、そのフォローも頼むよ。」


「ミャッ!!」


 マーブルが可愛い声で応えてくれる。この鳴き声で私は癒やされるし、気合いも沸いてくる。よし、お父さん頑張っちゃうぞ!!


「では、そういうことで、お願いしますね。では、戦闘開始!!」


 先陣を切ったのは戦姫であった。最初にセイラさんが矢に魔力を込めて放った。


「これだけデカい的だと、しっかりと狙わなくても当たるね。」


 そう言いながらも、しっかりと根元へと命中したが、矢は貫通せずに途中で止まってしまった。


「ありゃあ、予想以上に硬いね。」


「だったら、これで追い打ち。」


 次にルカさんが、ヒドラに杖を向けると、杖から杭のようなものを刺さった矢目がけて放つと、杭は矢に当たり、矢は深く刺さっていった。


 杭のようなもののアシストで深く矢が刺さるが、流石にこの程度では怯まないようだ。


「ルカ、ありがと。流石に1本だけでは効果がなさそうだけど、、、数を多くしたらどうかな!!」


 そう言うと、セイラさんが魔力の籠もった矢を無数に放つ。それに合わせるようにルカさんも杭をたくさん作り出して矢が深く刺さるようにアシストしていた。


「セイラ、ルカ、お見事ですわ!! 次はワタクシが参りますわ!!」


 アンジェリカさんは、ヒドラに突進して、特に矢が多く刺さっている箇所へと突きを繰り出す。突きは見事にそれらの中心部へと命中して、硬い皮膚が破れて肉の部分が現れた。しかし、ヒドラの回復能力は凄まじく、傷が徐々にふさがっていってしまう。


「はあ、噂以上の回復力ですわね。しかし!!」


 呆れはしたものの、その表情はむしろ喜びにあふれていた。


「セイラ、ルカ! あれでダメージが与えられるんですから、このままごり押しでいけますわね?」


「もちろんです、王女殿下! この調子でいきましょう!」


「うん、あのくらいなら余裕。」


 流石に戦姫である。あの連係はそれほど体力も魔力も使っていないのだろう。あの様子なら大丈夫そうだねっと、こちらも仕掛けないとね。と思っていたら、マーブルが仕掛けだした。


 マーブルはいつもの風魔法を放つが、硬い皮膚に阻まれているようで、いつも通りにスパッといかなかったことで少し驚いていた。とはいえ、あの風魔法は威力が弱く、消費もほとんどないので、無制限に放てると、ジェミニから聞いたことがある。


 しかし、マーブルが驚いたのはそこまでで、すぐに右前足を出して、「ミャッ!」と可愛い鳴き声で呪文を放つと、先ほどは風の刃だったのが、何だか回転ノコギリの刃のようなものが現れて、ヒドラに襲いかかった。それだけではなく、黒い球体も同時に放っていた。回転ノコギリの刃も先ほどのように、硬い皮膚に阻まれたように見えたが、そこからが違っていた。回転ノコギリの刃はそのままヒドラの硬い皮膚をガリガリ削っており、黒い球体は回転ノコギリのサポートをするかのように存在していた。


 後で聞いた(ジェミニの通訳付き)話によると、あの黒い球は重力魔法で、回転ノコギリに対しての進行方向に重力を与えてノコギリがヒドラの首を刎ねやすくするためのサポートをしていたのだそう。何でも、先ほどのセイラさんとルカさんがやっていたやり方を見て思いついたのだそう。流石は戦姫だし、それを自分流にアレンジしたマーブルも流石だ。


 ヒドラの真ん中にあった首は根元からキレイに、マーブルによって刎ねられてしまった。落ちた首はすかさずマーブルが自分の収納魔法で回収してしまった。私も負けていられないな。


 私はどうしたかというと、とある糸を取り出して、矢を2本ほど水術で作成して糸の両端にそれぞれくっつけて固定して準備完了。ちなみに、今回の矢はまっすぐ飛ばずに左右に大きく逸れるように矢羽根の部分を設定しておいてある。おもしろい飛び方にならないかと、いろいろといじっているときに偶然できたものだったけど、まさか、こんなところで使い途ができるとはねえ、世の中何が役に立つかわからないね。


 射程距離まで近づけたので、2本の矢を放つと、2本の矢は思いっきり左右に広がりヒドラの首をスルーしていく。その間にある糸が赤く光り、ヒドラの硬い皮膚を切り裂いていき、首の根元からキレイにスッパリとヒドラの右首を刎ねてしまった。ただ、流石に硬い皮膚だったらしく、矢もヒドラの本体の後方で落ちてしまった。逆に言うと、糸が回収しやすくて楽な距離だったという見方もある。


 こちらもすかさず首を空間収納にいれ、同時に糸も回収する。ちなみに、この糸はアラクネのヴィエネッタからもらった秘蔵の逸品である。この糸はヴィエネッタの隠し技らしく、何かを切断するときに極まれに使用する糸らしい。そんな秘蔵のものを私にくれてよかったのか聞いたところ、私だから献上すると言って聞かなかったので、仕方なく頂いたのだけど、これもこんなところで役立つとは思わなかったよ、、、。


 ちなみにこの糸は、基本は魔力を込めて切れ味を上げるものらしいけど、魔力がなくても、速度で同じような効果があるからと言われてたけど、まさかここまでの切れ味とは思わなかった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ヒドラは自分の身に何が起こったのかわからない様子だった。3人の人間が左の首に攻撃をしかけてきたけれど、予想以上にダメージを喰らい、それだけではなく、猫の魔物に真ん中の首を切られてしまったばかりか、一人の人間が3人の人間と同じように自分の右首に矢を放ち、それが当たらなかったと思いきや、首まで刎ねられてしまったのだ。普段なら、傷一つ付いていない自分の姿を見て、驚き、恐れ、逃げ惑う餌達を逃がさず仕留めて喰らう、それが当然の環境であったのに、今回はまるで逆。本来ならあり得ない状況にヒドラ自身は迷ってしまい、尾を使ってなぎ払うことも忘れてしまっていた。


 少しの間呆然としてしまったヒドラだったが、失ったのはあくまで首のみ、他の部分は無事であることを確認して落ち着きを取り戻す。いくら首を刎ねられても、どうせまた生やせばいいだけのこと、幸いにも胴体は無傷だから、どれだけ首を損傷しようと、大した問題ではない、そのうち攻め疲れたときこそ反撃の時だと思い直して体を再生させていく。そこにいる人間と猫達の思惑とは別に、、、。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 お、ようやく再生してきたね。確かに凄い回復能力だね。なかなかいい勢いで再生していくヒドラの首を見て少し不安に駆られてしまったので、それを掻き消すように、空間収納に入れてあるヒドラの首を確認してみた。うん、刎ねられた首はそのままだな。念のためマーブルにも確認してもらうか。


「マーブル。今収納したヒドラの首が小さくなってないか確認して。」


「ミャア!」


 マーブルは黒い空間を少しの間、出したかと思ったら、黒い空間は消えてしまった。マーブルは大丈夫だよ、と言わんばかりに「ニャア!」と鳴いてくれたので一安心だ。


 心配していたのは、再生することにより、こちらで回収した首がなくなってしまうということ。今回それを確認して無事だったので一安心だ。


 ヒドラが首を再生している間も、左の首と戦姫との戦闘は続いているが、何か少し様子が異なっている。というのも、先程よりも攻撃の通りが良くなっている気がするのだ。もしや、再生している間って、少し柔らかくなるのかも、そう思ったので、それを確認するべく試してみようと思っている。


「マーブル。ヒドラの首が完全に再生するまで攻撃中止ね。あと、再生したら、私が最初に右の首を切るから、その右の首が再生を始めたら、さっきみたいに倒してみて。」


「ニャア!!」と敬礼しながら可愛い声で鳴いてくるマーブル。


 ようやく、ヒドラの首は再生し終わったので、早速試したいことを確認するべく、先程と同じように矢を2本糸の両端に付けて、やはり先程と同じように右の首めがけて矢を放つ。予想通り、ヒドラの守備力は戻っていたが、すでに、今の一撃で右の首は簡単に刎ねることができた。


 ヒドラは再び右の首を再生させている。再生しているのを確認したマーブルが、風魔法でノコギリを、重量魔法でそれをサポートするような感じで魔法を繰り出した。予想通り、再生中のヒドラは守備力が低下しているらしく、マーブルの放った魔法は最初とは違ってアッサリとヒドラの中央の首を刎ねてしまった。これで効率よくヒドラ狩りができるね。思わずニヤリとしてしまったが、これくらいはいいだろう。


 これで、領民達の装備をヒドラ皮の素材で統一できるだろうし、首の根元に毒袋は存在しないだろうから、ヒドラ肉をたっぷり美味しく頂くことができるはず。しかも贅沢にね。


 コツがわかってきたので、マーブルと交互に首を刎ねては、休憩をしたりしていたが、戦姫も慣れてきたのか、そのローテーションに加わってきた。戦姫にもマーブル印のマジックバッグは渡しておいたので、戦姫も倒しては袋に収納していた。


 しばらくそれを続けていたら、ジェミニ達も取り巻きの蛇たちを全て倒してしまったらしく、暇だからとこちらに参戦してくるようになったので、どうせならと、こちらでは手を付けていない尾の方をお願いしておいた。


 こうして、しばらく素材集め祭りを楽しんでいた私達だったが、ヒドラがようやくこちらの意図に気付いたようで、先程までの様子とはうって変わり、逃げの体勢を取ろうとしていたが、時既に遅し。逃げられないように水術で徐々に足下を凍らせておいたんだよね。だから、ヒドラ君、もう君の足は動かないよ。黙って力尽きるまで私達に素材を提供するのだー!


 逃げられないと悟ったヒドラが最期の反撃をしてきたようだけど、すでに再生能力を使いすぎて何も出来なくなっていた。勝手に倒れてしまったのだ。そうなってしまうと、いくら部位を切り取っても復活してこなくなったので、仕方なく心臓部と思われる場所にゼロ距離で矢を放って戦闘終了。


 休憩を挟んでの戦いだったので、疲労感はほとんどなく、元気いっぱいのマーブル達によって綺麗に胴体などの部位は解体されていった。後は、毒袋がどこにあるかわからないので、試しに首の1本を取りだして解体してみたけど、どうやら、毒袋は首の方には存在しておらず、胴体の方に存在していたようだ。その胴体には巨大な毒袋が存在していた。どの位大きかったかというと、このメンバー全員で一斉に入れるくらいだった。


 もちろん、これらも有効利用させてもらうので、余すことなく空間収納へとしまった。


 ちなみに、今回の戦果は、ヴァイパー27匹、ヒドラ本体1匹+首48本、尻尾12本という結果だ。しっかり解体すれば、詳しい結果が出るだろうけど、そこは省略。説明面倒だしね。


 カット男爵は精神的にも身体的にもかなり疲れていたようなので、ここで休憩を取って、折角だからヒドラ肉を使ってステーキを振る舞い、回復したところで公都へ出発し始めた。


 日が暮れる前に何とか公都の城門を目にすることができた。とりあえず、今日中には公都に入れそうかな。


カット男爵「な、なに、アレ?」

ジェミニ「キュウッ!(いつも通りですよ。)」


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