表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】美少女と距離を置く方法  作者: 丸深まろやか
第11話 美少女と泣く
62/117

① 『仲間はずれにしたからには』


「おーい! 廉!」


「ん? あ、ああ」


 呼ばれて振り返った先には、すでに恭弥たち三人の姿があった。


「楠葉、遅い」


「時間どおりだろ」


「10分前行動が基本でしょ」


「じゃあ集合時間を10分早く設定しろよ」


「……あんたが友達いない理由がよくわかるわ」


「……ふんっ」


 俺と雛田のいさかいを、恭弥はなぜか満足そうに眺めていた。

 その隣をちらっと見ると、橘が控えめな様子で立っている。


「……よっ」


「お、おはようございます」


 派手でイマドキなファッションに身を包む恭弥と雛田とは違い、俺と橘の服装は地味なもんだった。


 俺の服については割愛するとして、橘はどこか品のある緑色のロングスカートと、白いカーディガンを着ていた。

 爽やかな印象で普段の橘とは少し違って見える。

 が、それでも橘は抜群に綺麗だった。

 というか、むしろ魅力が倍増している気さえする。


 最近はなぜか忘れてたけど、やっぱりこいつ、めちゃくちゃ美人だな……。


「……なんですか、じろじろ見て」


「い、いや……べつに」


 わざとらしく肘で俺の腕を突いてくる恭弥の足を蹴りながら、俺は一つ咳払いをした。


 ダメだダメだ。

 変に意識してちゃ、この先がもたない。


「それにしても、千歳、残念だったわね」


「それなー。須佐美さんにも会いたかったぜー」


「ですが、千歳が直前に予定をキャンセルするなんて、珍しいですね。初めてなのでは」


 不思議そうに首を傾げる橘に、俺たち三人の顔が固まる。


 もしかすると俺たちは、橘の鋭さを見くびっていたのかもしれない……。


「ま、まあ! 気を取り直して、行くわよ!」


「い、行くぜー!」


 意気揚々と手を突き上げて歩き出す雛田と恭弥。

 テンションでなんとか誤魔化したな。

 しかし、いったいどこに行くのやら。


 結局、俺はこの日の具体的な予定について、なにも聞かされていなかった。

 なにをするつもりなのか恭弥に尋ねてみても、「まあまあ、任せとけって!」と答えるだけ。

 内容は正直なんでもよかったので、あまり深く追求はしなかったけれど。


 今日の目的。

 それは、橘とより親密になることだ。

 ま、まあ平たく言えば、橘と……恋人になる。


 い、いや、もし恋人になれなくても、今より距離が縮まればそれで……。


 そ、そうだな。

 なにもそんなに焦ることはない。

 橘だって前に他のやつに告白されたばかりなんだし、タイミングもよくないだろう、うん。

 ここは橘のためにも、見送るべきだ。そうに違いない。


 俺がそんなことを考えていると、ポケットの中のスマホがかすかに震えた。

 見ると、新着メッセージの通知だ。

 しかも、須佐美から。


『私を仲間はずれにしたからには、くれぐれもしっかりね』


『失敗はともかく、何もできなかった、は許さないから』


『後でちゃんと理華に確認するから、誤魔化せないわよ』


 須佐美からの恐怖の連投……。

 さすがにこれじゃあ、何もしないわけにはいかない、か……。


 あぁ、くそっ。


 いつまで引っ張ったって一緒だ。


 やるならやる、やらないならやらない。

 中途半端が一番、悪だ。


 俺は、やるんだろうが。


『わかってる』


 須佐美にそれだけ返事して、スマホをポケットに突っ込む。

 これで後には引けないが、もうそのつもりもない。


「楠葉さん、何してるんですか。はぐれますよ」


「あ、ああ。悪い」


 こちらに振り返った橘に軽く手を上げ、早足で追いかける。


 変に意識してしまわないように。


 肩肘を張ってしまわないように。


 自分を忘れてしまわないように。


 今日の行動指針はこれだ。


「なんだか今日は、ぼーっとしていますね。体調でも悪いんですか?」


「なんともないよ。人混みにやられてるだけだ」


「……ならまあ、いいですが」


「おーい二人とも! こっちこっち」


 少し離れてしまっていた恭弥たちに呼ばれ、俺たちは一緒に駆け出した。


 ……行動指針は決まったけれど。


「橘さんと二人で抜け出すつもりじゃないだろうなー、廉」


「んなことするか」


「今日は完璧なプランを組んでるんだから、ちゃんとついてきなさいよ」


「あーはいはい。わかってるよ」


 何よりも、今日が楽しくなればいい。


 柄にもなく、俺はそんなことを思っていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 根に持ってるな~須佐美w 廉の決意はぐらつきそうな気がするなw [気になる点] 須佐美は彼氏いなかった? いればトリプルデートになるのにw
[一言] 夜の部更新お疲れ様です〜♪
[良い点] 今回も面白かったです 楠葉くんがどう勇気を見せるのか楽しみです [一言] 作者様に感謝
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ