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【完結】美少女と距離を置く方法  作者: 丸深まろやか
第10話 美少女が嫉妬する
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④ 「……肝に銘じるよ」


「つまり、私はのけ者ってことね?」


 放課後、2年5組の教室を訪ねると、須佐美が待っていた。


 メッセージのやり取りで大まかな事情は伝えてあったものの、やはり協力を仰ぐ身。

 直接話しておいた方がいいだろうということで、こうして来てみたはいいが……。


「都合よく使っておいて、混ぜてくれないんだ?」


「うっ……わ、悪いと思ってるよ、ホントに……」


「ふぅん」


 須佐美は意地の悪い笑みと口調で、俺の罪悪感を煽りに煽ってきた。

 負い目があるぶん、余計に精神にくる……。


「ふふっ、冗談よ。私は直前で都合が悪くなればいいんでしょ? 任せておいて」


「お、おう……よろしく頼む」


「でもべつに、私がいない予定でも理華は来るって言ったと思うわよ」


「そ、そうか……? そんなことないと思うけど……」


「理華のことは、私の方がよくわかってるもの」


「な、なるほど……」


 正直、それを言われると返す言葉がない。


「ところで、当日の予定はどうなってるの? 冴月と夏目くんは、一応ダブルデートって言ってるのよね?」


「あ、ああ。もちろん橘には、そんな風には伝えてないが」


「……ふぅん」


 須佐美は顎に手を当てて、少し胸を張って考え込んだ。

 相変わらずスタイルがよく、こういう仕草が様になっている。


「どこに行くの?」


「普通に街中で遊ぶらしい。具体的なプランは聞いてないな」


「……なるほど、そういうことね」


 須佐美はなぜか、何かに気付いたかのような様子で肩を竦めていた。


 なんなんだ……いったい。


「まあ、楽しんでくればいいと思うわよ。理華をよろしくね」


「お、おう……」


「それから、自分の気持ちに正直に、ね。思慮深いのは楠葉くんのいいところだけど、時にはその場の勢いとか、テンションが大事だったりするものよ」


「……肝に銘じるよ」


 なんだって俺は、同い年の女子にこんなことを言われているのだろうか。

 やっぱり、おかしなやつだ、須佐美は。


「あ、千歳。……と、楠葉さん?」


 突然廊下側のドアから声がして、俺と須佐美は同時にそちらへ振り向いた。

 いつのまにか教室には、俺たち以外に誰もいなくなっていた。


「あら、理華。まだいたの?」


 さっきまでの話などなかったかのように、須佐美は普段通りの様子で橘を迎えた。


 この切り替え……恐ろしいやつめ。


「はい。少し図書室に用が」


 橘は言いながら、俺と須佐美をちらちらと交互に見た。

 橘には珍しく、どこか落ち着きのない様子だ。


「お、お二人は……ここでなにを?」


「ううん、なんでもないわ。ちょっと話してただけよ」


「そ、そうですか……。珍しいですね。なんのお話を」


「大したことじゃないわよ」


 なぜだか妙に楽しそうな須佐美と、表情の暗い橘。

 俺はといえば、後ろめたさもあってあまり橘の方を見れずにいた。


「そ、そんなに仲が良かったですか? お二人は……」


「あら、仲良しよ。ね? 楠葉くん」


「あ、ああ。まあ」


 なんとなく視線で、肯定しろ、と言われている気がして、適当に合わせておくことにした。

 まあ仲が良い、ということはなくても、決して悪くはないとは思うが。


「そ、そう……ですか」


 なんか橘のやつ、あからさまに元気がないな。

 もう風邪はすっかり治ったものかと思ってたんだが……。


「ところで理華。楽しみね、みんなで遊ぶなんて」


「え? あ、あぁ。そうですね。まだ時間と場所しか聞いていないのですが」


「今回は夏目くんがいろいろ考えてくれてるみたいよ? あぁ、楽しみねぇ」


 くそっ……須佐美のやつ、わざとらしい演技しやがって……。

 しかも本人は楽しそうだから、ますますたちが悪い。

 人の罪悪感で遊ぶんじゃねぇ。


「それじゃあ、私はもう行くわ。当日、楽しみにしてるわね」


 須佐美は実にあっさりそんなことを言うと、橘が引き止めるのも聞かずにさっさと教室を出て行ってしまった。

 あいつもあいつで、けっこうマイペースだよなぁ。


「……帰るか?」


「……はい」



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― 新着の感想 ―
[良い点] やきもちかなw [一言] <「……はい」 「い」のあとにハートマークがうっすら見える・・・ これが行間を読む ってことか!
[良い点] 須佐美がいい味だしてます。もどかしい感じが好きです。 [気になる点] リカ側の心情や須佐美たち舞台裏もいつかみれたらなぁと思います
[良い点] やきもち橘さんかわいいですね [一言] 作者様に感謝
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