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【完結】美少女と距離を置く方法  作者: 丸深まろやか
第10話 美少女が嫉妬する
59/117

③ 「連絡先を……交換、しましょう」


「……」


「……」


 ダメだ、ラチが開かん!


 ここはもう、恥を忍んで言うしかない。

 痛いとこを突かれたら、そのときはなんとかして誤魔化そう。


 出たとこ勝負だ!


「た、橘っ」


「へっ? は、はい!」


 なんとなく、ピシッと背筋を伸ばす俺。

 そして、なぜか橘も同じようにしていた。


「……その、まあ、なんだ、うん。……今度、いつもの5人で遊びに行こうってことに、まあ、なってるんだけどさ……」


「……へ、へぇ」


「き、恭弥が企画してて……橘は、予定とかどうだ? 他の連中はもう了承済みで……まあ、来てくれるかな、とか……」


 やべぇ……人生で初めて、こんな風に友達を遊びに誘っている……。

 しかも、嘘をついている……。


 こんなことを平然とやってのけているとは、やっぱりリア充という生き物は凄い。

 尊敬に値するわ、いやマジで……。

 あ、でも嘘は俺が勝手についてるだけか。


 しかし……いや、さすがにこれはダメだろ、不自然すぎる……。

 断るとかの前に、不審がられるんじゃ……。


「……行きます」


「そ、そうだよな……やっぱりこんなの……えっ?」


「い、行きますって! 千歳ちとせ冴月さつきも来るなら……うん、参加します」


「お、おお……そ、そうか。……え、俺と恭弥もいるけど、平気か……?」


「そ、そんなのわかっています! 自分でそう言ってたでしょう!」


「いや、まあ、そうなんだけどさ……」


「な、なんですか! ホントは来て欲しくないんだったら、そう言ってください!」


「い、いや! 違うよ! わかった! じゃあ、橘も参加するって伝えとく! また場所と日にちは相談することになってるから!」


「わ、わかりました……」


 ふぅ……。

 なんだかよくわからないが、うまくいったらしい。

 この際、結果オーライだ。あとはちゃんと須佐美すさみに口裏を合わせてもらって……って、なんかこれ、騙してるみたいで悪いな……。


「……そ、それでは、そういうことで」


「お、おう……」


 とうとう橘はスッと立ち上がり、ゆっくりと玄関へ向かっていった。

 どうやら帰るらしい。

 正直、嬉しいタイミングだ。

 これ以上は少し、メンタルへの負担が大きすぎる。


「……楠葉さん!」


「え、な、なんだ?」


 部屋を出る寸前、橘が妙に大きな声を出した。

 身体の前でスマホを構えて、気まずそうに顔を伏せている。


「……あの、れ、連絡先を……交換、しましょう。し、しませんか……?」


「……あ、あぁ」


「か、風邪で! 今回の風邪で、ご迷惑をお掛けしましたし……お互い連絡先を知っていれば、もっと融通が利いたというか……便利ですし……何かと」


「そ、そうだな……タダだし」


「そう! タダですし! ……それに、友達ですから……」


「あ、あぁ。友達だしな……」


 なんだかおかしなやり取りの後、俺たちはメッセージアプリのIDを交換した。

 画面に橘のアカウントのアイコンが表示され、トーク画面になる。


「……アイコン、みかんじゃん」


「た、『橘』という字は『柑橘類』の『橘』ですから。そこから……」


「ふ、ふぅん」


「き、興味ないなら言わないでください!」


「いや、悪い」


「本当に興味ないんですか!?」


 橘にしては珍しいテンションのツッコミ。

 なんだかおかしくなって、俺たちは肩を震わせて笑った。

 狭い玄関で、二人して笑った。


「……じゃあ、楽しみにしてる」


「はい。……私も」


 ドアを閉めて、橘の足音を聞く。


 疲れた……。


 でも、なぜだか俺は、この疲れを心地良く感じていた。



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― 新着の感想 ―
[一言] 2人ともどう行動したらいいかわからなくて戸惑ってる感じですかね………めっちゃ面白いですね
[一言] 2回目更新お疲れ様です! 焦れったさでニヤニヤが止まらないですね(・∀・)
[一言] 日間1位、当然ですね。 わたくし個人で言わせて貰えば、このまま続ければ月間おろか、年間でも勝ち取ることが可能な内容だと感じます。 お体に気を付けて、どうかもっと作者様の文章を読ませてくださ…
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