指名手配の大賢者
休日ってなんだろうっていうぐらい休日出勤の毎日に執筆が滞っております……。
出勤までの合間に作成しているのでいつも以上に誤字脱字あるかもしれませんがご了承ください。
「以前ここの国王に呼び出されてさ。そのときにちょっと……ね」
「何がちょっとだ。こいつはな。国王に対して、『豚の餌になるぐらいならモンスターの餌になったほうがマシだね』っとか言いやがったんだ。俺がどれだけあの後、事後処理に苦労したか……」
「いやいや、白金級の冒険者に用事があるっていうから、わざわざ指名依頼かと思って出向いたんだよ? そうしたら、いきなり『余の物になれ』とか、そういいたくもなるよね? そう思わないかい?」
見た目もいかついバルトロが、裏声で声真似をしていることに驚嘆するが、それ以上に内容が物騒なことにトランス達は困惑する。そもそも内容的には謁見の時の出来事だとは予想されるが、見た目が幼女な賢者に求婚するのもどうかとは思うが、返事としても一国の王に対して放った言葉とは到底思えない。それをさも日常の一コマのように話す二人組に、違う意味での存在の異常さを見せつけられるのだった。
「その指名手配されていながら、ここにいるのは大丈夫なのか?」
「あぁ、これが無能共にどうこうされるぐらいなら、白金級なんて名乗れないさ」
「さすがに事を構えてる以上、堂々と名乗らせられないから元白金級な」
「図体の割に細かいね、バルトロは。それでも国家指定冒険者かい?」
「お前が考えなしすぎるんだろうが!」
「国家指定……?」
相変わらず痴話喧嘩のような会話をしている二人の、聞きなれない言葉にトランスが首を傾げる。思わず疑問が言葉に出てしまい、サラがそれに答えるように説明を始めた。
「登録したときに説明しないのは、各級は自力での到達として掲げられ目指すことができますが、国家指定冒険者は、国から懇意にでもされないかぎりなれないからなんです」
「立候補や推薦などは通らず、国からの一方的な声掛けのみってことか?」
「はい、そうなります」
「冒険者ギルドってのはどこの国にもあり中立でもある。ある意味第三勢力だ。数は兵士と比べると少ないが、その戦力は無視できないからな。戦争などへの参加義務もないし、依頼さえあれば他の国につくこともある。それをさせないよう縛り付けるための措置みたいなもんだ。もちろん、拒否もできるし色々と融通も聞かせてはくれるがな」
「ふっ、実質拒否などできないようなものだよ。特にこの国ではね。バラックも拒否して辺境に飛ばされた口だしね」
「えっ! そうなんですか!?」
「おっと、知らないとは思わなんだ。詳しくは直接本人に聞いて欲しいな。口を滑らせたのは秘密だよ?」
サラの説明に現役達の補足が重なる。賢者に限っては愚痴のようなものになっているが、現状を知った身としてはそれも仕方ないかともトランス達は納得もしていた。サラも知らない事実をあっさりと漏らすあたりは見た目相応に感じるが、見た目に反して妙に色っぽい声でウインクする姿にちょっとした混乱すら覚える。
「さて、これのことはもういいだろう? 本題に移ろうか」
「……お前が余計な情報を付け加えるから横道にそれたんだろうが」
「これが見ればいいのはそこの鎧君と女の子でいいのかな?」
「あぁ、頼む」
「なら、女の子は中心に来てくれるかな? そのままだと混在してみえちゃいそうだからね」
「あう!」
しれっとバルトロの言葉をスルーして話を進める賢者だが、バルトロも一瞬睨むが、話がそれて長引いているのは事実なので引いたようだ。トランスの背からリーゼは降り、全員がリーゼを囲むような形になる。
「説明だけじゃ納得しない人もいるからね。どうせだから一緒に見ようか」
賢者が両の眼を閉じると、先程までの軽薄な雰囲気がなくなり、子供のような声なのに妙に芯まで揺さぶられるような声が響く。
「世界の記憶……接続……連結……分析」
サラの暴走を止めた時のような語句を唱え終えると、一瞬視界が明滅する。違和感故に周囲を見渡そうとすると、視線が動かず、何故か自分自身が周囲をキョロキョロと探る姿をそれぞれが目にする。予想していたのか、バルトロに関しては腕を組んでじっと佇んではいるが、異様な感覚に顔を顰めている。
「おっと、これの視界を共有したからね。危ないから動かないほうがいいよ。それよりもほら、きちんと見るといい。人というのは、自分で見たものしか信じられないものだからね。まぁ、予想以上……かな?」
賢者の声に意識をリーゼに集中すると、全身に怖気のような物が走る。まるで生きているかのように蠢く鎖が、リーゼの身体を雁字搦めに拘束しているように見える。淡い光の膜がリーゼを包み守っているように見えるが、見た限りではとても動けるとは思えないほどに鎖に縛り付けられているように見える。しかも、その驚異的な雰囲気から怖気が走ったものの、鎖事態は恐ろしく神々しくも見え、とても呪いの類には見えないのだ。
「見ての通り、縛られてはいるようだけど、呪いの類ではないね。どちらかというと封印かな? これは教会の本分だと思うよ。……今の教会の手に負えるかどうかは別としてね」
淡々と全員に今見えている結果について説明する賢者。最後に付け加えた言葉に対しては、多少の侮蔑の念が加えられていたが、呟くように言ったため、トランス達が気づくことはなかった。
「さてと、それじゃ今度はそこの鎧君のほうを見てみようか」
自分が動いたわけでもないのに、視界が動くという奇妙な感覚に襲われるが、何かがわかるという期待からぐっと身体をトランスは身構える。
次の瞬間視界に映ったのは、霊体のような猪と馬が寄り添い、まるで消えてしまいそうなぐらいにうっすらとした女性の大きな幻影が、守るようにトランスを抱きしめている姿だった。




