過去の二つ名
PV10000超えました!
地味に地道にコツコツと続けていきたいと思います。
続きが気になるという方は、評価お願いします!
「これが今日の報酬だ」
「ありがとうございます……。いつもいつもなんといったらいいか……」
「気にするな。こちらも助かっている」
「騎士様が来てから、子供達がすごく明るくなったんですよ」
嬉しそうに話すのは孤児院で働いているシスターであるマイラである。最低限の額が国から支援されているものの、年々その額は減らされていっているという。子供達を置いて働きに行くわけにもいかず、じり貧であるのが現状だった。自分たちが稼いだという事実と、役に立つことができたという自信が、子供達に今までなかった元気を与えることができているという事実に、トランスは思わず微笑む。
「あっ……」
「うん?」
「い、いえ……なんでもありません」
「そうか、ではギルドへ報告がある。これで失礼する。サラ! リーゼ! 行こう」
「じゃぁみんなまたね? またお仕事があったらもってくるから! マイラさんもまた」
「あぅあぅ~」
「ありがとうございました。この出会いに感謝を……」
普段の仏頂面とは違う一面に、顔を赤らめていたマイラが、慌てて祈りのポーズを取りトランス達を見送る。大げさだと初めにいったものの、マイラは後ろ姿が見えなくなるまで祈り続ける。苦笑しつつも、トランス達は依頼完了の報告のためギルドへと向かった。
トランス達がギルドへ入ると、やや閑散としている。子供達がいるのでやや早めに仕事を切り上げるため、まだ報告などに戻ってくる冒険者達は少ないようだった。受付に目をやると、いつものシープはおらず、暇そうにした赤毛の受付嬢が目に入る。暇な時間なのはわかっているようで、他の受付は休憩中なのか姿が見えない。なんとなく初めに応対したシープのところでばかり受付をしてもらっていたが、いないならいないでしょうがないと、トランスはそちらへと足を向けた。
「依頼達成の報告をしたい」
「ん? あ、子連れ騎士!」
「む……」
指を指しながら巷で囁かれる二つ名で呼ばれたことに、トランスは思わず表情を顰める。兜を普段は被らないようにしているのもあり、その表情はラミを大いに慌てさせた。
「う、わぁぁ! すんません。思わず……。依頼の報告ね……。はいっ!」
「気を悪くしたならすまない。慣れないだけだ」
あまりの慌てぶりに返って面食らったトランスは、苦笑しつつ依頼料を受け取った。対応の不備はともかく、手続きに関しては手早く確実であり問題はないようなのはさすがといったところだろう。
「そういえば、珍しくシープがいないな」
「……やっぱり胸?」
「ぬ?」
「……ごめん冗談。マスターが目処立ちそうみたいよ。よかったね」
なんとなく聞いただけなのだが、しょぼくれた表情で自身の胸に手を添えながら、上目遣いでトランスを見上げるラミ。予想外の質問による返事に疑問符を浮かべていると、舌を出しながら情報を教えてくれた。このような気軽なやりとりが、冒険者達への人気の秘密なのだろう。相当暇をしていたのか、サラに今後のことを訊ねたり、孤児院の子供を引き連れて依頼がちゃんとこなせているかなど、世間話に華を咲かせる。そんな中、ラミがふと後ろに視線を向けたので、自然と会話が途切れた。
「あら? 珍しい顔がいるじゃない?」
不意に後ろから声が聞こえトランスが振り向く。そこには薄青色の腰まで髪を伸ばした女性が立っていた。魔石のはめ込まれた長杖を持ち、露出の多い服装から魔法使いのようだ。ただしサラよりも露出が多く、目のやり場に困ることから、自分自身のプロポーションにも自信があることが窺える。目尻は高く気が強そうな女性の視線の先には、声を掛けられたであろうサラの背中を射抜くように見ている。なぜ背中かと言えば、サラは身体を強張らせ、振り向くことが出来なかったのだ。その異様な様子にトランスは自然とその視線を遮るようにして、サラとその女性の間に割り込んだ。
「すまない。今依頼を終えたところで、疲れているんだ。知り合いだろうか?」
「ふ~ん……」
予想外のところからの返事に、女性は少したじろぐが、すぐに品定めをするかのようにじろじろとトランスを見る。足先からゆっくりと舐めるように視線が上へとあがっていく。
「うー!」
「えっ?! 子供?」
足元から視線が顔へ向かった際、サラをいじめるなとでも言わんばかりにリーゼが声をあげ睨みつける。まさか子供を背負っているとは思わず、女性は驚き声を上げた。
「おいおいシュニ、急に走り出してどうしたんだよ? ……ってサラちゃんじゃないか? 僕だよ! レビンだ! 覚えてる?」
軽薄そうな声が聞こえ、ウェーブがかった金髪の男性がシュニと呼ばれた女性の肩を掴む。トランスから見ても美男子であり、軽装ではあるが物腰からして相当な実力者であることがわかる。さすがにこのまま返事をしない訳にはいかないと思ったのか、顔は青ざめたままであるが、冷や汗をかきながらサラはゆっくりと振り返った。
「お久しぶりです……。シュニさん、レビンさん」
その声は震えており、普段のサラからは考えられない程悲壮感の溢れた弱弱しい声だった。
「はんっ、相変わらず辛気臭い顔ね。【鈍魔】ちゃん」
シュニが吐き捨てるように声を発すると、サラは俯き、拳を握りしめた。




