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亡国の騎士  作者: 黒夢


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いざ王都へ

 嬉しそうにイヤリングをつけたサラと、髪飾りを自慢げに見せつけるリーゼ。ロブはニコニコと笑顔で、ベックはニヤニヤしながらトランスを茶化すという場面があったが、特に問題なくアーキナを一行は旅立った。


 商業都市と言われるだけのことはあり、馬車の出入りは多い。特に王都へと向かう方面に関しては街道がしっかりしており、チラホラと冒険者と思われる護衛を伴った馬車が次々と向かっていく。それぞれが干渉しすぎないように距離を保ちながら、順調に王都への道を進んでいた。


「順調だな」

「はぅ……」


 あまりに順調な道のりに、周囲に目を配りながらも思わずトランスが呟く。散発的にゴブリンやホーンラビットなどの魔物が現れることがあるが、自分たちがでるまでもなく他の商隊や馬車に雇われたと思われる護衛にすぐ撃破されているからだ。リーゼに至ってはトランスの背で居眠りをしている。


「あはは、まぁ王都付近は定期的に魔物の駆除も行われていますしね。冒険者だけでなく騎士や兵士が出張ることもありますから」

「盗賊だってさすがにこれだけ通りがあるとでやしねぇよ。すぐに見つかって討伐されて終わりだからな」

「王都から離れる程治安維持が困難になりますから、魔物や盗賊の被害は多いですよね」


 トランスの呟きに答えるように、三者三様の言葉が返ってくる。その情報を加味して疑問に思ったことが自然とトランスの口から漏れでた。


「ふむ……、ならあまり冒険者には旨味がないのではないか?」

「……あぅ!」


 騎士や兵士がいるようだし、治安も良ければ魔物の発生も多くない様子に、首を傾げる。その動きに身体がずれてしまったリーゼは、もぞもぞと登り直して姿勢を直した。傾げた顔をぐいぐいと引っ張っている。


「あー、それはですね」

「ダンジョンがあるんだよ」

「ギルドの総本山もありますしね~」


 ロブが言いかけたところを、ベックとサラが被せるように話してしまいロブが苦笑する。気にした様子なく、付け加えるように言葉をつづけた。


「王都なだけあって貴族や小国のお偉い様の出入りもありますしね。場所は遠かったりしますけど、重要な依頼などはギルドの総本山で受注されることも多いんです。主に正式な二つ名はここでつけられます。銀から上になるための試験はここでしか受けられません」

「二つ名というのは?」

「実力のある冒険者に特徴などを踏まえてつけられるあだ名みたいなものですね。本人が個人的に吹聴したものは認められず、正式にギルドがつける実力の証みたいなものです」


 聞き覚えのない言葉にトランスは聞き返すと、ギルド職員でもあるサラがスラスラと答えを返す。話の流れ的に乗ってくるであろうと思っていたベックが、バツの悪そうな顔をしていることに気付き視線を向け、問いかけた。


「ベックにもあるのか?」

「えっ! いや……たいしたもんじゃねぇよ」

「まぁまぁ、二つ名は囁かれるもので言いまわるものではないですから」

「そうゆうものか……?」


 慌てた様子のベックに、ロブが助け舟を出す。興味本位で聞いたことであったので、トランスはいずれ聞く機会もあるだろうと話題を変えることにした。


「ダンジョンというものは一体なんなんだ?」

「な、なんだトランスさんなんもしらねぇんだな。ダンジョンっていうのは魔物の巣みてぇなもんだよ。潜れば潜るほど強い魔物がいて、強力な装備や魔法具なんかが手に入るんだぜ。一攫千金を目指す冒険者が迷宮目当てにきたりするぐらいだからな」

「ですが、放置すると魔物が大氾濫を起こしてしまったという歴史もあります。そうならないように冒険者に依頼を出して駆逐してもらっているというのが現状ですね。騎士や兵士は治安維持や有事の際の要員ですから。もちろん、公務として潜っている方々もいますが、魔物退治に関しては冒険者のほうが一日の長がありますからね」


 これ幸いとベックが饒舌にダンジョンについて語り出す。わかりやすい反応に思わず兜の中で笑みを浮かべてしまうが、良い面を並べ立てたベックの言に、サラが注意点を付け足した。


「そんな危険な物潰してしまえないのか?」

「リスクやデメリットに対してメリットが勝るということもありますが、単純に踏破できないということもありますね。明らかに常軌を逸した魔物が深部には跋扈しているそうですから。埋めてもしばらくしたら入り口が復活していたという話もあり、対処療法しかないというのが現実のようです」

「なるほど」


 トランスは、強力な魔物に、武具や魔法具、まるで強者を誘引しているかのような得体の知れなさを感じてやまない。しかし、その考えは、ロブの声にて霧散するのだった。


「ほら、見えてきましたよ。あれが王都ホワイトクラウン。この地域最大の都市です」

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