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亡国の騎士  作者: 黒夢


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予期せぬ別れ

 アーキナの宿を立ち、一行はビカの村へと戻っていた。幸いロブの馬はチャンバーの屋敷にいたようで、チャンバーの影響下から離れると、ベックを見つけ向こうから走り寄ってきたのだった。商人達と揉めるかとも思ったが、快く馬の返却は行われ、錬金術の材料も格安で購入することができた。


「まぁ、打算ありきだろうけどな。お互いに利用し合うぐらいが丁度いいんだろうぜ」


 ベック曰く、チャンバーの戦力に対抗出来るほどの一行であれば、繋ぎがあることを易とみているのだろうとのことだった。難しいことはベックに任せ、トランスとリーゼはひたすら頷いている間に色々と終わり、ビカの村に至る。


「シーレ! ただいま!」

「おかえりなさい! あなた!」

「おかあさーん!」


 道中目が覚めたフラスは、ロッシーがいないことを知ると、しばらく震えていたり、泣いていたりと不安定だったが、リーゼが慰めることで笑顔を取り戻していた。しかし、家に帰ると母親に抱き着いて泣いていることから、だいぶ無理しているだろうことが窺えた。感動の再会に一行が涙していると、奥からロブがひょっこりと顔を出す。


「皆さんおかえりなさい! 無事で何よりでした」

「おう、ただいま」

「ただいまもどりました!」

「あぁ、もどった」

「あぅ!」

「あー……、ただいま」


 各々が挨拶をする中、歯切れの悪いトニーの言葉に、全員が首を傾げる。誰ともなく話しかけようとしていると、その空気はシーレの言葉に遮られた。


「今日は腕によりをかけてごちそうします! ……ベックさん手伝って頂いても?」

「ん? 別にいいけどよ?」

「よかった……。正直ベックさん以上の料理を作れる気がしなくて……」

「ベックさんの料理か! 楽しみだぜ! なっ? トランス?」

「…うん? あぁ、疲れているところ悪いな、ベック」

「いいってことよ! 作ることは嫌いじゃねぇからな」

「私は、祖父の資料関係をもう一度見直してみます。フラス、一緒に行くか?」

「……うん!」


 台所にベックとシーレが向かい、リトスはフラスを連れて錬金術の部屋へと向かった。どうやらリトスは、フラスを錬金術から遠ざけることをやめたらしい。手を繋ぎながら歩く姿は、以前よりずっと家族らしいと思えた。


「あー、楽しみだなぁ。ちょっと村でもぶらぶらして時間つぶしてくるわ」


 トニーはわざとらしく声を出しながら、外へとさっさと出て行ってしまった。


「何かありましたか?」

「うーん、何でしょう?」

「……男の意地……か」


 ロブとサラは顔を見合わせ、トランスの発言に首を傾げていた。


「そうですか……」

「いやはや、長く行商をやっていますが、そんなことが……」


 トランス達は食卓を囲み、食事をしながら事の顛末を知らせる。フラスに聞かせることもリトスの承諾済みだ。幼いせいか、首を傾げるのみで、今は食事のほうに夢中である。


「ロッシーには感謝ですね。夫と娘を……、皆さんを守ってくれたんですから」

「あぁ、すげぇ奴だよ……ほんとに」


 ロッシーという名前にフラスがぴくりと反応するが、目元に涙を溜め、俯きシチューを頬張る。彼女は彼女なりに向き合い、乗り越えようとしているのだろう。意外だったのは、真っ先にロッシーのことに反応したのはトニーだった。


「しかし、リトスさんとフラスちゃんが、人工生命体ホムンクルスと聞いてびっくりしないんですね?」


 ロブが遠慮なしに疑問を投げかけるが、シーレはさも当然といったように答えた。


「私の夫と娘ということに変わりはありませんから」

「ごちそうさまです」

「いいなぁ~……」

「あぅあぅ!」


 サラとリーゼが目を輝かせ夫婦を見る。惚気とも思える話に当てられながらも、和気あいあいと食事は続き、終わりを迎える。すると、意を決したように、トニーがリトスに頭を下げた。


「リトスさん! 俺を弟子にしてくれ!」

「えぇ!?」


 突然のことに全員が目を丸くして驚く。顔を上げたトニーの表情は、冗談を言っているような顔ではなかった。


「ベックさんに教わった誘導矢ホーミングアローは役に立った。だけど、それはリトスさんの錬金薬あってこそだ。以前はゴブリンに、今回に至ってはまるで歯が立たなかった」


 クーゲルの完成された錬金術とは違い、チャフの中で自由自在に瓶を割る事が出来ないリトスに代わり、触れたものをマーキングし、矢を誘導するという特技をトニーは使った。ベックの冒険者として切り札を持つべきという言葉に感化され身に着けた特技は、あっさりと現実に打ち砕かれた。挙句、年老いたロバに命を救われ、何も出来なかった自分自身を許すことが出来なかったのだろう。


「それにだ。俺はリトスさん達のことを守りたい。このまんまじゃ、ロッシーに顔向けできねぇ!」

「いや……、私達のためにトニーさんにそこまでしていただく訳には……」


 材料がなく、作ることもできなかった時と違い、フラスが錬金薬を作る事ができるようになった以上、防衛に関しては大丈夫なのではないかとトランス達が疑問に思う。それを見透かしたかのように、トニーはリトスに声をかけた。


「リトスさんは、さっきなんで奥さんとすぐに離れたんだ?」

「え?」

「あの場面だったら。しばらく抱きしめ合ってもおかしくないと思うんだよな」


 何を言っているんだ? と全員が顔を見合わせる。さらに、その時の光景を思い浮かべ、違和感を覚え、その正体に気付く。


「だって、子供ができちゃうじゃないですか?」


 顔を赤らめて、リトスとシーレが声をハモらせる姿に、トニーはため息をつき、フラスとリーゼ以外は頭を押さえた。たしかに何故か軽くハグをしたあと、慌てたように離れていたなと。てっきりフラスに譲っていたと思っていた。リトス家では10秒ルールと教わっていたらしい。


 このままではまた色々と大変な目に合う。一行は色々と葛藤もあったものの、トニーの提案を受け入れるのだった。

喜び勇んでフラスを二人の子供だと紹介し、?顔で見合わせているリトスとシーレに向かって一言


「じゅ……10秒以上男女が抱き合うと子供が生まれるんじゃ!」冷や汗ダラダラ byクーゲル

「な、なんだってぇー!」 byリトス&シーレ  

10秒ルール爆誕である。

クーゲルさんぇ……

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