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亡国の騎士  作者: 黒夢
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膠着と絶望

休みがなくてだいぶ空いてしまいました。申し訳ない。

世が連休になると連勤になるのはなんででしょう?

「きりがない……!」


 もう何度目になるかもわからない。纏わりつくように周囲を取り囲むスケルトンを、トランスは薙ぎ払う。いつの間にかバルトロの姿が見えない程に引き離されてしまっていた。骨というのはそう簡単に剣で斬ることは出来ない。ましてや骨だけであり体重のない身体は、斬ったり砕かれたりするまえに形を崩し吹き飛んでしまう。止めをさそうにも割り込むようにスケルトンが行く手を阻むのだ。


「はぁぁぁ!――ぐっ!」

「オオ……オォォォ……」


 ましてや、スケルトン達をある程度打ち倒すと、示し合わせたかのようにロメオとメロのアンデットが妨害に参加する。軽装であるメロの腕や足を数回斬り飛ばしたものの、重装備で隙のないロメオがすぐにカバーに入り組み付かれる。こちらがほぼ零距離で剣がまともに触れない位置で、小盾に刃物のようなものがついた武器でガンガンと鎧の隙間を狙われ、身体をよじって致命傷を避けざると得ない。その対応に追われていると、復帰したメロにメイスで関節を狙われてしまう。斬撃に耐性の強い鎧であっても、その打撃はトランスに確実にダメージを蓄積していった。


「衝――くっ、またか……」

「カタカタカタカタカタ……」


 戦い慣れている。トランスは素直にメロのロメオの戦術に舌を巻いた。状況を変えようと衝撃インパクトを放とうとすると、まるで読んでいたかのように離れ、ロメオとメロは復帰したスケルトンの中へと姿を隠す。振り出しに戻った。そういえば状況に動きがないように見えるが、相手はアンデットであり疲れもダメージも残らない。対してトランスは、なんとか隙を見てヒールで治癒するが、すぐにスケルトンの妨害が入り満足な回復も出来ない。徐々に蓄積していく疲労とダメージ、無限ではない魔力の消費、好転しない状況への焦り。明らかに追い詰められていた。


「あちらも変わらず……か」

「うおおおおらあああああ!」


 咆哮とも言える程の声が大気に響き渡り、ちらりとトランスが目を向けたところでは、バラバラになった骨が空中に舞い上がる。もう何度目かもわからない光景に、あれがこの状況を変える一手にはなりえないことを否が応でも認めざるを得ない。メロとロメオがバルトロの相手であればとっくに勝負が決まっていたことを考えると、相性を考えた上で分断され、合流を妨げられていることは明らかであった。今しばらくはこの状態が膠着するかに思えたが、バルトロの様子が明らかに変化し始める。


「違う! 俺はそんなこと考えちゃいねぇ! 違うんだ! 俺は……俺はぁ! うあああああ!」

「バルトロ! 疾走スプリント! くそっ! どけぇ!」

「オオオ……オオ……」


 錯乱したかのようなバルトロの声に、無理やりでも突破を図ろうとするが、すかさず機先を制される。魔力を帯びた踏み込みは、遮るかのように立ちふさがったロメオに妨害され、抱え込むように身体を抑えつけられてしまった。鎧と鎧のぶつかりあいに甲高い音が響き渡り、両の足は地面についたまま後方へと下がるが、ロメオを支えるようにメロが抑え、トランスの願いは叶わない。しかし、今までの動きから逸脱したことで、スケルトン達の囲みからは多少突出した。そのおかげで、今まで姿の見えなかったバルトロの姿がトランスの視界へと入っていた。


「うああああ! あああああ! がああああ!」

「バルトロ、しっかりしろ!」


 憔悴しきったような顔で、斧をめちゃくちゃに振り回すバルトロの姿に、トランスは大声で声をかけるが、まるで耳に入った様子がない。その姿に、トランスは意を決し突破を図る。


衝撃インパクト――がはっ……」


 密着状態からの衝撃は、ロメオとメロだけでなくトランス自身にも反動を与える。合流を防ぐために抑えていたため、離れる間もなくその衝撃を受けたロメオは、思わず手を放した。


「――疾走ぉぉぉぉ(スプリント)!」


 間髪入れず疾走を用いて、バルトロを攫うかのように飛び掛かり、地面を転がりながらスケルトンの包囲網を抜けきった。


「はぁ……はぁ……がはっ、なんとか……切り抜けたか」


 横たわるバルトロは身体中傷だらけではあるが、荒い呼吸をしたまま気を失っている。元とはいえ白金級であるバルトロがここまで追い込まれた状況に困惑しながら、ゆっくりと骸骨の群れを率いて歩いてくる三体のアンデットを睨みつけた。


『さて、いい加減そろそろ不味いかな』

「……なんだ?」


 視線はアンデットに向けつつ、頭の中に響く聞き覚えのある声にぴくりとトランスは反応する。


『思った以上に状況が悪くなってるみたいだからね。ここからは助力させてもらうよ。ってちょっと、触れてるぐらいでそんな暴れないでくれないかな』

『あぅぅ! あーうー!』


 絶望とも思える状況で頭に響いてきたのは、賢者と呼ばれるエルフと、いつも背を守ってくれていた戦友の声だった。

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