表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スペルドキャッスルの雪宴  作者: RIKO(リコ)
第五章 名乗りの時
53/85

9.リンナイ玉砕

 ― これは雪と氷に彩られた魔法の国の支配権をめぐる四つ巴の戦いである ―


 参戦者は、謎の館長と、魔法大皇帝マジックエンペラーこと相良京志郎、間違って魔法の国に召喚された白魔女、そして、至上最高の大魔法使いと謳われる灰色猫グレイ・マウザー


 *  *

 

「ここで仕留める。何としても」


 北の丘の城の上空では、灰翼の白鹿(ベルリン)に騎乗した灰色猫が虎視眈々と白魔女の首を獲るタイミングを狙っていた。

 標的は、"謎の館長の声"によって中空に浮いたまま動きを止められている。だが、灰色猫は、五感を最大限に研ぎ澄ませて警戒はゆるめない。

 

「俺と白魔女が、”魔法 ”対” 魔法”で真っ向、勝負したら、おそらく、この国は今の姿のままじゃいられない。だから、あのいけ好かない女が固まってるうちに、とっとと斬っちまわないと」


 白魔女の魔力は強大だ。無防備に近づくのは危険だ。


 その瞬間、厚雲から飛んできた氷の針が矢継ぎ早に顔面に吹き付けてきた。灰色猫はそれを身を伏せてかわすと灰翼の白鹿(ベルリン)に激を飛ばした。


ひるむな、 ベルリン! 前進だ! 風切羽を低く構えて、風の隙間をすりぬけろ!」

 

 自らも身を低くしながら、灰色猫は流星刀ミーティアソードを目前に構えた。漆黒の夜のごとき瞳で、白魔女の首を確実に斬る間合いを測り始める。


 ”ええい、忌々しい。あの怪しい声の主も、チビの魔法使いも!!”


 白魔女の左の瞳が紅蓮の色に燃えている。

 灰色猫の脳裏に電流のような閃きが走った。


 白魔女の”右の瞳”に色がない。

 右目が潰れている……のか。ってことは、そこが死角か。


「ベルリンっ、右回だっ、その位置から勝負を決める!」


 灰翼をぐぃんと撓らせてベルリンが進行方向を変える。突然、視界から消えた灰色猫に、虚をつかれた白魔女。

 ……が、巨大な猫のような影が左側に見えた時、白魔女の襟元を銀の光が通り過ぎていった。


 流星刀の一閃が白魔女の首を一刀両断にする。”氷の首”が宙を舞った。にもかかわらず、


「くそっ、あいつは魔女じゃなくて、化け物かっ!」


 白魔女の首はくるくると回転しながら、元の体に戻り、けたたましい声をあげて灰色の魔法使い(グレイ・マウザー)をあざ笑った。


「ほほほほ……有り難いこと。お前に首を斬られたおかげで、すっきりした。あの声の拘束もきれいさっぱり、断ち切れたわ!」


 白魔女が口元が歪に上がっている。ぞくりと、灰色猫の背筋に悪寒が走った瞬間、空がぴしりと稲光った。間をおかず、怒号のような雷鳴の音が響いてきた。


「ヤバいっ、ベルリン、白魔女から離れろっ、雷が落ちてくる!」


 稲光と雷鳴の間隔が短いっ。もう防御魔法も間に合わないっ。


 天から地を貫くような電撃が灰色猫の上に落ちてくる。


「うわあああああっ!」


 落雷の轟音と、何か硬質のモノが砕ける破壊音。

 耳が裂けそうな”音”と、目玉が焼かれてしまいそうな”光”の洪水の中で、灰色猫は自分の上に覆いかぶさった()()が崩れてゆく様を見た。

 白鹿の姿から人型に变化したリンナイが、灰色猫を落雷から守ってくれたのだ。

 リンナイの体が人型から元のバスタブに戻ると、焼けてボロボロの瓦礫になったホーロー材が風に流れた。残った欠片は灰色猫の顔の上にぱらぱらと落ちてきた。   


「リンナイっ、お前、俺をかばって……」


 散りゆくバスタブが、最後の言葉を残して落ちてゆく。


 ”ベルベット、後は任せた。我が主を守ってくれ”


 ”OK、リンナイ。あなたの心意気、無駄にはしない”


 あるじを背中から抱えた灰色の翼(ベルベット)が強く羽ばたく。

 リンナイが残した金の猫足が、雪上できらきらと輝いている。


「畜生っ、このまま、負けてたまるか!流星刀っ、 Alteration(变化)、弓矢になれ!」


 灰色猫の手の中で、一対の弓矢に变化した流星刀ミーティアソード

 星の流れのように煌く銀の弓成り。そして、矢に輝く白銀のやじり。’


「食らえっ、白魔女っ、リンナイの敵を討ってやる!」


 灰色猫が射った矢が、白魔女の左目に一直線に飛んでゆく。


「ぎゃああああああっ!!! おのれっ、灰色猫っ!」

 

 見える左目を射抜かれた白魔女が絶叫をあげる。だが同時に、白魔女のベルスリープの袖から吹き出された鋭利な氷柱つららが、灰色猫の右肩に飛んできた。それは、彼の右腕を容赦なくえぐり取った。

 激しい痛みが集中力を削いでゆく。


「ぐあっっ、くそっ……、ベルベットへ魔力を送れねぇっ! 」


 左目を潰された白魔女と、右腕を失った灰色猫が、血飛沫を散らせながら落ちてゆく。

 白魔女は雪上でぴくりとも動かない。

 少し離れた場所に倒れた灰色猫も身動きがとれず、顔だけを上げて、城下町の屋根に沸き上がる紅蓮の炎を見つめていた。

 北の丘の城は半壊し、城下町も、このまま放置すれば、やがては全部の家々が燃え尽きてしまうだろう。灰色猫は傍らに落ちたボロ布のようになってしまったマントを肩の傷口にあてがい、小さく呟く。


 魔法の国はもう俺の手の中には、ないみたいだ。


「ユリカ……」


 おい、こんな切羽詰まった時に、俺はいったい何を口走ってんだよ。……でも、その響きがやけに……懐かしい。



 それを大切に想うのは、

 今は、


 いけない事なのかな……と。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
この小説を気に入ってもらえたら、クリックお願いします
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ