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スペルドキャッスルの雪宴  作者: RIKO(リコ)
第四章 崩壊寸前、ジオラマの国
35/85

3.白魔女と氷柱の塔 

「ミラージュ、どこにおる!」


雪の大地に轟く、鼓膜が破れそうな金切り声の絶叫。

 白魔女に名指しされたミラージュは、びくりと雪の体をこおばらせた。その姿は朝を迎えて、部下共々、雪だるまに戻ってしまっている。


「お呼びか。女王陛下ユアマジェスティ。だが、今、俺は最前線で敵を撃退の真っ最中だ。指揮官である俺が部下の近衛兵たちを置いて現場を離れるわけにはゆかない」


 ミラージュの返事は、白魔女とはうって変わって淡々としていた。その声は白魔女の元へ即座に届く。たとえ、二人がどんなに離れていても。それを彼がどんなに忌み嫌おうとも。

 だが、


 ”笑止、笑止。そんなちっぽけな雪だるま兵に何ができる”


 嘲るような笑い声が耳元で聞こえた。

 ……と、その時、ミラージュの部下たちが一斉に姿を消してしまったのだ。


「みんな……どこへ行った?」


 沈黙が静寂と重なり、その静けさが、奇妙な不安をミラージュの心の中に掻き立てる。

 わずかに空気が震えた。

 それは小さな悲鳴のようにも聞こえた。

 きらりと、きらり、きらりと空白の場所がいくつも輝いた。



「あああっ……! これはっ」


 輝きから飛び出した光の線が重なり合い、空に立ち登った。それらは、見る見るうちに鋭利な先端を持った三角錐さんかくすいの塔に成長する。

 

氷柱つららの塔!?」


 そう。それは氷を重なり合わせ、天上からの攻撃者から身を護るための最強の砦なのだ。


 ミラージュは、巨大な塔の迫力に圧倒され、畏れ慄きながら後ずさる。


 何と残酷な……雪だるまのままなら、夜には人の姿に戻ることが出来たのに。

 溶かされて再構築されて、混ざり合わされた彼らでは、もうそんな望みも叶わない。


 氷柱つららどころか……人柱ひとばしら


 近衛兵長ミラージュは、自分自身の姿が、雪だるまから人に戻っていることに気づかずに絶叫した。


「白魔女っ、お前っ、何て罰当たりなことをしやがるっ! 俺の部下を材料にして、こんな氷柱の塔を造るだなんてっ!!」

 

*  *


「京志郎っ、止めろぉぉお!!!」


 破壊行動を続ける巨大な少年に向かって、シーディは声を張り上げた。


 やっと、ユリカとも出会えて、地下牢から出てこれたと思ったら、今度は魔法大皇帝マジックエンペラー様の襲来かいっ。

 おまけに、北の城はぶっ壊されて、代わりに不気味な氷の塔が、建っちまってるし……。


 シーディは背中にへばりついている少女をチラ見する。


「あれって、あれって、京ちゃん?! でもっ、デカい、デカすぎるわっ!」


 小柄な魔法使いはダメ元で、魔法大皇帝の()()()()()に頼んでみた。


「あのさ……ユリカってあいつの姉なんだろ。なら、ちょっと言ってみてくんない? ”魔法の国を壊すなよ”って」

「無理……京ちゃんは私の言うことなんて聞かないもん」

「だろうな」


 だが、図書館で俺が会った京志郎は、ことあるごとに、姉ちゃん、姉ちゃんって、ちょっとシスコン気味のところがあるじゃないか。

 ユリカを通せば、説得の余地はまだあるかも……。


 ここは、持てる限りの知恵を使って窮地を乗り越える時だ。

 シーディは後ろを付いてきた魔法のバスタブに命令する。


「リンナイ、もう一回、白鹿に変身だ! 」


 瞬時に白鹿の姿をとったリンナイの背に、シーディはユリカと一緒に、飛び乗った。

 そして、彼が手にした一本鞭に、


「ベルベット、変化っ、そして、リンナイと合体! 俺たち、これから空を飛ぶぞ!」


 そのとたんに、ベルベットが一本鞭の姿から巨大な灰色の翼に変身したのだ。そして、それは、白鹿のリンナイと合体した。

 

 白い鹿のボディに巨大な翼を持った魔法の動物ノリモノが空を飛ぶ。

 

 目指す交渉先は、天空の巨人。

 魔法大皇帝マジックエンペラーこと、


 相良京志郎。


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