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クロニクル

体育祭にまつわる出来事(番外編)泥棒さんと正直者の選択権

作者: MV E.Satow maru

 両親と一緒にお姉ちゃんの高校の体育祭を見に行った。お父さんとお母さんがたっぷりお弁当を作ってくれていた。お父さんの作るおにぎりは梅肉とか入れるだけのシンプルなものだけど外で食べるととっても美味しい。お母さんは何を作ろうかなあと言っていたのでフルーツ・サンドイッチが食べたいと言って作って貰った。フルーツやジャムをふんだんに使っていてお父さんとお母さんが飲むコーヒーにも合うからいいかなって。


 お姉ちゃんもお弁当をクラスの人と食べた後で私達の所にやってきた。


「あ、フルーツ・サンドイッチ作って貰ったんだ。私も小学校の運動会でこれ作ってもらうの好きだったなあ」


 なんていいながら一つパクついてお母さん謹製コーヒーを一口飲んだ。腕時計を見ると「あっ」と叫んだ。


「あ、秋山さんに言われていた集合時間か。ちょっと用事があるから行くね」

「次、何か出るのかい?」


 お父さんがすかさずお姉ちゃんに聞いた。


「あー。競技には出ないから気にしないで!」


 そう言うとお姉ちゃんは体育館の方へ走っていった。その様子を見ていたお母さんが一言。


「あー。ミフユは何か隠してるかな。ミアキ、何かあったら写真撮りに行ってきたらきっと面白いもの見られるんじゃないかな」


そう言ってお父さんと一緒に笑っていた。


 お昼過ぎ、最初の競技は運動部リレー。忍者とか「バードさん」の英国婦人コスの人とかいろんな格好の高校生の人が一生懸命走っていて面白かった。そして競技が終わった後、姉が少年剣士の格好で朝礼台に上がって来ておどろいた。


「お姉ちゃん、コスプレしてる!ちょっと写真撮ってくる!」

「知らない人について行ったりとかしないように。スマフォ持ってるね?」


 お父さんは心配性。


「うん。大丈夫。スマフォもほら!」


 そう言って手中にあるのを見せると両親に手を振って駆け出した。


「ああいうのが嫌いな真面目な姉だと固く信じていたのに」なーんて事はなくとってもあこがれる。観客席で近づけるところまで行って「表彰状 運動部リレー第一位、」とか言って占い師か魔女の格好をしている人にお姉ちゃんが表彰状を渡している所をスマフォでパシャパシャ撮った。

お姉ちゃん、カッコいいし似合ってる。なんか私までうれしくなる。


 撮影が終わったので両親のところに戻ろうかと引き返して少し歩いていたら落とし物を見つけてしまった。それは財布に見えた。どうしようかなと思っていたら、通りかかりの男性が周りをキョロキョロ見回した後に拾って立ち去っていった。


 でも私はバッチリ見ていた。写真も撮っておけば良かった。


「事件だ」


 すぐその人の後をつけようと探したけどどこかに消えてしまった。うーんと思いつつ姉のコスプレをからかおうなんてグッド・アイデアを思いついて頭を切替えた。

 次の競技が始まって「ニンゲンバンジーヒノエウマ」とかいうカッコいい曲がかかっていた。お父さんに無理矢理連れて行かれたお子ちゃま向けアニメ映画の劇中曲。お父さんのお子ちゃま映画好きには私は困ってるけど、この映画だけは例外。とっても主人公の人が良かったのだ。なんて事を考えてる場合じゃない、姉を探さなくっちゃ。よく見たら朝礼台近くのテントの所に少年剣士がいたのでそちらの裏手に行ってみた。「生徒自治会長」とかプレートの置かれた席に姉は座っていた。


「ミアキ!」


 姉がこちらへ来るようにと手招きしていた。小走りで姉の元へ行った。


「ねえ、お姉ちゃん、それは誰のコスプレ?」

「ミアキ。誤解を招く発言は止めて。これは扮装だから。断じてコスプレじゃないし。……あ、誰の扮装なのかは私も知らない。友達にだまされて着付け係に着させられただけだからね」

「ふーん。いい訳しなくても良いのに。とってもカッコいいし」


 ふと目をやるとお隣の偉い感じの人達がいるテントにさっきの男性が一人だけでいたのでお姉ちゃんに小声で聞いた。


「お姉ちゃん。あの人は誰?」

「ん?あ、教頭先生だけどどうかした?」

「ふーん。ちょっとついてきて」


 ミアキは教頭先生のところに駆け寄ると叫んだ。


「おじさん、さっき拾ってくれたお財布の落とし物、誰のものか分かりましたか?」


 教頭先生の顔は一瞬でいろんな表情が浮かんでは消えたけど、一番強かったのはおどろき?


「え、ええええええとだなあ。届けたばかりだから分かってないよ」

「私が拾って届けようと思っていたらおじさんが拾ったのを見たので。先越されてくやしいです。学校の人だったんですね」

「こら、ミアキ。いきなり先生に話しかけない。すいません。教頭先生。さ、行こう」


 私は姉に手を引かれてテントを離れた。


「ミアキ、どういうことか説明して」

「えーと。あの先生が泥棒さんになるか、それとも正直者でいるか決める機会をあげただけ」

「……落とし物ねえ。だいたいは分かったけどいきなりああいう風に声掛ける前に相談して欲しいな。危ない人だったらどうするのよ」

「先生なら大丈夫かなあって思ったから」


 そう言っていると教頭先生が落とし物を担当の人に渡しているのが見えたのだった。

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