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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第四章 1節   <12話>
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<12話>  「邪神と主神と再会と」   =Bパート=


王都フリードは、外側に更に街があり、フリズスというのだそうだ。

私たちはそのフリズスに、いつの間にか入っていた。

街道沿いは長く商店で埋まり、そして城門も検問もない。

どこからがフリズスであるのか、曖昧なのだ。


「これ程の規模になると、さすがに魔獣どころか、野生動物すら寄って来ないのでしょうね」


その疑問にはエミアスが解答してくれた。


なんでも、フリズスは年を追う毎に拡張しているのだとか。

200年以上前はフリードの城郭周りの露天商という程度だった。

そして100年前には現在のフリズスがほぼ出来ていたそうだ。

その後は街道沿いに街が広がり、魔物対策として商人の組合ギルド連合が取り仕切り、街道沿いの商店の外側にへいが作られたのだとか。

そして現在は、塀の更に外側にも商店が出来、何層にもなり複雑に入り組んでいるのだとか。


「フリズスの外側は、中央通りから外れたら迷路なんだねー。私、入ったら出てこられない自信があるわ」


「お姉様は転移魔法で直ぐに戻れますでしょ」


「あー。なんかさっきから、イリーナってばー。私をイジメるんですよ。エミアスお母様マザー


「え、そこで私ですか……」

エミアスは困った顔を浮かべる。


「うふふ」

「あはぁ」


「もう、お二人とも仲が宜しい事で」

エミアスの困った顔は、笑顔へと変わっていた。



私たちはフリズスの街での待ち合わせをしていた。

エミアスが予め、フリードの聖母教会へと連絡を入れており、迎えが来る手はずとなっていた。

待ち合わせ場所である組合連合の施設へとおもむくと、既に聖母教の純白な馬車が控えていた。


(うわ。これまた王子様が出てきそうな馬車ね。乗るのはちょっと恥ずかしい)


馬車は曲線が目立つデザインでできていた。

もしかすると造船技術が応用されているのかも知れない。


修道女とおぼしき者が、こちらの馬車に気が付き姿を現し、開口した。

「ご無沙汰しております。大司教エミアス様」


「え」

(大司教!? エミアスが?)


司祭プリーストだと思っていたら司教ビショップ、それも大司教だ(アーチビショップ)ったのだ。

(それってめちゃくちゃ偉いんじゃ……。ゲームの世界でもアービショップといえば上位職だし。全てを浄化し癒やす的な?)


エミアスは馬車を停め、挨拶を交わす。

そして車上から、ねぎらいの言葉を掛ける。

「出迎え御苦労。ここまで出迎えてくれた事、感謝します」


「勿体なきお言葉……」

修道女はエミアスに敬意を払う。


そしてエミアスは言葉を続ける。

「皆、聖女イリーナ様の役に立つ事が出来たのです。誇りに思うが良いでしょう」


「聖女イリーナ様!? あの、その、あの、聖女イリーナ様ですか!!」


「ええ。そうです。100年前と変わらぬお姿で、今も我々……いえ、人々の為に尽力じんりょくたまわっております」


「まぁ、何と」


(うわー。出づらいなぁ……)


「では、後ろに御座おわす清きそらの如き髪の御方が聖女様なのですね!」


「ええ、そうですとも」


イリーナは申し訳なさそうな顔を一瞬だけ私に見せ、そして修道女に聖女然とした姿を見せ、声を掛けた。

つかいの方、おそれいります」


「はッ」

修道女は舗装された地面に両膝を付け、こうべを垂らし、両手を結び聖女であるイリーナに祈りを捧げる。


「どうかおもてを上げください。そして貴女あなたのお顔を拝見させていただけますでしょうか」


「ははッ」

修道女は祈りを捧げたまま、頭を上げる。


イリーナは笑顔で応えた。


(まるで時代劇を見ているみたい……。そう言えば、水戸の徳川光圀も時代的には今だったか。

 確か徳川家康の孫だったはず。RPG終盤の定番、「東の国」が存在してたら、会えたりしてね)


「お姉様? 乗り換えますよ?」


「恐れ入りました。黄門様」


「はい?」


(ていうと、エミアスは助さん? 覚さん?)

「あ、イリーナ、置いていかないで……」


馬車を降りると、イリーナの満面の笑みが出迎えてくれた。


(イリーナは本当に変わったなぁ。これが本来のイリーナなのかも知れない)

私は八英雄エルドルナに、改めて感謝した。


(それからエミアスとの再会により、昔の自我を呼び醒まされているのかも知れない)

私は大司教エミアスにも、改めて感謝した。


「どうなさいましたか? リル様」

エミアスが不思議そうにこちらを見た。


心の中で感謝した直後に本人に見られ、私はちょっとだけ気恥ずかしくなっていた。


「ありがとう、覚さん」


「?」



私たちは馬車を乗り換える。

馬車は一頭の一角獣ユニコーンが引く様だ。

扉を開けると白い馬車の内部は、想像より三倍以上大きかった。

魔術的な処置で空間が歪められ、実際よりも拡張されているのかもしれない。

馬車自体に魔力を感じたからだ。

(ユニコーンの魔力を活用しているのかな?)


馬車の中には、先程とは別のアーシャという修道女が居り、鏡と我々の衣装が用意されていた。


着替えを手伝おうかとアーシャに聞かれたが、丁重にお断りした。


エミアスは白いローブに白い帽子。イリーナは刺繍の施された純白のドレス。

私にもエミアスにうながされ、仕方が無く……そう、これは仕方が無く私は白いロングドレスを着たのだ。


「うぅ。恥ずかしい。この前の学者服といい……」


「よくお似合いですよ、お姉様」


「イリーナの方が可愛いよ。それにそのドレスの刺繍、凄いね! かわいい!」


「ありがとうございます。お姉様……」

そう言うとイリーナは照れてみせた。



Cパートへ つづく

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