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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第一章 1節   <1話>
9/200

<1話>  「GMのお仕事」   =Gパート=


現状では情報が不足していたのであった。



町の入り口で女性から教えてもらった辺りへ着くと、宿屋は直ぐに判った。

グリフォンの型に切り抜かれた木製の大きな看板があったからだ。


グリフォンというのは、巨大な鷲上の半身と、爪の鋭い獅子の下半身をもつ空想上の生物である。

もっとも、この世界には本当に存在しているのかも知れないが。


グリフォン(・・・・・)か、実際にいたら乗ってみたいな」

看板を見つつ店の前で、ぼそりとつぶやき、そして中へと入る。



私が想像していたのは、イギリスのパブ形式だった。

例えば、1階でお酒を飲め、2階が宿屋という具合の。

ところがこの宿屋は、ペンションの様な構造だったのだ。


「すみません、宿を取りたいのですが」


受付には、おばちゃんと中年の男性が居る。

おばちゃんは小太りで筋肉質な容姿で、いかにもって感じだ。

「あいよ。1名だね。冒険者かい?

 前金で30ゴル、更に1泊毎に追加で50Gだよ」


「旅で疲れているので、出来ればお風呂に入りたいのですが。

 浴槽のある部屋は空いていますか?」

パブ形式でなく、ペンション構造の様だったので、聞いてみた。


おばちゃんは、煙たそうな表情をして答える。

「そうすると、最上階の特別客室『グリフォンの爪』しか無いが……。

 前金で一泊200G頂くよ!」


「ええ、それで構いません。

 この町の周辺も観光したいので、3泊でお願いします」

そう伝えると、私は腰についているアイテム袋から600Gを取り出す。

どうやら、持っている貨幣は使える様だ。その場で支払った。


「まいど」

おばちゃんの隣に居た男性がお金を数えた後、やっとこさ口を開く。

2人のやり取りから察するに、どうやら夫ではなく、息子の様だ。


現金が回収されるや、おばちゃんは上機嫌になった。

「お湯は直ぐに浴びるかい? 上まで運ばせるからさ」


私はその変わり様に、あっけにとられる。

「そうですね。では、じきにお願いします」


それを察したのか、おばちゃんも何とも言えない声色で返すのだ。

「あいよう」


息子は指示を受け、直ぐに奥へと立ち去ってしまう。

おばちゃんと私だけになり、重たい雰囲気が二人を包む。


すると、困った顔をした後、おばちゃんの口が動いた。

「それはそうと、お前さん。いい加減その兜を外したらどうだね?

 この町には、あんたを襲えそうな……襲うようなやからは、居ないよ。

 平和な町だからね」


「これは失礼いたしました。ご助言ありがとうございます」

そう告げると、私は兜を外した。

職業柄、個性を消す為にゲーム内では兜を被っているのが当たり前となり過ぎ、装備している事すら忘れていたのだ。


兜を外すと、私のアバターの長い真っ赤な髪が、ほどけ落ちる様にしたたれる。

膝の上まである赤い髪の毛に、よほど驚いたのか、おばちゃんは目を真ん丸くさせ硬直し、それ以上喋らなくなってしまった。



「お待たせいたしました。ご案内いたします」

少女が奥からやって来る。先ほど去った息子の娘であろうか。

おばちゃんによく似た声だが、声には張りがあり圧倒的に若いのだ。

私は案内され、階段を昇って行く。――様々な思いを巡らせてつつ。



(んー。こりゃ、やっぱり異世界ルートの方かな? まいったな……)



Hパートへ つづく

2020.08修正加筆

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