<11話> 「踠きし者」 =Bパート=
二週間ぶりの連載にもかかわらず、数時間で300PVと、
半日で500PV近いアクセスを戴きました事をこの場をもって
御礼申し上げます。 それはとても励みとなりました。
皆様の期待に応えられる様、読んだ事や見た事のない物をお届けできたらと思います。
引き続き誠心誠意執筆していきます!
2019年3月9日 すめらぎ
「そうね、とりあえず火を。火を消しましょう」
「そうっすね!」
私はふと思った。
このエルフはおそらく、イリーナの探していた聖母教司祭のエルフなのではと。
そしていつの間にか、エルドリナが召喚してくれていた光精霊が居ない。
(いつからだ?)
私は思い起こす。
(この村に着いた時からだ!)
頭の中で、この推測に行き着いた。
「そろそろエルドリナが来る」
その言葉を口にした、まさにその時だった。
エルドリナの魔力を感じたのだ。
それは明らかに徒歩ではない速さで、近寄って来る。
スパスも何かを感じたのか、その方向に目をやる。
すると、人間の四倍はあろう巨大な狼に跨がったエルドリナが現れた。
「何それ! ズルい。私も乗りたい!」
エルドリナが目の前までやって来ると、狼は召還魔術陣の中へと消えて行った。
「申し訳ございません。リル様、お待たせ致しました。私の初めの予言よりもだいぶ早く、物事が進んでおります。星の位置が悪く、遅参してしまいました。すみません」
「良いから、良いから。それより火を。お願い、エルドリナ」
「かしこまりました」
エルドリナが魔力を込めると、地面に召還魔術陣が現れる。
そしてそこから、水の精霊と思しき女性の形をした液体が三体現れた。
さらにそれらは向かい合い、祈りを捧げた。
すると目の前から三体とも消え、村の火元の何も無いはずの低空から水が降り注いだ。
(さすがは八英雄の弟子だ)
私はその光景に神秘的なものを感じた。
この世界へやって来てから、今までで一番に魔法や魔術らしいと思えたからだ。
そして村の火災は、瞬く間に全て鎮火した。
白ローブのエルフは、今度は両膝を付く。
(これで一段落かな?)
私は白ローブのエルフを見つめた。
映画やアニメの物語に、主人公として出てくる様なイケメンだった。
髪型はオールバックで金髪。耳が長く先が少し尖っている。
イケメンで目の保養をしていたら、イリーナがやって来た。
(イリーナ、良かったね。イケメン、もといエルフの聖母教司祭に出会えて)
イリーナは、白ローブのエルフに気が付いた様だ。
普段物静かな喋り方の彼女が、らしくない大きな声で呼び掛ける。
「お母様! エミアスお母様!」
(そうそう。お父様、お父様。……ん? お母様?)
「え?」
(女なの!? まあ、確かに私の知っている男の森エルフと言えば……)
私はスパスを凝視した。
「なんすか、姉さん」
「女だわ」
「俺、男っすよ」
(あぁ、そうね。エミアスさんはどう見ても女だわ)
「何すか、何すか? 姉さん」
「あぁ、はいはい」
「え? 何それ! 扱い、ひど……」
白ローブのエルフ、エミアスは声の主がイリーナだと直ぐには気が付かなかった。
無理もない。魔王に50年以上前に拉致された聖女が、目の前にいるとは思いもしないからだ。
だがイリーナが近づくにつれ、青く幻想的な髪がエミアスの記憶を呼び起こす。
「イリーナ様? 聖女イリーナ様なのですか?」
「エミアス……」
イリーナは両膝を付いているエミアスに、両腕で抱えるようにして抱きついた。
「そんな……」
エミアスの声が、滲む。
「やっと、会えましたね。エミアスお母様」
「申し訳、ござい、ません……。魔王に、捕らわれ、我々に成す術もなく……」
「もう、良いのですよ。こうして再開出来たのですから」
「イリーナ……さま」
「私を魔王から救い出して下さったのは、あちらにいらっしゃるお姉様なのですよ」
エミアスが私を見つめる。
「初めまして、エミアスさん。冒険者のリルです」
「あぁ、私ばかりか、イリーナ様までお救い頂いたのですね。ありがとうございます。このご恩、一生を賭して……」
そう言うとエミアスはうつむいた。
「えっと……。イリーナは私の妹みたいなものだから、そんな恩義なんて」
「赤い髪、まるで太陽神の様な、お方……」
「へ?」
(またこのパターンか!)
「そう言えば、エミアスは術を発動中の様ですけれど?」
イリーナが話に割り込んできた。
(ナイスだ。イリーナ)
「ええ、イリーナ様。あいにく魔力が不足していまして。宜しければ、お力を」
「もちろんですよ」
Cパートへ つづく




