<10話> 「天翔る星の煌めき」 =Fパート=
外の世界が半日後であり、もう直ぐ日が暮れる。
私は一日損をした様な気になった。
この後は夕飯であろう。
だが私は、さっき朝食を食べたばかりなのだ。
夕飯はソフィアが捕った謎の大型野生動物の肉がメインだった。
屋外で火を焼べり、肉を焼いて焼べる事に。
私は少しだけ味見程度に食べたが、豚肉に近い味だった。
一人で時差ボケの私は、星明かりを楽しもうと、火を消した。
イリーナは私に寄り添い、他の者はコテージ内へと入り、寝る準備をする。
「お姉様のいらした世界では、星は見えませんでしたものね」
「そうね。良いんだか、悪いんだか」
「あら、私はお姉様の世界の街の明かりというのも好きですよ。何というか、活気があって」
「ありがとう。イリーナ」
「実は私も都会っ子なのですよ。さすがにお姉様の世界の街と比べると小規模ですが」
「あれ、意外。聖女様が夜更かし? 聖職者だから、てっきり夜明けと共に起き日没と共に、かと思っていたわ」
「へへっ」
私は星空を眺めた。
「やはり私の知っている星空とは、違うわね」
「そうなのですね。やはりここは、お姉様の居た世界とは別の世界なのでしょうね」
「そうね、そうかもしれないわ」
満天の星空に、心が躍る。
「イリーナ、この星空も素敵よ。手を伸ばせば届きそう」
「そうですね」
イリーナは子供の様な笑顔を返してきた。
(あぁ、その笑顔は反則だ。女の私でもドキッとしたよ)
私は照れ隠しも含め、無言でしばらく星空を眺めていた。
すると風に乗って僅かながら、異臭が鼻を突いた。
「ん?」
イリーナは気が付いていない様だ。
私は立ち上がり、辺りを見渡した。
「どうされました?」
「焦げた臭いが」
イリーナは、さっきまで肉を焼いていた辺りを見た。
「あれだ」
私は街道の先を指差した。
大きな煙が上がっていたのだ。
イリーナも立ち上がり、煙の方に目を向けた。
「さすがにドラゴンじゃないよね?」
「そうですね、この辺りでの噂は聞きませんね」
「とりあえず、皆と相談しよう」
私たちはコテージへと入った。
エルドリナはシャワーを浴びていたので、コテージに残る事に。
代わりにと、召喚精霊を貸してくれた。
光を放ち、暗い夜道を照らしてくれるのだという。
ステフには正直ここに残ってもらいたかったが、一緒に行くという。
仕方がないので、ソフィアに護衛をお願いした。
魔剣師は人を護る事に長けているからだ。
私、イリーナ、ソフィア、スパス、そしてステフとセバスが向かう。
エルドリナ、フリック、ヴェレネッタ、運転手さんがお留守番だ。
フリックはゴブリンなのに、街の明るさに慣れてから、夜はあまり物が見えなくなったのだとか。
私は皆に手を繋がせ、有視界での魔法による転移を二回行った。
これ以上は危険と判断し、あとは徒歩により進む事とした。
街道から獣道へと移り、煙の発生源に近づくにつれ、嫌な臭いが強くなってきた。
スパスが歯に衣着せず、言い放つ。
「ああ、これは相当な人数、焼かれてますね。自分、この臭いが嫌いなんで、直ぐに分かります」
ステフの顔から血の気が引くのが分かった。
「ステフ、戻る?」
「うんん、お姉ちゃん。僕も現実から目を背けないようにしないと」
使用人のセバスが言う。
「立派です。坊ちゃま」
そして、いつもぶっきら棒なソフィアが、優しくステフに寄り添い言った。
「大丈夫だよ。お姉ちゃんたちが護るから」
仲間思いのソフィアらしいなと、私は思った。
Gパートへ つづく




