<10話> 「天翔る星の煌めき」 =Dパート=
あの世界が現実なのか、仮想なのか、別の世界なのか。
今の私には判らない。
けれど、私は心に誓う。
必ず元の世界へ戻り、「ただいま」と家族に言うと。
ソフィアとスパスは、私たちがここへ向かったと商会から聞き、心配でやってきたのだとか。
スパスの兄はエルドルナと同じく八英雄である。
エルドルナはスパスが来る事も予言していた様で、兄宛ての手簡(=手紙)を用意してあったのだそうだ。
私、イリーナ、ステフ、フリックの四人に、ソフィア、スパス、そして八英雄の弟子であるエルドリナを加えた七名。
商会の馬車二台に、分かれて乗り込む。
スパスの馬車には既にスパスの部下の森エルフ、ヴェレネッタが乗っていた。
ヴェレネッタは、エルドリナをスパスが運転する方の馬車に乗り込ませ、自身は助手席へと移る。
エルドリナに、祭司がお供を連れないで大丈夫なのか心配になって聞いたが、このメンバーならば問題ないとの回答を得た。
(まぁ確かに、ドラゴンに襲われても平気そうなメンツだわ)
目的地はエルドリナが占った、聖母教のエルフ司祭がいる場所だ。
スパスの馬車を先頭に、私たちの乗っている馬車も出発した。
私たちの馬車には行きと同じく、助手席に使用人のセバスがいた。
馬車で数日掛かるとの事で、馬の餌である乾草等を屋根に積んでいた。
馬の餌や世話の仕方については、ステフに旅の間、じっくりと講義を受ける事となった。
さすがは商人と感心させられた。
知識がないと損をする事が多い。
知識は直接利益に影響する為、重要なのだという。
初日は数時間で日が暮れてしまうので、馬をある程度の速さで走らせ、そして早めに休憩とした。
整備された街道のおかげで、距離を稼げた様だ。
街道脇で拓けた場所を見つけ、そこで休む事となった。
現在位置をマーキングして、転移魔法で戻り、翌日マーキング地点から出発する事見も出来た。
だが結局、この場所で寝る事となった。
「ドラちゃん、お願い!」
「はーい! どこでもコテージ」
イリーナは異空間収納から巨大な小屋を取り出した。
もう、小屋というより別荘やログハウスだ。
赤い三角形の可愛い屋根が特徴だ。
イリーナ曰わく
「二階はお姉様と私の愛の巣ですから」
だ、そうだ。
ソフィアだけは特別に許された様で、二階の広めのベッドに三人で寝る事になった。
ベッドの数が足りなかったので、エルドリナとステフが一階の寝室のシングルベッド二台で、寝室のソファーでヴェレネッタが寝る事に。
スパスとフリックはリビングのソファーで寝る事に。
セバスと運転手は「恐れ多い」と、馬車で寝る事に。
運転手は、イリーナがコテージを取り出した時に腰を抜かしていた。
ガリア教の祭司であるエルドリナが、神格を召喚したと思われた様で、既にイリーナを崇拝しだしている。
(また信者が増えたみたいだね……)
部屋割りが決まり私たちは、ドラ……イリーナに夕飯を取り出して貰った。
夕飯は予めエルドリナに用意して貰っていた。
温かいスープがいつでも飲める。
些細な事ではあるが、確かにそれは神の如き力なのだろう。
(まぁ、実際に邪神は神なのだけれどね)
食事を終えて、順番にシャワーを浴びた。
シャワーは洞窟エルフの街で貰った魔術具だ。
精霊石が使われており、排水されたお湯を浄化し再びシャワーのお湯となる循環型システムだ。
(さすがは魔法魔術文明)
皆、今日は早めに寝て、明日に備える事にした。
Eパートへ つづく




