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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第一章 1節   <1話>
8/200

<1話>  「GMのお仕事」   =Fパート=


ほどなくして、街道の宿場町が見えてきた。


町の入り口に、柵や門番といったものは見当たらない。

そりゃあそうだ。魔物モンスターも存在しない、あんな長閑(のどか)な平原より続く町なのだから。


問題があるとすれば、ここがテストサーバー内だった場合、ノンプレイヤーキャラ(=NPC)、つまりは人工知能で動くヒトが配置されているのか――であろう。

流石に無人の町で、宿屋や飲食に困るのはゴメンだ。

ゴーストタウンで一夜を過ごすのもむなしい。



けれど、その心配は直ぐに解消される。

ガヤガヤとした町の音が、町の直ぐ外にまでれてきていたのだ。


街道の宿場町らしく、道に沿い商店がひしめき合っている。

そして入り口には商店街の様に、看板がかかげられている。

私は看板を読もうと目を凝らしてみた。


「んー。読めん。……何語だよ!」


通常であればそんな場合、町の名前は日本語でシステム表示されるのだが、まだ設定がされていない様だ。


「そこまで、こだわって創らなくっても……」

まぁ、そんな細部にまでこだわところこそが、実に我が社のゲームらしい。


(じゃあとりあえず、RPGの超定番、宿屋を探しますか!)



町の入り口付近には、町の住人らしき若い女性NPCがいる。

早速私はそのNPCに話し掛ける。これもRPGの定番なのだ。

「すみません。私は旅の者ですが、どこか宿屋をご存知でしょうか?」


「えっと? こんにちは、旅の方。冒険者さんなのですね? でしたら――」


無事、宿屋の場所を聞けた。

(日本語での会話ができて、良かった良かった)


ただし、不審がられていた様な気がしないでもない。

(好感度値や、名声値、魅力値が初期設定のままで低いから?)


そんな事を考えつつ、私は教えて貰った宿屋へと向かう。

宿屋は「グリフォンの爪」という。けれど店名は読めないであろう。


ゆっくりとした足取りで、宿屋へ向かって歩む私。

町の入り口にいた女性の反応や町の様子を見ていて、一つの疑問が浮かんだ。


「あれ? これって、まさか……。

 仮想世界に閉じ込められたんじゃなくて、異世界に転移してんじゃない?」




我が社のゲームにおいてNPCには人工知能、AIが搭載されていている。

NPCたちには、容姿・性別・性格・職業・種族・先祖・家族構成等の多岐に渡る設定がある。


そして、それらのキャラクターメイクを、実は専用のキャラメイクAIとでも呼ぶべき人工知能が行っている。

そうやって様々なキャラを作り出しているのだ。


開発側の人間は、そのキャラメイクAIに対し、ゲームの運営方針に合わせた幅や大雑把な種族を指定するだけだ。


そうしてゲーム内に、何十億ものNPCを、大量生成しているのだ。




だがしかし、目に映る風景やヒトは、GMである私からしても、その範疇はんちゅう逸脱いつだつしている様に思える。

たしかに、テストサーバーであれば、あり得ない話ではない。

でもその場合、何かしら社内通達があるはずなのだ。

今回、そんな通達はなかった。


私は更に熟考じゅっこうする。


いや待て。バグでテストサーバー側に飛ばされた線。

その考えも捨てられない。


いつだ?


『配信者:????』の所へ飛んだ時?


あれは夢ではなく現実? つまりは仮想?

それとも、あれは夢で、寝ている間にバグが起きた?


あるいは、ヴリトラ以前からバグが進行していた?

そして、寝ている間にトリガーが引かれた?


様々な考えが浮かんでは消えるも、結論には程遠かった。



「もしここが仮想世界ではなく、転移した異世界なのだとしたら……。

 宇田さん、私の尊敬の念を返してね!」



どちらにせよ、現状では情報が不足しているのであった。



Gパートへ つづく

2019.12修正加筆

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