<10話> 「天翔る星の煌めき」 =Aパート=
永遠とも思える星の煌めきは、不変の物ではない。
あの世界での星空はどうであったろうか?
そんな疑問を浮かべた私は今、星の見えないこの世界へと来ていた。
「えー? 地球? イギリス? しかも2019年! 私の生まれる前なんですが!」
私は隣にイリーナが居る事に、心底安堵した。
ギャラリーから必死にイリーナを両腕で庇う。
(えっと、転移、転移!)
この世界において、転移魔法が使えるのかという疑問はあったが、迷っている時間はなさそうだ。
(とりあえず、目に見える範囲の短距離転移)
転移魔法が発動し、数キロメートル先の林へと転移した。
木々の中に身を潜める私とイリーナ。
「お姉様、ここは何処なのでしょうか? もしかしたら、お姉様の元いた世界なのでしょうか?」
「私には、この世界が現実なのかすら、判らないわ。でも一つだけ言える事はあるわ。イリーナの言う通り私のいた世界の可能性があるという事。ただし、私の生まれた世界よりも、30年も前の世界なのよ」
「そうなのですね。私は皆さんが光魔法の込められたら魔導具を持っていたので驚きましたわ。さすがはお姉様のいた世界」
(その誤解は後で説くとして……)
「イリーナは、この世界でも魔法や魔術は使えて?」
「ええ、お姉様」
そう言うとイリーナは光属性の魔術を詠唱し、灯りを作った。
発動を確認するとイリーナは直ぐに中断した。
「確かに、この世界は魔素が少なく発動しない術もあるかもしれません。ですが、私には問題なさそうですよ。邪神様に魔力をお借りすれば魔法も普通に使えますでしょう」
「異次元収納はどう?」
「特に問題なさそうですよ。中身もちゃんとありますし」
そう言うとイリーナは、アテーナーの盾を先っちょだけ出して見せてくれた。
「分かったわ。ありがとう。我々に変化はなさそうね。あちらの世界のままだわ」
イリーナは複雑な表情を浮かべる。
「イリーナの気持ちがよく分かるわ」
「えっ?」
「自分のいた世界のはずなのに、時の経過やその逆により、違った世界に迷い込む。いっそのこと私の様に別の世界へだったら、もどかしさも無かったのかも知れないわね」
イリーナの表情がいつもの通りに戻る。
「お姉様……」
「さて、どうしたものか。この世界ならば、絶対座標が使えそうだから、何処へでも転移出来るかもしれない」
「そうなのですね!」
「んー。試しに私の実家にでも行ってみる?」
「例のお父様に会えるのですね!」
「まぁ、家に居ればね」
「ふふ。楽しみですわー」
「30年前のお父様。私も興味が湧いてきたわ」
鎧姿はマズいと思い、私のお洒落装備から服を選び、二人とも着替えた。
若干ゴスロリチックだが、まぁ良いか。
イリーナは黒ずくめだ。
さすがに生家である実家とはいえ、緯度経緯までは分からなかったので、大体で転移した。
そして有視界の短距離転移を数回して、実家の屋根へと着いた。
――――― ステータス表示 ――――――――――――
2019年 10月23日(水) 23:38(JST)
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「あちゃ、結構遅い時間だわ」
家の中でも覗き込もうかと思ったその時、目の前の道路にタクシーが止まった。
タクシーから人が出てきた。
「あ、パパ。てか、分かっていた事だけれど、若っ!」
(遅い時間で、人通りが無くて助かる)
私とイリーナは、玄関のポーチで鍵を取り出そうとしている父の後ろに転移した。
「パパ、パパ」
「え?」
Bパートへ つづく




