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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第二章 5節   <8話>
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<8話>  「魔神」   =Gパート=


「キュリアよ。行くのか?」


「はい」

キュリアは、師であるブラギに片膝を付き敬礼し、答えた。


二人は王都フリードが一望出来る丘の上に居た。


「それでは旅の間、愛馬グラァニーを宜しくお願い致します」


「ああ。キュリアよ、馬が必要になったら知らせよ。逆召喚で送り込んでやるわ」


「はッ。ありがとうございます。その様な事態とならない為に、善処します」


「真面目じゃのう。ワシは楽しみにしておるぞ」


「師よ……」



「キュリアよ。餞別せんべつだ。くれてやる」


ブラギは人差し指にしていた七色に光る指輪二つを外し、キュリアへと放った。


「ファスキリング。しかし宜しいのですか? この様な貴重な物を頂いて」


それは魔術の詠唱を短縮する事が出来る指輪であった。


「貴重? 安心せい。まだいくつも持っとるぞい」


そう言うとブラギは、何もないはずの空間から七色に輝く指輪を二つ取り出し、自身の指に填めた。


「ありがとうございます。なんか一瞬にして、有り難みが薄れましたが……」


「これで元来の詠唱時間短縮に加え、指輪の効果が上乗せされる。スキル『即効魔術』を温存しやすくなるじゃろ」


「はい。これで通常の者の五倍の速度で二種類の魔術を使えます」


「うむ。つまり普通は一発しか撃てぬ時間で、十発ぶち込めるのじゃな? 化け物め……」


「そんな事をしたら、直ぐに魔力が枯渇してしまいます。師とは違うのですから」


「おいおい、片目はやらないぜ?」


「いりませんよ?」


「……」


「……」


「そうだのう、キュリア。ワシとは違う魔力の枯渇対策が何か必要そうじゃのう」


「そうですね。思慮し幾つか実行してみたいと思います。この後一度、私は王都へ戻り身支度を済ませ、明日出立いたします。ご助言ありがとうございました」


キュリアは立ち上がり、いつもの愛馬ではない、普通の馬にまたがる。


「師よ、それでは行って参ります」


「ああ。キュリアよ」


キュリアの長い金髪が風に揺れなびく。

青い鎧姿の戦乙女は、師の元を後にした。


ブラギはキュリアが遠のくさまをただじっと見つめている。

自身の娘を見送るかの様に。





「お姉様、こちらです」


イリーナは私の腕を引っ張る。


途中から磯の香りがしていたが、階段を下りて行くと、ますます強くなってきた。


「何これ、凄い!」


私は眼下に広がる光景に魅了された。

洞窟の中なのに港があるのだ。

そこには大小合わせ、帆船が五隻も停泊していたのだ。

しかも船渠せんきょ(=ドック)構造を有していた。

またそれらの構造物は、四角い巨大な塔となっており、帆船への積荷を容易にする為の工夫が施されている。


(うわ~。開発陣に見せてあげたいなー)


「姉様、こっち」


ソフィアは、船上に居た。

前面には三枚の菱形の帆を有し、二本の帆柱にはひしゃげた台形の帆を有している、

帆も船体も純白の帆船だ。


イリーナに引っ張られ、ソフィアの居る船へと乗り込んだ。


「姉様、実はこの船、まだ試作段階」


「え……。沈まない?」


「沈まない」


「そっ。そうなの」


「試作というのは、船自体ではなく、魔術回路が」


「え?」


「この帆船は、巨大な精霊石の力で、常時帆に風を受ける事が出来る」


「何その永久機関……」


「でもまだ試作段階。当分は魔力の外部補充が必要」


「なる程ね」


「帝国西部へは丸3日もあれば着くから、実質4~5日の船旅。その程度なら問題ない」


「では、あねさん、出航しますよ!」


「あっ、はい。ってスパさん?」

(一瞬、ピーターパンに見えたわ)


いつの間にか、港には見送りが居た。

ソフィアのお母さんのユフィーちゃんに、エルフ四人組。

エンキ老師まで居るのには驚いた。


かくして私たちは、魔術と科学の融合である魔動まどう帆船へと乗り込み、

帝国西部の都市エアルへと向かうのであった。



9話へ つづく

8話をお読みいただき、ありがとうございます。

第二章は時間軸をいじらず、キュリアの物語とソフィアの物語を行ったり来たり

という演出を試みました。一人称と三人称の視点が同じ話数の中で、

途中で切り替わり読み辛かった旨、お詫び申し上げます。

楽しんでもらえるよう、話しの途中で切り替わるサプライズ感の方を

優先させていただきました。


連載開始の昨年11月10日より約2ヵ月が経過いたしました。

まだ二月しか連載していないのにもかかわらず、私はその何倍もの時間経過を感じています。

第二章が終わり、短編を含め約10万字。つまり単行本1冊近くを書き終えました。


多くのファンに支えられ、2ヵ月間走り続けてきました。

一時体調を崩しはしましたが、これを達成できた事を私は誇りに思います。

そしてそれを達成できたのも、皆様に読んで支えていただけたからに他なりません。


9話からは第三章が始まります。まだ物語は、主要キャラの集合すらしていません。

おそらく私自身が一番、早くキュリアをリルたちに会わせたいです。

ですが、その前にリルたちは貿易都市エアルにて、思わぬ事件に巻き込まれてしまいます。


剣でも魔法でも異能でもない、ジャンル違いの9話ですが

皆様に楽しんでいただけるように、構想を練っています。お楽しみに!


<お知らせ>

今週来週の毎日連載は休止いたします。毎日連載再開は今月末を予定。

来週は短編を前後編で掲載し、その後は章末用のにキャラ紹介を作成したり、

Twitter用キャライラストを作ったりと、やり溢した事をする予定です。

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