<8話> 「魔神」 =Aパート=
私たちは、洞窟エルフの王に協力し、上位名名持ち怪獣の「キャサリン」を討伐に向かった。
キャサリンとの戦闘は長時間に渡った。
1時間が経過し、漸く我々は20本有る内の1本の触手を切り落とす事に成功したのであった。
疲労と共に攻撃がバラバラとなり、なかなか攻めきれないでいる。
厄介なのが、特殊攻撃「魔力吸収」だ。
触手から蔓が延び、触れた者の魔力を吸収し、それを使い自己再生を始める。
ただ救いなのは、切り落とした触手までは、今のところ再生していない事であろう。
そして更に30分が経過した時だった。
辺りがザワ付く。
「王よ!」「王だ!」
近衛隊と共に、洞窟エルフの王がやって来たのだ。
そして王の横には参謀や近衛隊長と共にソフィアのお母様ユフィーちゃんが居た。
「お前ら、シッカリせぬか!」
ザワ付いていた場は、一瞬にして静まり返り、いくつかの戦闘音のみがこだまする。
王の一言によるものだ。
その声は実際の声と共に、ソフィアが使うテレパシー能力の様に、直接頭にも響いた。
「申し訳ございません。王よ。我が力及ばず」
討伐隊の隊長であるニグルが、戦闘中であるにも関わらず陳謝した。
「うむ。これまで死者は出ていないと聞く。その方なりに良くやっておるわ。指揮は我々に任せよ。そして隊長としての任に専念せよ」
「はッ!」
ユフィーちゃんが私たち盾役にパーティーに近寄ってきた。
「ソフィー、リルさん、私も戦うわ。やっと王の許しが出たの」
ユフィーちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
そして、神官服を突然脱ぎだした。
ユフィーちゃんはソフィアと同じ様なボディースーツを装備していた。
唯一違うとすれば、四肢に輪を付けている事であろう。
そしてその輪は皮膚に接触せず、浮いていた。
キャサリンに歩み寄るユフィーちゃん。
2本の触手が襲う。
触手の一本を細い片腕でいなし、もう一本の触手に細い腕から繰り出された拳が炸裂した。
触手に大きな風穴が空き、キャサリンの白い粘液が大量に飛び散る。
通常であれば粘液を浴びると、腐食によるダメージを受ける。
だが、ユフィーちゃんは魔力による障壁でそれを防いでいた。
「うぇぇ。なんかベタベタする。気持ち悪いわねえ」
指先でベタベタを確認すると、粘液を手で振り払った。
(ソフィアの魔力による身体強化も凄いけれど、お母さん凄いね。色々な意味で……)
私も含め、ここに居る誰もが触手に対して決定打を与える事が出来ないでいた。
ユフィーちゃんの拳による一撃は、そんな触手に穴を開けたのだ。
(ああ、スパさん。数日前に殴られたのがソフィアで良かったね。ユフィーちゃんだったら、オーバーキルで瞬殺されてたよ。ユフィーちゃんに、まな板とか言ったらダメだよ!)
「ちらっッ」
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<<ユフィア>>
称号†血染めの姫君†
種族:エルフ
年齢:431歳
職業: 皇太子妃/魔拳師
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(なるほど拳の方の、魔拳師か……)
その後、ユフィーちゃんが盾役になり、3人となった為、私とソフィアは交代で休憩をした。
Bパートへ つづく




