<1話> 「GMのお仕事」 =Dパート=
「ふぅ」
私はヴリトラ討伐隊との会話を終え、報告書を仕上げると、開発陣への連絡を済ませた。
そして、今はゲーム内の自室へと戻ってきている。休憩中なのだ。
「そう言えば、開発にいる友達に言われていたなー。
将来実装する神話級武器のテストをしてくれと。どれどれ……」
自室の倉庫に開発武器が贈られてきているのを確認する。
「って、何本あるねん!」
誰も居ないのに、声に出してツッコミを入れてしまった私。
武器だけでなく、楽器や遠投系、盾まである。
「これは調べるのに骨が折れそうだなぁ。どうせバランス滅茶苦茶だろうし」
私は、そっと倉庫を閉じた。
「今度、時間のタップリある時に、テストサーバーで試そう。うん。
あのヴリトラも一撃だったりしてね。あれ? フラグ立っちゃった?」
そうこうしている内に、これまでの疲れが一気に私を襲う。
うとうととしてきたので、ちょっとだけ机に寄り掛かり仮眠を取る事にした。
「――……」
「ピロピロりん」
「ピロピロりん」「ピロピロりん」「ピロピロりん」
GMコールで目が覚めた。嫌な目覚め方だ。
はて? 休憩中でコール受信をオフにしていたハズなのだけれど、何だろう?
「ピロピロりん」「ピロピロりん」「ピロピロりん」
「ピロピロりん」「ピロピロりん」「ピロピロりん」
「うるさーい!」
「うるさい!」「うるさい!」「うるさい!」
「こほん――はいはい。今、でますよー、だ」
念の為、コールの配信元をまず先に確認する。
「えっ? 『発信者:????』だって? これもバグってるのかなぁ。
しょうがない……、跳躍してみるか」
ちらっ。
私は一瞬、考える為にと目線を明後日の方向へ動かす。
「さすがにもう、飛んだらヴリトラはないよね……」
これは考えても答えが出ない問いだ。
私は覚悟を決める。
「〝男は度胸。女は愛嬌。〞って言うしね」
私はGM専用のスキル「跳躍」を使った。
Eパートへ つづく
2020.07修正加筆