<7話> 「Lovely キャサリン」 =Eパート=
そしてソフィアは、角を曲がった。
予想とは違い、ひきよせは来なかった。
だが想定内だ。ひきよせが来なかった場合の作戦へと切り替える。
通路から広場へ出るとスパスが先陣を切る。
それにサブリーダーのヴェレネッタが続く。
スパスは、クロスボウを即座に構え、速射した。
正確な射撃は、上位スケルトンの頭部に全て命中した。
オーバーキルとなり一瞬で消滅する。
「One Man Down」
ヴェレネッタがクロークから両腕を伸ばす。
その左右の手には各々に銃が握られていた。
そしてその両方の銃から、音もなく弾が放たれる。
二つの弾は上位スケルトンに触れる瞬間、炎となって襲い掛かった。
スケルトンは一瞬で炎に包まれ、崩れ消滅する。
ヴェレネッタが続けて言う。
「Two Men Down」
「OK OK」
スパスは背中に背負った予備のクロスボウと持ち替え、続けて速射した。
一発外したが、ほぼ全て頭部に命中させた。
「OK All Down All Clear」
三体いた上位スケルトンが一瞬で消滅した。
(凄い! スパス達、強いじゃん! あの 狙い撃つ力は、私以上かも。
あと魔術を放つ銃も興味あるわね。名持ちではなかったけれど、上位を瞬殺するなんて)
勢いに乗り、私たちは各個撃破していった。
部隊が広場中央に差し掛かった時、奥の方にキャサリンが見えた。
一同から再び喊声が上がった。
運の良い事に、復活しない上位スケルトンをあらかた倒した後だった。
(事故要因の一つがこれで減ったわ)
ソフィアが先陣を切り、キャサリンに近づく。
するとキャサリンの一本の触手が不気味な動きをした。
次の瞬間、ソフィアの姿が消え、キャサリンの直ぐ手前に現れた。
キャサリンによる「ひきよせ」だ。
そしてさらに、十本以上の触手がうねりだした。
キャサリンの複数の状態異常を引き起こす特殊能力「死出の花粉」だ。
キャサリンが回転し、辺り一帯が花粉で包まれる。
ソフィアは魔術により、だいぶ耐えている。
私は転移魔法によりキャサリンの背後へ回り込んだ。
そして背後から「ザ・ナイツ・オブ・トゥエルブ」を放った。
光属性の追加効果を持つ十二の斬撃が襲う。
キャサリンは呻き声を上げ、私の方を向き、触手で攻撃してきた。
私は技発動後の硬直で動けないでいた。
だが問題ないであろう。
今日はGMの鎧を装備しているからだ。
兜のみ被らず、耐性能力がアップするリボンで髪を結っている。
触手の内の一本が、硬直して動けない私に直撃した。
「お姉様!」
思わずイリーナが声を上げる。
だが、私を攻撃したはずの触手は鎧に阻まれ、逆に弾かれた。
「お姉様、凄い……」
「イリーナ、私が惹き付けている間に、ソフィアの状態異常を!」
「はい! お姉様」
イリーナはソフィアに駆け寄り、回復する。
私は敵のターゲットを取り続ける為、触手に対して剣で斬り付ける。
殆どダメージは与えられていないが、惹き付ける事には成功した。
「やあ、愛しのキャサリン。数日振りだな。憶えているかな? 私の事を」
キャサリンは私の赤い髪を見て気が付いた様ようだ。
空中逆落とし「鵙の速贄」を喰らわされた事を思い出したのか、急に激しく暴れだした。
キャサリンの触手の先端が分裂し、鋭く尖る。
攻撃技「串刺し指」だ。
私は剣で受け流す。
何本かは鎧に当たった。
衝撃は受けたが、殆どダメージは食らっていない。
だが、それはキャサリンも同じだ。
しかし、キャサリンは悲鳴を上げた。
今度はソフィアがキャサリンの背後から、上段のキツイ一撃を放ったからだ。
キャサリンは直ぐに私に背中を見せた。
すかさず、私は三連撃の「アルマス」を放つ。
たまらず、キャサリンは私の方を向き直した。
(よし、順調にタゲ回しは成功している。 あとは時間を掛け、討伐隊が徐々に削るのみ。
私はポーションの必要もなさそうだ)
討伐隊の隊長であるニグルが指揮を取り、徐々に人が集まってきた。
Fパートへ つづく




