<7話> 「Lovely キャサリン」 =Dパート=
私たちは準備を終え、討伐隊より一足早く神殿遺跡へと向かった。
「あれ、スパスさん?」
「おー嬢ちゃんたち。紹介するぜ、俺の部下の壱号、弐号、参号、それから犬、あと紅一点のエル雌だ」
スパスに似た格好の3人の森エルフがこちらに、よくわからないポーズをした。
敬礼なのか、ただ単にアピールをしたいだけなのか謎だ。
(犬って……。人狼族じゃん。しかも女の子じゃん)
「はじめまして。宜しくお願いします。私はサブリーダーのヴェレネッタと申します。リーダーのスパスが頭がおかしくて、ご迷惑お掛けしてすみません」
「ちょ、何その挨拶。俺は常に皆の為に一生懸命マジメに任務をこなしているのに」
「リーダー、森エルフの沽券に関わる問題です。私が訂正させていただきます。でなければ森エルフが、こんな奴ばかりなのだと誤解を与えてしまいます」
無言で頷く、部下の壱号から参号。
「お前ら……。いいぜ、後で『俺の素晴らしさ』を見せつけてやるからな!」
四人のエルフは、シラーっとスパスを見つめていた。
「クソ。クソクソ」
コントが終わった様なので、私から順番に自己紹介と挨拶していった。
ヴェレネッタは緑の袖のない外套を纏い、金色の長い髪をしていた。
そして彼女の背中から、強い魔力を感じる。
おそらく、クロークの中に装備している武器による物であろう。
挨拶が終わると、そこに警邏隊のスケルトン討伐メンバー十六名がやって来た。
その中には数日前に助けたエルフの四人組も居た。
「ソフィア様、スパス様、皆様、今日は宜しくお願い致します」
それにソフィアが答えた。
「スケルトンは、あなた達に任せる。宜しく」
ぶっきらぼうな言い方に聞こえるが、そこにはソフィアなりの愛情が込められていた。
「はい! お任せ下さい!」
通路がそこまで広くない為、作戦通り数日前に名持ちを倒した辺りまで進み、討伐隊との合流を待った。
さすがにこの人数なので、下位や中位スケルトンは複数で取り囲み一瞬で片が付く。
私達やスパス達が手を出す事なく、警邏隊等の中位スケルトン討伐隊のみで容易に攻略できた。
そして、待つこと40分。
ようやく討伐隊と合流した。
進軍の順番は、ソフィアを先頭に私達盾役パーティー、スパス達、隊長のニグルを先頭に討伐隊、そして中位スケルトン討伐隊だ。
そして私達は、問題の通路の角へと着いた。
ソフィアとイリーナは、入念に防御魔術を施した。
私には八種類。ソフィアは恐らく自己強化を含めると二十種を越える。
私はイリーナの手を握る。
ソフィアが「ひきよせ」を喰らったら、即座に転移魔法で昨日の位置まで転移する予定だ。
「大丈夫よ、イリーナ。今日は上手くいく。絶対にね」
「はい! お姉様」
ソフィアが剣を抜き、上に掲げた。
一同が注目し、静寂が辺りを包む。
そして口を開く。
「皆が今日の為、集まってくれた事、その勇気に心から感謝。この戦いは負けられない戦い。私は負けない! 私たちは負けない! 必ず勝利し、家族の元へ帰る! では今から10秒後に進撃を開始する。」
ソフィアが掲げていた剣を下ろし、正面に構える。
そしてどこからともなく、喊声があがり、鬨となった。
「オオオオオおおおおおお!!!!」
遺跡内に鬨がこだまする。
そしてソフィアは、角を曲がった。
Eパートへ つづく




