<7話> 「Lovely キャサリン」 =Aパート=
「どーもー、皆さん。おはようございます。スパスです」
「誰ですか? ソフィア様」
「スパス」
ソフィアに助けられた警邏隊の四人は、一緒にソフィアの家に泊まった。
ソフィアの提案であった。
「一晩生死を共にした仲間と過ごし、日が明けたら家族の元へ帰りなさい」と。
皆で朝食を食べている時にスパスが戻って来たのだ。
「スパス、昨日いなかった」
「ん。まあ、洞窟の外にいる仲間に連絡をしに行ったのと、自分これを取りに行ってきたっすよ」
そう言うと、左手に持っていたクロスボウを私たちに見せた。
まず私が声を上げた。
「魔法のクロスボウ?」
続いてイリーナが問う。
「スケルトン相手では、矢は効果が薄いのですよね?」
スパスが答える。
「なあに、このクロスボウは追加効果として、光属性のダメージを与えられるんですよ。それも結構エグく」
そう言うとスパスは、クロスボウを構えて撃つ仕草をしてみせた。
(ゲーム内でもあったわね。そんな戦法)
イリーナは手を合わせて感心していた。
「スパス、私たち昨日大変だった」
「ああ、聞きましたよ。さっき王から。まさかそんな怪物がいるとは。無事でなにより」
スパスが顔に手を当て大げさに、心配したぞアピールをしてきた。
そして続ける。
「しっかし一昨日、私が潜った時に遭遇しなくて良かったなー」
(んー?)
「いやー、あの時は襲われて、街の方まで逃げたんすよ。クソ! あの骨野郎!」
(あれ? 一昨日街にスケルトンが現れたのって原因不明だったけれど、それってスパスが原因じゃん!)
ソフィアが溜め息混じりに言う。
「スパス、後でグーパン」
何故か、イリーナが片目を瞑って眉間にシワを寄せている。
魔力による身体強化状態のソフィアに殴られているスパスを想像したからだ。
「えーーッ! いやいや、俺、悪くないでしょう!」
「言い訳、ダメ」
肩を落とし、うなだれるスパス。
私は顔を覗き込んだ。
(あ、これ、全く反省していない顔だわ……)
そんなスパスにイリーナは優しく語り掛ける。
「スパスさん、もしお食事が未だでしたら、ご一緒しません?」
「イリーナさん、ぜひ! 優しいなぁ。どっかの、ぺちゃぱいエルフと違っ……」
言い終わる前に、スパスの身体が吹っ飛んだ。
スパスの身体は木製の壁を破り、隣の部屋まで飛んでいった。
(うわー)
ソフィアが食卓の下を抜け、勢いの付いたままグーでスパスにボディーブローをかましたのだ。
「スパス、本当に一言余計」
お母様のユフィーちゃんが強い口調で言う。
「ソフィー!」
「お母様、壁を壊してごめんなさい。食事中に暴れてごめんなさい」
ユフィーちゃんはソフィアを抱きしめて言う。
「ごめんなさいね。私に似て胸が小さくて……」
(え? そっち?)
イリーナはスパスの元へ行き、回復魔術を掛ける。
「やれやれ。世話の焼ける御方……」
スパスが目を開ける。
「あれ? 俺は死んだのか? 目の前に天使が見える……。たしか、ちっぱいに殴られて……、いや、目の前にあるのは、おっぱいだ」
スパスは再び気を失った。
イリーナの手には麒麟の髭が握られていた。
(やっちゃったね、イリーナ)
その後、壁を厚手の布でとりあえず塞ぎ、皆で食事を済ませた。
伸びているスパスを除いて。
警邏隊のエルフ四人組を家へと帰らせた。
私とイリーナとソフィア、そしてユフィーちゃんの四人で、お城へと赴いた。
Bパートへ つづく




