<6話> 「不敗の魔剣師」 =Gパート=
ここに居る名持ちは、おそらく……)
「……おそらく、キャサリン」
私たちは通路を抜け、広場へと出た。
エルフ四人には引き返して貰おうとも考えたが、キャサリンは見逃してはくれないであろうとの結論に達し、一緒に行く事とした。
広場には先ほど倒したのと同じ様な三体一組の上位スケルトンが何組も居た。
そして倒しても時間経過で湧く中位のスケルトンが十体以上居た。
イリーナが結界を使い、私たちは敵に気付かれる事無く、広場を横断した。
移動しながらの結界維持は、かなりの負担であった様だ。
直ぐにイリーナに疲れが見てとれる。
だが、それでもソフィアの元へ行く為に、イリーナは必至だった。
そして5メールをゆうに超える巨体が見えてきた。
「キャサリンだ!」
ソフィアは、キャサリンの触手に捕らえられていた。
ソフィアは捕らえられながらも剣は離さなかった。
触手で握り潰そうとするキャサリン。
魔剣師の魔力で強化された身体でなければ、ソフィアはとうに握り潰されていたであろう。
結界維持に困窮していたイリーナはその場に膝を突いた。
「よく耐えたわ、イリーナ。あなたのお陰よ」
私は転移魔法を自身に掛け、ソフィアを捕まえている触手の上に降り立った。
「ザ・ナイツ・オブ・トゥエルブ」
光属性の追加効果を持つ十二の斬撃が、同時に触手を襲う。
触手が緩み、ソフィアが落ちていく。
私は転移し、ソフィアを空中で抱え、更にイリーナの前へ転移した。
「イリーナ、動ける? 可能ならばソフィアの状態異常を回復してあげて。
キャサリンは『ひきよせ』を使った後、複数の状態異常を引き起こす特殊能力をよく使うの」
(この距離なら、「ひきよせ」は来ない。向こうからやって来るまで、10秒は稼げるであろう)
「状態異常が回復したら、転移装置を使い逃げます。
あの右手に見える大きな台座がそう。運が良いわ。必ず皆無事に生還しましょう!」
ソフィアの状態異常が徐々に治っていく。
麻痺、静寂、毒、悪疫、嗅覚無効などだ。
「ありがとう、お姉様……。本当に、ありがとう。さすがに死を覚悟した……」
ソフィアが弱音を吐く。それ程の恐怖を味わったのだ。
私たちは、転移装置の方へ移動する。
ソフィアは仲間のエルフに支えられながら移動する。
「リーナ、私たちエルフの街へ来てくれて、本当にありがとう。居なければ、私はさっき死んでいた」
「ソフィー。私たちは、無事に生還する。良い? あなたはエルフの仲間を無事に街へと帰還させる」
「そう。そうだった……。弱気になっていた。心で負けたら勝てない敵。
そして恐怖は自身が生み出す敵。どちらにも負けられない。仲間の為に」
そう言い終えた時、キャサリンが視界に現れた。
植物系モロボル族のキャサリンは緑の巨体に、長い20本の触手を持ち、大きな口とつぶらな瞳をしている。
見た目は、メデューサの頭部やタコに近い形状だ。
「相変わらず、触手がぬるぬる動いて気持ち悪いなぁ」
ソフィアは自分の力で立ち、仲間から両手剣を受け取る。
「ありがとう。もう大丈夫。だいぶ感覚が戻ってきた。
あなた達は、その転移装置で先に逃げなさい。時間を稼ぐから」
頷く一同。
「ソフィア様、ご武運を!」
イリーナは補助魔術を使い、麻痺と沈静に対する耐性を上げてくれた。
(おそらく私は、敵の使う特殊攻撃「臭い息」は抵抗出来るだろう。
喰らっても直ぐに解けるはず。だが倒す力は私には無い。どうしたものか……)
ソフィアは更に自身の魔術で抵抗力を底上げする。
そしてソフィアはレジスト効果の上がるスキル「テナシティ」を発動させる。
「さっきは不覚を取ったが、準備さえできれば負けない。私は魔剣師だから!」
Hパートへ つづく




