<1話> 「GMのお仕事」 =Cパート=
「どうなされました?」
すると、黒衣の魔道士ではなく、オープンチャットで若い女性の声がした。
その方向を見ると、純白のフルプレートに身を包み巨大な盾を持った女性の騎士が居た。
純白の騎士曰く――
黒衣の魔道士と供にヴリトラの側近と闘っていたが、挙動がおかしいので開発陣へバグの報告をして貰いたい。
昨日のバージョンアップ要項には、挙動の変わる旨は記載されていなかった。
私は、少し間を置いてから答える。
「解りました。こちらの方でもログを解析し、調査いたします。
ただし、挙動が違う原因がバグであった場合なのですが……。
開発へ伝えても直ぐに対応が取れない場合もございます。
その旨、ご了承頂けたらと思います。ご不便をお掛けしてすみません」
その後、純白の騎士はその出で立ちに相応しい、騎士らしい紳士な応対を私にしてくれた。
――と。女性なので紳士ではなく、淑女か。
私は女性である純白の騎士に、かつて自分がプレイヤーだった頃の冒険仲間の姿を重ねた。
ひと通り説明が終わった所で、黒衣の魔道士は私にお礼を述べてくれた。
ふと、その魔道士の脇を覗く私。可愛らしいピンクの頭が見えた。
「おや?」
そして目が合う。
「GMさん、さっきはありがとうございました。」
よく見ると、数件前に填まって抜けられなくなったのを助けた猫耳っ娘だった。
このゲームではアバターの声を変えられる。つまりは……。
(ネカマ姫か)
そう心の中で呟いた。
Dパートへ つづく
2020.07修正加筆
第II部後半連載時に、再加筆予定