<6話> 「不敗の魔剣師」 =Bパート=
※今週来週は体調不良の為、不定期更新となります※
「いざ探索へ!」
私とイリーナとソフィアの三人パーティーは、街を抜け坑道へと移る。
基本となる役割は、私が攻撃役、ソフィアが盾役、イリーナが補助回復役だ。
偶然だが、非常にバランスの良いパーティーとなった。
長時間戦にも耐えうる構成だ。
イリーナが収納からグレイヴを取り出した。
全長が2メートル以上あり、ここでは振るえないが、遺跡側は広いとの事で問題無いであろう。
邪神とのスキル共有化により、かなりの腕前だ。
イリーナはフードを被らず、髪を後ろで二つに分けて前に垂らし、髪を結んでいた。
(これで三つ編みだったら、見た目は文学少女だな。メガネ似合いそうだ……)
「ところで、ソフィアのその剣ってどうやて抜刀するの?」
抜き身で背中にくっ付いている背丈より長い両手剣が不思議だった。
(ゲームだとよくあるのだけれどね……)
「これは、分かり易く言うと魔法の鞘で止まっている」
片手で軽々とソフィアは抜刀してみせた。
剣の刃がソフィアの髪の毛に当たり、斬れないかドキっとしたが、髪は綺麗になびくだけだった。
(かっこいい……)
純粋にそう思った。
「背中に佩刀している時は、魔力により保護されていて、斬れない様になっている。あとは握った時に少し魔力を流せば、保護されたままで抜刀が出来る」
「なにそれスゴい!」
イリーナは、子供のようにはしゃいだ私を見て、にこやかに微笑んでいた。
(天使か?)
坑道を進んで行くと突然、辺りが一変した。
白い石灰石で出来た様な通路が現れたのだ。
更に通路を進むと、下り階段が現れた。
私たちは、ゆっくりと降りて行く。
すると階段の先には、予想通り敵が居た。
棍棒を持ったスケルトンが2体だ。
私は音を立てないように、静かに抜刀した。
ソフィアも両手剣に手を掛けていた。
私はソフィアに目で合図を送る。
頭の中でソフィアの声が聞こえた。
(お姉様、1人1体ずつでいきましょう)
私は首を縦に振り、無言で頷いた。
音を立てずに階段を降り距離を詰めると、ソフィアは階段上から大きく飛んだ。
魔力により身体強化された魔剣師だからこそ出来るのだ。
その姿は、本当に妖精が宙を飛んでいるかの様であった。
だがしかし、その美しい妖精が放った斬撃は無情だ。
ソフィアは勢いの乗ったまま、上段から斬り落ろした。
スケルトンは反射的に棍棒で防ごうとしたが、役には立たず、体を粉々に打ち砕かれた。
ソフィアの後ろ姿に見とれた私は、二歩遅れてスケルトンと対峙した。
(強い仲間が居て、頼もしい限りだ……)
私も一つ試したい技があった。
技名は「アルマス」だ。
横凪から入り、アルファベットの「Z」の様に斬りつける三連撃だ。
ゲーム内では三撃全てにクリティカルが乗り、相手の防御力を無効化した大ダメージを与える事が出来る。
一月前の戦闘では、ゲーム内の攻撃技は一切使わなかった。
格闘ゲームで言うならば、コマンド入力の必殺技を一切使っていない様なものだ。
普通のMMORPGでは、必殺技はターン制か、あるいはポイント消費制の作品が多い。
例えば、前者ならば6ターンに1回必殺技が使えたり、後者ならば技ポイント=TPをMPの様な感じで消費して発動させる。
だが、私がGMをしていたゲームはフルダイブ型であるが故に、FPS(=一人称視点シューティング)の様なアクション要素がある為、必殺技はコマンド入力制に近いのだ。
習得した技は、一瞬力を溜めるイメージを持って、出したい技の軌道をなぞるだけで発動出来る。
私はまず、得意の平突きをスケルトンに放った。
そしてそこから必殺技「アルマス」へと繋げた。
ゲーム内と同じく、エフェクトが発動し、三連撃が決まった。
「よしっ!」
目の前のスケルトンは、オーバーキルされ、一瞬で消滅した。
(この世界でも使える……これは凄い収穫だ)
「……って、あれ。発動後に少し硬直時間があるのかぁ」
(GMスキルは硬直中も発動出来たはずだから、ヤバい時はそれで硬直キャンセルするしかないな)
「お姉様、凄い」
普段は淡々と話すソフィアに、やけに明るい声のトーンで言われた。
(恥ず、かしい……)
Cパートへ つづく




