<5話> 「主神の息子を名乗りて」 =Fパート=
私たちは城門を素通りし、真っ直ぐ城を抜け、街へと降りた。
街には石を積み上げて作られた建物と、岩を繰り抜いて作られた建物と、それらが合わさった建物とが混在していた。
中央通りから一本入った所に、ソフィアの家はあった。
「ただいま」
「失礼いたします」
「お邪魔します」
「おかえりなさい」
声のする方を見ると、ソフィアより一回り小さなエルフが居た。
(ソフィアの妹さんかな? 挨拶出来てお利口だね)
「ただいま。お母様」
「お邪魔いたします。お母様、お久しぶりです」
(へ? どこ?)
失礼のない様に、一瞬で辺りを見渡した。
(誰もいない……。ってまさか……まさか)
「はじめまして、お母様。私はリルと申します。イリーナと共に旅をしています。宜しくお願いいたします」
「あらあら。これはご丁寧にどうも。私はソフィアの母のユフィアと申します。ユフィーちゃんって呼んでね(はあと)」
(うわぁぁぁ。しかも、マジでお母さんだった)
「お母様。ちょっと、後でお説教……。恥ずかしい」
「まぁまぁ。ソフィーちゃんたら」
(気になる。すっごく気になる。いったい何歳なんだ、この見た目で。こっそりGMスキルで年齢を……)
「ちらッ」
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<<ソフィア>>
称号†不敗の女子†
種族:エルフ
年齢:213歳
職業:魔剣師
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<<ユフィア>>
称号†血染めの姫君†
種族:エルフ
年齢:431歳
職業: 皇太子妃
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(400歳越えだとー! このお母さんを愛し射止めた、ロ○コン変○野郎、……もとい、お父さんがどんな方なのか、すっごく気になるんですが……。)
ユフィアが続ける。
「実は今ね、ソフィアが出掛けたのとすれ違いで、森の王からの使者がいらしていてね」
奥の方から、淡い緑色の服を着た金髪のエルフが現れた。
「どうもー。皆さん、スパスでっす」
(何だ、このノリのエルフは……)
「あ、スパスだ」
ソフィアは知り合いの様だ。
(なんかアメコミに出てきそうな、お兄さんだわ。耳は長くないし)
その後、客間に案内されて、皆で紅茶を飲みながらスパさんの話しを聞いた。
「いえね、皆さんに森の王の伝令をお伝えしに、今回やって着た訳ですよ。不肖わたくしスパスめが」
ソフィアが口を挟む。
「スパスは森エルフの英雄の一族。お兄様が、八英雄」
(八英雄って何? もしかして知らないとマズイ事?)
イリーナが口の下に人差し指を当て問う。
「何ですか、それ?」
ソフィアが答えた。
「リーナは知らないか。魔神戦争の後だものね」
スパスが自身を親指で胸を指す。
「そうっすよ。自分位の年ならばまだしも、若い人間のお嬢さんには分からないと思いますよ」
ソフィアが「じーッ」とスパスを見る。
「スパス、イリーナは、あなたと同じ歳位だと思う」
「ええーッ。いやいや、いやいや。あり得ないでしょ。あり得ない」
スパスは目玉が飛び出る位驚いていた。
「まてまてまて、あり得るのか? ん? あり得るのか! くッ!」
スパスは、落ち着こうと、紅茶を口にした。
「熱ッつ!」
「あらあら、ごめんなさいね。熱かったかしら。それなら、お母さんが代わりに。八英雄っていうのはね……」
「お母様、話しに加わるとややこしくなるからお終いで。そして、話しを逸らして、ごめんなさい」
スパスは、改まって言った。
「そうだった。森エルフ引っ越したからねー。……自分、それを伝えにきたっす」
(軽っ……)
「まぁ、魔王軍の影響、なんすけどね」
(重っ……)
イリーナは、二人旅の時に森エルフに会えなかった原因が分かり、一人で納得している。
更に話は続いた。
驚いた事にソフィアの父親は森エルフの王で、母親は洞窟エルフの王の娘だという。
(ロ○コン野郎は、言い過ぎましたね。すみません王さま。深く反省……)
なんでも、洞窟エルフの場合、純血種は灰色から薄い青い肌をしているそうだ。
また、エルフは若く見えるほど純血種の可能性が高いのだとか。
見た目の年齢変化が殆どないからだって。
いつまでも若くて羨ましい限りだ。
でもソフィアのお爺ちゃん、つまり洞窟エルフの王は、純血種だけれどお爺ちゃんなんだって。
「どんだけ生きてんねん」って話しだ。
エルフは普通、寿命が尽きる前に病気か事故で死ぬそうだ。
純血種とは言え、不老不死って訳ではないからね。
話が多岐にわたり、夕飯もご馳走になり、夜になってしまったので、お城へは明日行く事となった。
(そう言えば、八英雄の話しは途中のままだったなぁ……)
皆でソフィアの家にお泊まりした。
数日ぶりに馬車ではなく、ベッドで寝られた。
Gパートへ つづく




