<5話> 「主神の息子を名乗りて」 =Eパート=
リルとイリーナは、エルフのソフィアと共に、洞窟内の街へ向かっていた。
洞窟なのだが、実際には地下都市あるいは地下神殿である。
石畳で出来た地面。
壁も剥き出しの岩ではなく、舗装されていた。
「それでね、ソフィー。その時、助けて下さったのが、このリルお姉さまなのよ!」
(なんかこそばゆくて、恥ずかしいよ……)
幸い地下で暗かったのと、赤い髪である為、顔が真っ赤なのはバレていない様だった。
私は話題を代える事にした。
「えっとぉおおおぉぉ、さきゅっき……」
(……しまった動揺した)
「どうしまして?」
「えっとー、さっきから気になっていたのだけれど、この石畳を照らしている灯りは何かしら?」
(よっしゃ、言い直せた私……、エラい)
ソフィアが答える。
「ええそれは、お姉さま――」
(あなたも私をお姉さまと呼ぶのね……。ソフィアの方が何百歳も年上でしょうに。それに何か怪しい響きなのよね。……百合的な)
「――精霊石という、魔力を加えると光らせたり、熱を発生させる事が出来る石がある。それをランタンに応用している」
イリーナが相槌を打つ。
「洞窟で火を使い続けたら、死んでしまいますものね」
「火も少しならば大丈夫。洞窟の一番奥は港だから。街から風が抜ける様に出来ている」
「そうでしたね。船もありましたものね」
「ちなみに精霊石は毎日、警邏の子が輪番で魔力を注いでいる」
「確か、炭の様な使い方も出来ましたよね」
(科学と魔術が交差するエルフの街か……。面白そう。1ヶ月旅をして思ったのだけれど、この世界は魔法魔術よりも科学の方が、文明に及ぼす影響が強くなっている気がする。でも魔人側は違ったなぁ……)
そうこう考えていると、通路の先から光りを感じた。
通路を抜け広場へと出ると、地下とは思えない明るさであった。
今まで通路が電球の明るさならば、ここから先は蛍光灯の様な明るさだ。
目が眩しさに慣れるまで少し時間が掛かった。
その間、何故かイリーナが私の腕にしがみ付いてきていた。
目が慣れ、目の前に情景が現れる。
「洞窟の中に城が……。凄い」
私は思わず、声を上げた。
洞窟に半分融合した岩の城が見えたからだ。
(魔法文明……、素敵だ……)
どうやら普通の街の構造と違い、手前に城があり、奥に街が在るようだ。
(これなら恐竜文明が地下にあっても不思議ではないな。って事は、この地下を作ったのはネコ型ロボットに違いない! ……って、この世界なら恐竜じゃなくて竜か。さしずめ地下の竜人文明って所か)
などと、馬鹿な事を考えていたらイリーナが話し掛けてきた。
「本来はここで、検問を受けるのですが、ソフィーと一緒だから、そのまま通り抜けられそうですね」
「ありがとう、しずちゃん」
「?」
「リーナ、とりあえず家に案内する。その後、お城に案内するから。リーナに会えたら、お爺様も喜ぶ」
「ありがとう。やはり人とは違い、エルフは理知的ですわね。野蛮な人類なんて、滅んでしまえば良いのに……」
(イリーナ……。声に出ていますよ)
イリーナと目が合った。
「フフフフ」
(邪神の影響か……。どちらにせよ、病んでいるなぁ。普段の笑顔のまま言われて、逆に怖い)
私たちは城門を素通りし、真っ直ぐ城を抜け、街へと降りた。
Fパートへ つづく




