<5話> 「主神の息子を名乗りて」 =Dパート=
「魔導の力の一端、魔法じゃぜ」
ブラギは魔法を唱える。
「メ○」
魔法に詠唱は、必要ない。
魔力を込めて、呪文を唱えるだけだ。
そして込めた魔力の分、威力が増す。
4メートルの巨体が一瞬で火の玉に包まれた。
黒魔術師は予め掛かっていた「上位魔術防御力上昇」の効果により、即死は免れたが、その場でうつ伏せで倒れ込んだ。
ブラギはドヤ顔で諭す。
「……今のは、メ○ゾーマではない……。メ○だ……」
キュリアはひたすら、打ち込みを続けていた。
かれこれ5分以上経つ。
騎士は盾で受け続けた際の衝撃で、10メートルも後ろに押されていた。
騎士は片膝を付いて、必死に防いでいる。
盾により斬撃は防げるが、キュリアの剣の追加効果までは防げなかった。
雷撃の追加効果と瘴気の追加効果により、徐々にではあるが確実にダメージを与えていた。
キュリアは、突然に攻撃を止めた。
黒魔術師が倒れたからだ。
「師よ。こちらは良い運動となりましたよ」
キュリアは、騎士に背中を向けた。
騎士は反撃の機会は今しか無いと思い、斬り込もうとした。
すると、ブラギがグングニィルを地面に突き立て、孫悟空の如意棒の様に使い、一瞬で距離を詰めた。
そしてその勢いのまま、片手で槍を突く。
騎士は盾で防ぐが、盾を容易に貫通し、重装の鎧までも貫通した。
騎士の体に風穴が開く。
だが青い血は吹き出ず、焼き斬られたかの様だ。
「てめえの盾は、もうキュリアに破壊されてたんじゃぜ」
騎士の盾は、キュリアにより傷つけられ、ブラギの一撃で傷が亀裂となり、粉々に砕け散った。
騎士は動けないでいた。
キュリアの右手の剣の追加効果の雷撃により、体が痺れていたのだ。
ブラギは容赦なく、槍を突く。
「一つ、二つ、三つ、ほれほれ、ほれほれ……」
騎士の魔将は息絶え、やがて消滅した。
辺り一帯に、角笛の音が響き渡る。
要塞周りの魔人の音で気が付かなかったが、轟音と怒号がブラギとキュリア達の行る場所に近寄って来る。
「おー。思ったより早かったのう」
「そうですね。さすがフリードを名乗る王だけの事はある」
王国軍はブラギの空けた外壁の穴より進行し、要塞全体へと雪崩込んで行った。
「下位魔人だけでしたら、王国兵達でも勝てるでしょう。修練させていますから、良い実戦経験を積ませられます。勝ち戦の」
「指揮系統も既に崩壊したしのう。後はツマランから帰るか……」
「そうですね、汗もかきましたし」
――同時刻
リルとイリーナは、エルフのソフィアと共に、洞窟内の街へ向かっていた。
洞窟なのだが、実際には地下都市あるいは地下神殿である。
石畳で出来た地面。
壁も剥き出しの岩ではなく、舗装されていた。
「それでね、ソフィー。その時、助けて下さったのが、このリルお姉さまなのよ!」
Eパートへ つづく




