<4話> 「亡国の戦乙女」 =Fパート=
魔人がキュリアに両手剣で斬りかかった。
キュリアは足捌きで、剣撃の軌道から自身の重心線を避ける。
更に剣の刃を両手剣の側面の樋に軽く当て弾く。
キュリアは、昼前に行った王国兵への訓練を思い出した。
魔人の両手剣は勢いあまり、岩でできた床にぶつかり火花が飛んだ。
魔人が剣を引くよりも早く、キュリアが剣を魔人の喉元に突き付ける。
「どうした。稽古でもつけて貰いたいのか?」
「なんだとー! てめえ、メッタメタのギッタギタにしてやる!」
キュリアは剣を引き、半歩程下がる。
魔人が再びキュリアに両手剣で斬りかかる。
怒りに任せた大振りの一撃だったので、避けるのは簡単だ。
避けた後、魔人の背部に回り込み、下腿の筋を剣で斬り付けた。
魔人の腰が落ちたところで、左手の錫杖で足を絡ませ、臀部(=お尻)に体当たりした。
神殿の段差から魔人が突き落とされた。
魔人は気絶した様で、その場から動かなくなった。
(個体差か? いや若さか? どちらにせよ馬鹿な上位魔人で助かる)
キュリアが空を見上げると、飛翔している魔術師がその場に2人居た。
「何事ですか、これは? む、魔人? それも上位の」
キュリアは、魔術師達に声を掛けた。
「久しいな。息災(=元気)か?」
「キュリア様ではありませぬか! あの禍々しい魔力、それにホーリー・ピラーの光が見えたもので、王城より急いで駆け付けた次第です」
(20…19…18……、なるほど、確かに「ホーリー・ピラー」は、屋根等を突き抜けるからな)
「すまないが、貴殿達は少し離れた方が良い。あの魔人はまだ、厄災を振り撒く。少し待たれよ」
(5…4…3…、2…1……)
キュリアは詠唱を始めた。
詠唱省略ができる「即効魔術」のスキルがまだ使えない為、詠唱の後に魔術が発動する。
「フレア・バースト」「ホーリー・ピラー」
神殿の前で倒れて動けない魔人に直撃する。
「まだ、しっかり息がある……。やはり上位は丈夫だな」
上位魔人は、幽閉されていた。
円筒状の広い、だが閉ざされた空間だ。
壁は岩を長方形に魔術的で加工して作ったのであろうブロックで出来ている。
一つ一つが寸分違わぬ大きさだ。
魔人は目を覚ます。
呪術の書かれた金属製の縦長楕円形の檻に入れられ、更に手足を檻に固定されていた。
辺りはランプによりある程度の明るさが保たれている。
目の前に居たのは、杖を持った魔術師の格好をした年寄りであった。
「やい、ジジイ! ここから出せ。俺様を閉じ込めて……」
魔人は杖と思しき物で、顎を下から抑えつけられて、口を塞がれた。
「ぴぃぴぃ、人の庭で鳴きおって。うるさい餓鬼じゃて」
Gパートへ つづく




