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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第二章 1節   <4話>
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<4話>  「亡国の戦乙女」   =Dパート=


酒場は夕暮れ時で、数人しかまだ客が入って居なかった。


「あれー、ルイダっち、どうしたすかぁ?」

プルがルイダに問い掛けた。


ルイダは直ぐには答えず、二階席の奥の方のテーブルに、キュリアを案内して、席に着いた。

ルイダがプルにようやく説明する。


「それがね、斯く斯く然々で……」


プルは茶化して言う。

「カクカク鹿鹿っすね?」


「もう……」

ルイダはどうツッコミを入れるか悩んだ。


プルの方から再度、口を開いた。

「えーーー。八英雄!」


ルイダはひそひそ声で言う。

「こっ、声が大きいって」


ルイダが辺りを見渡す。

キュリアが、フードを被っていた為、バレていない様だ。


いやに大きなひそひそ声でプルが言う。

「大丈夫っすよ。酒場で八英雄の話をしたところで、酒の魚としては平凡過ぎて、誰も聞き耳なんか立てないっすよ」



その後、キュリアはルイダから、大体の話を聞いた。

「転移で魔王の城を一瞬だが見た」と言うのは、驚愕の事実だった。


「それでね、私を助けてくれた冒険者の二人って言うのがね、リーー」

ルイダが言おうとした瞬間、キュリアが突然立ち上がった。


「どうしたの? キュリア様」


「あり得ない事が起きた」


「えっ?」


「フリードの街の中で、魔力を感じたのだ。それも人の物ではない禍々しいのをな」


ルイダは怯えた顔を見せた。


「安心して欲しい、ルイダ嬢。私が行って対処してくる。話の内容は大体分かった。辛い記憶を思い出させてしまい、すまなかった」

キュリアはルイダに頭を下げた。

そして、続けて言う。

「今夜はこの宿に泊まる予定であったが、恐らく戻れない。この禍々しい魔力の原因を報告し、今後の対策を立てねば」


「キュリアお姉ちゃん、またねー」


(お姉ちゃん……。ちょっと嬉しい響きだ)



キュリアは余韻に浸る間もなく、酒場を出て魔力を発している場所を目指した。


中央通りは、人でごった返している時間であった為、キュリアは裏道を走って向かった。


(あの位置は、もしかすると、聖母教の神殿がある辺りか? 神殿は儀式の時以外は、無人だったはずだ)


神殿に着くと、深手を負った王国兵が二人、倒れていた。

警戒しながら、キュリアは中位の回復魔術を二人に掛けた。

応急処置といったところだ。


神殿内から声が聞こえた。

「あぁ、慈悲深い光。あなたはやはり聖女イリーナ様なのでしょう?」


聖母教の修道女の声であった。

だが、修道女の上に一つ目の魔物がへばり付いていた。

「ウキャキャ。殺さずにおいて、正解じゃ。聖女じゃ。聖女じゃ。噂は本当じゃで」


生憎あいにくだが、人違いだ」

キュリアは素っ気なく答え、手に持っていた金属製の錫杖を構えた。


そして、思い起こす。

(聖女イリーナ、遠い昔に聞いた事があるような……。大戦の前であろうな。直ぐに思い出せぬ)


「ウヒョヒョヒョ。どちらにせよ、やる事は変わらんワ」


魔物の目玉の周りに触手が生え、それらの内、幾本いくほんかが襲ってきた。


キュリアは、一瞬にして2つの詠唱を並行して終える。

常時発動スキルの詠唱時間短縮による効果だ。

岩壁城壁ロック・フォートレス」「中位物理防御力上昇フィジカル・プロテクション

キュリアは、常時2つまでの魔術を同時に唱えられる。


キュリアの周りを青白い光が覆う。

更に、岩で出来た壁が目の前に現れ、触手を防ぐ。


「うぎゃぁぁ、いてー、いてー。この糞尼ぁぁ! だが、これでハッキリしたぜ。やはりお前が聖女だってな。ただの人間があんな魔術を使える訳がねえからな」


キュリアは再び詠唱する。

中位魔術防御力上昇ソーサリー・プロテクション」「攻撃間隔短縮インタ・ヘイスト

土乃羽衣つちのはごろも」「水乃羽衣みずのはごろも


「おい、目玉。貴様には聞きたい事が山程あるが、どうせ嘘しか言わぬだろう」


「ウギャギャギャギャ」


白いローブを纏った、キュリア。

魔物はただの魔術師と舐めていたのであろう。

一瞬で勝負がついた。


「撲殺だ!」


キュリアは金属製の錫杖を右の片手に持ち替え、距離を詰め背後を取る。

そして修道女の左肩を左手で抑え、乗っている目玉に八連打撃を放った。


最初の数発の時点で既に息絶えていた目玉を容赦なく追撃が襲う。

八撃目が決まった頃には、原形を留めず肉塊と化していた。


「しまった。白いローブが青い血まみれに……」

(迎賓館へ帰った時、メイド達に質問攻めにされそうだ……気が重い)



Eパートへ つづく

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