<4話> 「亡国の戦乙女」 =Bパート=
キュリアは王に謁見した後、兵たちに指導をした。
通常、王国軍の兵は対人戦闘に特化している。
だが今後相手にするのは、人ではない。
武器や防具の改良を急速に行ってはいるが、数が多く、間に合わないであろう。
そこで対人装備で戦う為の集団戦闘を訓練させているのだ。
その訓練が終わり、皆で軽食を採っていると、ある噂を耳にしたのだ。
「雷撃の後、隣国より逃げ延びた者が、フリードの街に滞在している」と。
キュリアは訓練指導の後、王国軍幹部達と会議をした。
その後、城内の迎賓館でお風呂に入った。
毎回滞在中、迎賓館をあてがって貰っている。
ブロンドの髪でショートへアのメイドが言う。
「キュリア様が羨ましいですわ。いつまでもお若くて……」
シルバーの髪でショートヘアのメイドが続けて言う。
「この透けるような肌、そしてこの腕……羨ましいですわ」
二人のメイドにより身体を洗われていた。
「キュリア様にお仕えできて嬉しいですわ。こうやってお世話ができて……」
「この艶のある髪、傷みのない長い髪の毛……お世話できて嬉しいですわ」
メイドに弄ばれるキュリアであった。
髪の毛は、二人のメイドの魔術により、直ぐに乾いた。
さすが王国の迎賓館配属メイドである。
普通の国であれば、宮廷魔術師として招かれるであろう者が、この国ではメイドなのだ。
メイド達の遊びは続く。
キュリアを使った着せ替えが始まった。
メイド達が一通り満足した辺りで、キュリアが伝えた。
「この後、フリードで調査をするので、目立たぬ格好で頼む」
「まぁ、お忍びですのね。お忍び用の衣服を御用意いたします」
「まぁ、そうするとあれが宜しくてよ。あれもあったわね」
キュリアは濃紺色のワンピース、革のベルトを使い左右に1本ずつ佩刀し、顔を隠す為に白いマントを羽織った。
魔術師を装う為に、金属製の錫杖まで渡された。
もっとも、装っているだけでなく本当に魔術を扱える。
メイド達から解放された頃には、日が落ち掛けていた。
キュリアはフリードの街へと着ている。
軽食中に聞いた兵達の話しを思い出しながら、逃げ延びた者の滞在している宿を探しているのだ。
「この辺りの筈だが」
路地の方から、2人やってきた。
姉妹であろうか、2人は買い出しの帰りのようで、仲良く各々荷物を持っていた。
「すまないが、ここら辺に冒険者の宿があると聞いたのだが、ご存知であろうか?」
そう訪ねると、キュリアは失礼の無いようにとフードを脱いだ。
姉妹のうち小さい方が答えた。
「それでしたら、私どもの宿の事でしょう。冒険者の方向けの宿は、あまり在りませんので」
「そうであったか」
「我々も宿へ戻っているところですので、宜しければ、ご案内いたしますが」
「かたじけない、ではそうさせて貰おう」
案内されて宿に着いた。
「ここが『グリフォンの翼』か」
荷物をもう一人に渡し、女の子は、かしこまって言う。
「ようこそ、宿屋『グリフォンの翼』へ。私はこの宿屋の者で、ルイダと申します」
Cパートへ つづく




