表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第二章 1節   <4話>
30/200

<4話>  「亡国の戦乙女」   =A´パート=

こちらは、Aパート前半の加筆版となります。

当時はラノベ寄りで書いていた為、実は半分以上を削って投稿しました。


レビューを戴き、日間で3日連続40位以内入りを果たしました。

感謝の気持ちを込めて、掲載いたしました。

10ヵ月前の初々しい私をお楽しみ下さい。恥ずかしい……。



「師よ、それでは行って参ります」


「ああ。キュリアよ」


キュリアは、師であるブラギに片膝を付き敬礼した。

顔を上げると、師の瞳を見つめた。


ブラギに左目はない。

白く長い髭と髪で、右手には長い杖の様な物を持っている。

まさに魔術師といった格好だ。


一方のキュリアは金の長い髪に、青い鎧姿だ。

デザインは軽装備の様に見えるが、その実はフルプレートに近い。


ブラギはキュリアに無言で頷いた。


二人が居る丘の上からは、巨城と広大な城下街が一望できる。

街は外側へ何層にも分かれており、高い建物が地平線を隠す。


その街に負けない巨城には、この丘よりも高い塔が何本も建っていた。


ここは大陸の西部で随一ずいいちの繁栄を誇る王都「フリード」である。



キュリアは、騎乗した。

灰色の毛並みだが、黒いたてがみと尾が印象的な馬だ。


騎乗したまま、ゆっくりと剣を抜き、自身の体の前に立て、敬礼する。

そして、師であるブラギの元を後にした。


馬で駆けること十数分、既に街へと入っていた。

この街は何層にも分かれており、城郭じょうかくの中の街をフリード、城郭の外に広がる街をフリズスと人々は呼ぶ。


フリズスでの商いには、特定の業種を除いて、税金が免除されているが、大抵の商店は、組合に所属しており、組合にお金を納めている。

自分で店舗を構えていなくとも、場所代込みの上納金さえ組合に払えば、場所を提供してもらい、直ぐに誰でも商売が始められる仕組みだ。

言うなれば楽市楽座に近い。


一方、フリードでの商いには税金が掛かる。

その分、権利が保障されており、評判が上がり、チャンスを掴めば、貴族との取引により莫大な富を築く事が出来る。


この様に二つの性質の異なる街を合わせ持つ、不思議な街である。


フリズスからフリード内へと入る場合、通常は検問を受ける。

検問を行っているのは、民兵と組合から派遣された商人である。

民間で篩いに掛け、怪しい者や特定の商品の持ち込みにのみ、王国の兵が検査をする。


検問を受けずに通れる者も居る。

それはフリードの市民及び、王侯貴族だ。

また特別に検問を簡単な書類のみで通過できる商人も居る。


他の都市の検問所とは異なり、煉瓦レンガや木造の屋根があり1つの町の様である。

番号札を持った1~2名のみが並べば良く、順番が近づくまでは、周りの露天で寛げる。

長蛇の列に対して、許可を得て飲食物の販売もしている。ただし、検問の前という事もあり、お酒は販売禁止となっている。

この街の商人のたくましさが伺える場所だ。



そこを灰色の毛をした馬と、それに騎乗する青き鎧の乙女が、金の髪を靡かせて駆け抜ける。

その姿は、列に並ぶ誰もが憧れを抱かすにはいられない程、美しかった。


検問の高台にいた兵士がそれに気が付き、合図を送る。

「開門!」


通常の検問とは異なる鉄製の格子扉が、重量ゆえに、ゆっくりと開いていく。


馬はやがて、徐々に速度を落とす。

乙女が王国兵に声を掛けた。


「ご苦労」


その場に居た槍を持った兵が敬礼で出迎える。

そして馬ごと、兵の詰め所の方へと消えていった。

その馬に騎乗していた乙女とはもちろん、キュリアである。


キュリアは、この国で武術と兵法の指南役として王家に招かれており、王侯貴族の様な待遇を受けていた。


特別な待遇で、さぞ貴族に恨まれているのでは?と普通は思うが、キュリアの場合は別である。


師ブラギの後ろ盾があり、軍事に関わりの無い事には、一切の口を出さない。

よって貴族は、キュリアに一目置いており、他国の王大使に対する態度に近い。


そして何より崇拝されているのだ。

よわい70を超えたはずの彼女の姿は、貴族たちが子どもの頃に憧れ見た勇姿そのままなのである。




キュリアは馬を降り、詰め所の兵にねぎらいの言葉を掛けた。

兵たちは、憧れの眼差まなざしで彼女を見ている。


その後、キュリアは詰め所を抜けてフリードの街へと入った。


フリードの中央通りは、煉瓦れんがで出来ており、城の外壁まで真っ直ぐ続いている。

お堀を2つ越えた辺りが貴族の住んでいる地区だ。

そこを抜けると城壁があり、旧市街へと続く。

旧市街は現在、王族と上位階級貴族の別邸のみがある。

城壁内の旧市街へは厳しい検査を受け、許可を得なければ入れない。

また、一部を観光客に解放しているので、旅行組合を通せば歴史的な街を見学できる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ