<3話> 「聖女と邪神と」 =Cパート=
「もし、我の味方になれば世界の半分を御主にやろう
どうじゃ? わしの味方になるか?」
「はい」
➡「いいえ」
「そうか、実に残念じゃ……」
「あなた方は、何故ここに? やはり侵略しに?」
「うむ。我は今から100年の昔、この人間に一部分を封印された。
だがそれを利用しようと魔王が企んだのじゃ。
封印された状態ならば、邪神をも操れるとな。
よって我が憑依した状態で、この聖女の娘は魅了されておるのじゃ。
無論、魔王とて我の意志までは操る事は出来ぬがな。
――どちらにせよ、我は退屈が嫌いなだけじゃ。
魔王も世界も人間も魔人も、我からすれば、どうでもよいわ。
ただ正直、御主には興味が湧いたぞ」
「ならば、私の方からも問いましょう!
もし私の味方になれば……、世界の半分を与える事は出来ない。
けれど、世界の半分を私と共に旅することは出来ます。
――どうですか? 私の仲間になりませんか?」
「フハハハハハハ」
「そうですね。私もこんな……思い付きで行動する事は、あまり無いのですが。
それ以上に、直感を大切にしたいので、口にしました」
「良かろう。うむ。実に大儀である。
御主に付いて行くとしよう。世界の果てであろうと、別の世界であろうともな」
邪神は上空に居る暗黒竜を転移で帰した。
そして私の目の前まで浮遊してやってきた。
「して、どうする。
この聖女の魅了を解かぬ事には、我とて遠方までは行けぬぞ」
「貴方は、封印されていると仰いましたね。
なので、その封印を今から解きます。
そうすれば、自力で魅了を解く事が出来ますでしょう?
ただの憑依だけの状態ならば」
「うむ。じゃが、封印を解いたら、我が裏切るかもしれぬぞ。
良いのだな?」
「そうですね。
その時は私も『自分の行動が軽率だった』と、そう思うだけです」
「御主は、面白いのう。本当に、一緒に居て退屈する事はなさそうじゃ」
「では、頼むとしよう。封印を解くのをな。新たなる友よ」
封印されている原因は、間違いなく緋黄色金で出来た≪封神の鎖≫であろう。
私には封印や呪いを解く力はない。
だが、ことさら今回に関しては相性が良い。
封印がアイテムによるものだからだ。
GM権限を行使した。
「アイテム、没シュート!」
チートアイテムをプレイヤーから取り上げる権限、「没収」だ。
掛け声には特に意味は無い。
鎖が私の右手に没収された。
それにより、目の前の聖女は、一糸まとわぬ姿になってしまった。
「ひきゃあ」
聖女はその場に膝を突き、手で胸元と股間を隠した。
手に持っていた髭は地面に落ちた。カランと軽金属の様な音を立てて。
「友よ。どうやら我が抗うまでもないようだ。
魅了は解くまでもなく、この聖女の娘の力で自然と消えよったわ。
すまぬが、こやつに身体を覆う物を貸してやってはくれまいか?」
私は所持装備から、取り出し、目の前まで歩み寄り、手渡しした。
聖女は目を細め、声を上げずに大粒の涙を流していた。
彼女は受け取った。そして純白のローブを着込んだ。
≪アテーナーのローブ≫だ。
「うむ。我も少し休むとしよう。
封印は解けたが、力の復元には時間が掛かりそうじゃて」
聖女が口を開く。
「ありがとうございます。言葉では言い表せない程、感謝しております。
私はかつて聖女と呼ばれた者……。名をイリーナと申します」
「私は、リル・ヴァルハラといいます。今は旅の冒険者です」
「ヴァルハラ様、貴女様は太陽神の生まれ変わりなのですか?」
「へ?」
「邪神をも従えるその御神力、恐れ入ります」
「えーーッ!?」
Dパートへ つづく




