表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部  序章      <逸話>
2/200

<逸話>  「プロローグ」



  もし、この世界で一人だったなら

      私は元の世界へ帰る事を諦めていたかも知れない


  彼女は、私にとって掛け替えのない存在

      仲間であり、友であり、妹であり、家族なのだ


  私は、この世界で一人だった

      あの出会いがなければ……




「やるではないか、赤髪の子よ」


全ての光を飲み込みそうな、暗黒(あんこく)(りゅう)が地表へと降り立つ。

竜の首に(またが)っているのは、緋色(ひいろ)をした鎖のみを身に(まと)った巫女(みこ)だった。

青白い肌が鎖環(さかん)の内側よりも露出(ろしゅつ)しており、竜の暗黒がより一層に巫女の青白さを際立(きわだ)たせる。


だが声の主は、暗黒竜でも、それに跨る巫女でもない。

巫女である少女には、邪神が憑依(ひょうい)している。

そうなのだ。その邪神が、私を殺しにやって来たのだ。




邪神は巫女の口を通して、語る。

「だが、今の転移(てんい)魔法(まほう)は我には効かぬぞ」


私は「それならば」と、転移魔法を暗黒竜の方に掛け、強制転移してみせる。

巫女の身体は、突如(とつじょ)跨っていた竜が居なくなったにも関わらず、片足を曲げた姿で、宙に浮いていた。

曲げていた片足は徐々に戻され、身体はゆっくりと降りる。

しかし地に足は着かず、微かに浮遊したままだ。

巫女の左手には武器として、(するど)(とが)った≪麒麟(きりん)(ひげ)≫が握られている。

薄ら笑いを浮かべつつ、殺気を向けるのだ。


私は距離を一気に詰めた。

自身の持つ剣、≪黄昏(たそがれ)(つるぎ)≫が間合へと(とら)える為に。

やや腰を落とし、相手の右首を狙い、斬る。


切っ先は()しくも邪神に(かわ)されてしまった。

だが私は、一歩踏み出し脇腹を()ぎにいく。


邪神は避けながら鎖を盾として使い、(やいば)から身体を護った。

が、刃は(わず)かに右脇腹を()り斬る。

鎖は片手で抑えられていた。その為、(わず)かな(たる)みがあったのだ。


邪神の反応は、明らかに人の速度を越えていた。

私の攻撃を狙って反撃に出たのだ。

擦り斬られながらも、左手に持つ麒麟の髭で貫こうとしてきた。


だがしかし、私はまだ攻撃を止めた訳ではない。

剣を両手で持ち、私は体重を掛ける。

鎖で抑えられた状態のままではあったが、脇腹の傷を深め、更に突き飛ばした。


それにより、邪神の放った突きは無効となる。

私の装備している胸当てに、軽く触れる程度で(とど)まったのだ。


一方、宙に浮遊していた邪神は、十歩分以上も吹き飛ぶ。

地面に(かた)(ひざ)を突き、(ようや)く止まった。


どうやら、仮初(かりそめ)の身体では十分に動けない様だ。

封印され憑依している巫女の身体を、私は改めて見つめる。

すると、斬った筈の右脇腹、その傷痕が既に消えて無いのだ。


「瞬間発動できる回復魔法。厄介(やっかい)ね……。そちらは相撃ち狙いでも良いのだから」


「ほう、その様な手が……あったか」


「白々しい……」

そう言い終えると、私は邪神に向かい、装備している黄昏(たそがれ)の剣をダーツの様に小さな動作で投げ付ける。


邪神は、身を伏せ、大きな動作で(かわ)そうとした。


私は投げ付けた剣に対し、転移魔法を掛ける。

邪神が躱した先の、しかも背後へと転移させたのだ。


だが邪神は、麒麟の髭を使い、振り向きもせずに背後へ迫る剣を弾く。

そして私に視線を送り、不気味に笑ってみせる。

ところが、視線を送った私の姿が忽然(こつぜん)と消える。

私が自身の身体を、邪神の頭上に飛ばしたからだ。


剣を持たず落下する私は、上段から両腕を大きく振りかぶる。

長い私の髪が追従し、赤い軌道を描いた。


麒麟の髭を構えて邪神は、地面を蹴り身体を回転させながら跳ぶ。

長い邪神の鎖が渦を巻き、緋色き弧を描いた。


交差する二人の斬撃と突撃。


邪神は地面に叩き付けられ、黄昏の剣は血を(すす)る。

私は激突するその刹那(せつな)に合わせて、剣を手の内に転移させていたのだ。


()(しろ)である巫女の身体より(したた)鮮血(せんけつ)は、不思議な光と共に直ぐ収まる。

「やはり封印されているこの身体では、勝てぬか……」


邪神はゆっくりと立ち上がり、そして続けて私に問うた。

「もし、我の味方になれば世界の半分を御主にやろう――」



――これが、彼女()()との最初の出会いだったのだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ